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何としてでも取り戻して見せる

掲載日:2026/05/03

15分短編です

 ガシャーン!

 聞きなれない大きな音、軋む体、痛みが遅れてやってくる。

 あぁ、やってしまった。彼は、彼は大丈夫なの?

 やっとの思いで体を動かして、助手席の方を見ると、頭から血を流している彼がいた。どうしよう、あぁ、でも意識が。あれ、このシーン、どこかで・・・。


 次に目を覚ましたのは病院だった。看護師さんがお医者さんを呼んできてくれて、私の無事を確認してくれた。

「あの、彼は」

「あなたの少し前に目を覚ましたんですが・・・」

 含みのある言い方に首を傾げていると、お医者さんは、会った方が早いと言って彼の病室に連れて行ってくれた。

 ベッドに座る彼は、手足もあるし、頭に包帯を巻いてはいるが、大したけがはないとの事だった。

「良かった!」

「あの、どちら様ですか?」

 思わず彼に抱き着いたけど、彼の言葉に耳を疑った。

「彼は記憶喪失になっているようです」

 事故のショックで、彼は記憶を失ってしまったらしいのだ。私が事故を起こしたばっかりに。

 ズキズキと頭が痛い、あ、何か、何か記憶が。

 事故を起こした、海沿いの峠道を走る車。運転しているのは、彼だ。

「おかしい」

 今回の事故は、私の運転だったはず。過失は私につくはず。そしてこの一つ前の記憶は、別の事故の記憶。

 あぁ、思い出してきた。私は以前、彼とのデートで同じ峠道を走っていた。彼の運転で。

 海を眺めながら走る車内で、ちょっとした口論になっているときに、飛び出してきた動物をよけようとして、彼がハンドルを切った。ガードレールに突っ込んで、私は記憶を失ったんだ。そうだ、あの時の事故は、私の過失じゃなかった!

「ねぇ、本当に記憶がないの!?」

「すみません、あなたの事もよく・・・」

 どうしよう、彼は本当に記憶をなくしているようだ。私だってまだ混乱の最中にある。でもはっきりした記憶がよみがえってきた。あの時の運転は彼だったはずだ。

 私が記憶を失っていた間の記憶もちゃんと残っている。彼は確かに私の運転だったと言った。警察にもそう言って、私は記憶を失っていたから過失は私に着いたんだ。

 だから今回も、私が運転をすることで記憶を呼び覚まそうとしたんじゃないか。でも一向に記憶が戻る気配がなかったのは、そもそも最初の事故は、私の運転じゃなかったんだ!

 でも彼の記憶が戻らないと、それを証明することもできない。なんて悲劇なんだろう。こんなタイミングで私の記憶だけ戻ってしまうなんて。

「ねぇ、思い出して!前の事故の時はあなたの運転だったよね!」

「すみません、記憶にございません」

「彼女さん、ちょっと落ち着いて」

 これが落ち着いていられるだろうか!今回は確かに私の運転だから、今回の事故は過失が私に着くのは間違いない、しかし前回の事故は、彼の運転のはずだ。過失は彼につけてもらわねば割に合わない!

「ねぇ、ドラレコのデータ、どこに保存してるの!?」

 彼が苦しそうに頭を抱えた、口元に何度も触れて、うんうんと唸りだした。

「彼女さん、今日はもうこのくらいにして、記憶を取り戻すお手伝いは我々が全力を持って対応させていただきますので」

 そう言って看護師さんと、お医者さんに彼から引き離されてしまった。でも絶対に前回の事故の過失を認めさせてやる!

 あの時話してた別れ話の続きも残ってるんだから!


——絶対記憶取り戻させてあげるからね!——

忘れてた方が幸せだったカモ・・・。

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