第6話 SNSのレクチャー
「こ、交換…?相互フォローじゃなくて?」
「オマエ、電話番号みたいなモンと勘違いしてんじゃねぇのか?」
「………相互フォロー頼む。」
二人の指摘に苦い顔をしながらも訂正した奏を見て、二人は苦笑しながらも相互にフォローに応じる。
フォロー数二人、フォロワー数二人。
フォロワーの二人は、合わせて500万人を超えるアカウント持ち。
AS内の風景と現実の天気の感想で投稿が埋め尽くされた、誰も見向きしないアカウントに初めてのフォロワーが誕生した瞬間だった。
「かたなぎりエヴァと…?西部オリヴィア…?これがお前らの名前か?」
「なたぎり、な?…本当に知らずに助けたんだな、お前。」
「なたぎり…?薙刀からとったのか。」
「そゆこと。オレのメイン武装は薙刀だからな。」
「薙刀使いか…」
奏は薙刀使いの強者を思い出そうとして日本最強の巫女を名乗るプロを思い出したが、今は関係ないことだと思い、再び自身のSNSの惨状を見る。
「最近始めたんだが、なかなか勝手がわからない。なんでみんなやるんだこれ?」
奏はちょうどいいと思ったのか、数百万単位のフォロワー数を誇るアカウントを持つ二人に、正しいSNSのアドバイスを求める事にした。
「うわっ、投稿してるの風景と今日の天気への感想だけ…?これじゃSNSじゃなくて感想置き場だな。」
「これじゃ誰も見ないなぁ…」
二人は奏のアカウントを見ながら改善点を述べていく。
「まずはプロフィール画像だ。なんだこの天気の画像は?せめてホログラム表示出来るくらいのやつにすべきだな。」
「投稿もダメだね〜…天気じゃなくて今日あった出来事をかけば?」
「そもそもオレ達以外にフォローした奴居ないのかよ?フォローしたアカウントを見て、同じ趣味だからメッセージを送ったりすることも有るのに、何でしないんだお前?」
「いや、それは…」
「御託はいいから行動で示してくれよ。ほらオレらの事務所のV全員フォローするとかさぁ?ちょっとはマシになるだろ。」
「…やってみるか。」
奏は試しに二人のプロフィール欄に書いていた”アウロラ所属”という文面から、事務所の名前だと断定し、ネットで検索をかける。
そして所属Diver or Liverの欄から一人一人のページに飛びリンクスのリンクを踏んで飛ぼうとすると、
「お前馬鹿か?なんでオレらのフォロー欄から検索かけて探さねぇんだよ?」
「ちょっと…それは非効率すぎるかも。」
「………」
奏は今までSNSなど使ってこなかった。
理由は必要なかったから。
AS内の鯖を渡り歩くだけで自分が欲しい情報は手に入るし、リンクスでの情報収集はバイアスがかかって、意味が無いものだと思っていたし実際それは正しい。
奏は自分で不要だと切り捨てた物によって苦しめられていた。
そして二人の説明と共にフォローを繰り返していると、
「ん?」
あることに気づく。
「何?質問だったらドンドンしてね!」
「いや改めてプロフィール画像を見直していたんだが……」
奏はある二つのアカウントを二人の前にピックアップして出す。
「この刀切エヴァと刀切アカネのアカウント逆じゃないか?今のお前とプロフィール画像の髪型がアカネとそっくりなんだが?」
「それはオレの妹だ。オレの今のアバターはロングヘアバージョンのやつを使ってんだよ、本来はミディアムの長さなんだよ。」
「エヴァちゃんとアカネちゃんは本当の姉妹なんだよ?それも双子の!」
オリヴィアが補足説明をしている間、エヴァはASのUIを起動し、アバター変更をする。
そこに現れたのは、髪色眼の色共に変わらないが、ミディアムヘアの片側の髪を耳に掛けたボーイッシュなアバターが現れた。
「これがオレの本来のアバターだ。どうだイイ女だろ?」
「エヴァちゃん……やめた方がいいよ?その物言い?」
エヴァが攻めた発言をし、オリヴィアが言い咎める。
この二人のコラボ配信で何度も繰り返された一幕。
奏はそんな二人を見ながら
「…………」
本当に興味なさそうな顔をしていた。
この二人の関係に興味が無いという事ではないが、イイ女云々について、チームメイトから「お前は女性の見た目を語る資格が無い。見た目に関しての優劣を感じる機能が死んでいるとしか思えない」、と罵倒された経験があるぐらいには見た目に興味が無い。
興味があるのは強者と未知。
能力のまだ見ぬ運用方法や知らない能力にしか興味が無い。
つまり、自分を強くさせることが出来る存在にしか、興味が無いのだ。
よって、奏は死んだ目をするのだ。
「……本当に興味ない目するな、お前……ちょっとは持てよ興味。」
「かつての仲間にも見目を語る資格が無いと言われたことがあるくらいには、俺は見目に頓着が無い。俺に見た目の感想を聞くのは、キリストに念仏を唱えるくらいお門違いだ。」
「それは最早、宗教戦争になるくらい無礼なのでは……?」
エヴァが吹っ掛け、奏が答え、オリヴィアが突っ込む。
奏は気づかずにこの二人の配信の輪の中に入っていたのだった。




