「ドキワク探索」
小話①
本編0話
「ドキワク探索」
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昼下がり。
住宅街の裏道。
静かな路地を、
二匹の猫が歩いていた。
白猫のミルは、
きょろきょろと辺りを見回している。
その後ろを、
黒猫のノワがゆっくり付いていた。
ノワ
「……」
ノワは小さくため息をつく。
嫌な予感がしていた。
そして――
ミル
「ノワ!」
やっぱりだった。
ミルは勢いよく振り返る。
目がキラキラしている。
ノワ
「その顔やめなさい」
ミル
「いい場所見つけました!」
ノワ
「絶対ろくでもないやつでしょ」
ミルは塀の下へ駆け寄る。
前足で、
狭い隙間を指さした。
ミル
「この奥です!」
ノワ
「狭すぎるでしょ」
ミル
「でも通れそうです!」
ノワ
「“通れそう”で入ろうとしてるの?」
ミル
「ドキワクします!」
ノワ
「嫌な予感しかしないんだけど……」
ミルはするっと隙間へ入り込む。
狭い場所なのに、
慣れた動きでどんどん進んでいく。
ノワ
「ちょっとミル!」
ミル
「ノワも来てください!」
ノワ
「なんで当然みたいに言うのよ!」
だが、
ミルは止まらない。
ノワは渋々あとを追った。
狭い通路。
コンクリートの壁。
少しひんやりした空気。
ミル
「秘密の道です!」
ノワ
「ただの隙間よ!」
ミル
「でも秘密っぽいです!」
ノワ
「秘密かどうかは別問題なのよ」
ミルはどんどん奥へ進む。
しっぽが楽しそうに揺れていた。
ノワ
「そんな勢いで行ったら――」
ミル
「出口ありました!」
ミルは勢いよく飛び出した。
その瞬間――
ガタン!
壁際に置かれていたバケツが揺れる。
ミルが飛び出した拍子で、
下に置かれていた板へぶつかったのだ。
ノワ
「……え」
傾く。
ゆっくり。
嫌な予感しかしない速度で。
ザバッ!!
ノワ
「……」
頭から大量の水が落ちた。
黒い毛がぺしゃっと潰れる。
ぽたぽたと水が垂れていた。
ミル
「……」
ミルは固まる。
数秒の沈黙。
ミルは警戒したような笑顔で聞く。
ミル
「ノワ?」
ノワはゆっくり顔を上げる。
濡れた顔。
金色の目だけが光っていた。
ノワ
「……ミルぅ!」
ミル
「すみませーん!!」
ミルは全力で走り出す。
ノワ
「待ちなさい!!」
ミル
「ドキワクしてただけなんですぅ!」
ノワ
「理由になってない!」
ミル
「ごめんなさいぃ!」
ノワ
「止まりなさい!」
ミル
「ドキワクでした〜!」
ノワ
「余計腹立つわっ!」
住宅街を、
二匹の猫が駆け抜ける。
白猫が逃げ、
黒猫が追う。
ミル
「わー!!」
ノワ
「捕まえたら説教だから!」
ミル
「ひぃー!!」
角を曲がる。
塀を飛び越える。
植木鉢の横をすり抜ける。
ミルは必死だった。
だが、
どこか楽しそうでもある。
ノワ
「笑ってるでしょあなた!」
ミル
「た、楽しくないですー!」
ノワ
「今ちょっと笑ったわよ!」
ミル
「気のせいですぅ!」
そうして今日も。
ノワはミルに振り回されていた。
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小話① 終わり




