お客様が来ました 10
お客様登場です。
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馬車が屋敷の前に止まり、そこから降りてきたのはロード男爵。フィリアの父親であった。
最後にここを訪れてから5年。フィリアの母が亡くなってから一度も来なかった人がどういうことか。
グリードの事は一緒に暮らすようになってすぐ執事を雇ったと手紙をだしてある。良いのか悪いのかは返信がなかったので分からなかったが、グリードの給金が送られるようになったから、勝手に良かったのだろうと結論づけていた。
ロード男爵は、顎髭をはやした三十代半ばの細身の男で、若い頃はさぞ持て囃されたであろう容貌をしている。
「久しいな。フィリア。」
フィリアは、父に対し、日頃のマナーレッスンを活かす機会であると考え、美しく、スカートをつまんで頭をさげ、淑女らしく挨拶をした。
「お久しぶりですお父様。」
その姿に、ロードは目を丸くした。
娘に対し、今まで何もしていないという自覚はあった。
こんなにも美しく挨拶をするなどとは思っていなかったのである。
ロードは驚きをすぐに表情を引きしめて消すと、応接室へと移動した。
するとすぐにグリードがお茶の準備を始め、ロードに紅茶を出す。
ロードは紅茶を一口飲むと、フィリアに言った。
「そのおかしな格好はなんだ。着替えてきなさい。」
そうだ、自分は下町風の格好に、ぼさぼさ頭、瓶底眼鏡スタイルであった。フィリアはこれでは美しく挨拶しても台無しだったなと思いながらも焦らず、ロードに頭を下げた。
「失礼いたしました。すぐに着替えてまいります。」
グリードに目線でここに残ってと合図を送り、部屋を出た途端慌てて着替えに走るフィリアであった。
「美味いな。」
紅茶を飲み、ロードはグリードに視線を向けた。
「君が、フィリアが雇ったという執事だね?名前はなんと言うんだい?」
グリードはロードに頭を下げる。
「グリードと申します。旦那様。」
「そうか。君はすごいな。こんなに美味しい紅茶を入れられて、その上、フィリアにもしっかりとマナーを教えてくれているようだ。」
「お嬢様が優秀なのでございます。努力家で、諦めずに何事にも取り組まれます。」
「そうだな。あれは母そっくりだ。真っすぐで、小さな頃から負けず嫌いだった。」
ロードはグリードをしっかりと見据えると、頭をゆっくりと下げた。
「ありがとう。フィリアの側に君がいてくれて。君ほどの力を持った執事がなぜここになんて事は聞くまい。ただ、ありがとう。」
「よろしいので?お嬢様に危害を加えるとは考えないのですか?」
ロードは苦笑を浮かべた。
「君のその愛情のこもった目を見ればそんなことは思わないよ。」
「失礼ですが、旦那様はなぜフィリア様を放置なさったのですか。」
辛辣な言葉に、ロードはうつむいた。
「私はフィリアの母エミリーを愛していた。けれど周囲に反対されてね、、、なんとか周りを納得させ、婚姻届を出したという時にエミリーは亡くなってしまって、、フィリアに会うのが辛くなったのだ。酷い親だろ。」
「では、なぜここに?」
ロードは顔を上げ、真剣な瞳でグリードを見すえた。
「王宮から、フィリアへ王子とのお茶会へ参加せよと命があった。どうやら王子の婚約者を決めるらしく、貴族に名を連ねる、王都付近にいる10歳前後のご令嬢に命が下ったようだ。だが、何かしらの目論見があるのではと、私は見ている。」
「何か、とは?」
「そうだね。例えば、この屋敷にいる大量の精霊達について、とか。」
ガタンという音が聞こえ、フィリアがロードを凝視していた。
艶やな美しい髪も、金色の瞳も、母親そっくりで、ロードは眩しいものを見るかのように目を細めた。
「お父様、どういうことですの?」
娘の問いかけに、母の面影が重なってしばらくの間に何も言葉を返すことができなかったロードであった。
早く悪役令嬢に会いたいです。
読んで下さりありがとうございました!




