素敵な結婚生活
掲載日:2025/11/08
彼との出会いは運命的だった。
海外旅行で、友人と訪れた南の島、
ふらりと入ったレストランで、
言葉が通じず困っていた私をスマートに助けてくれたのが彼だった。
彼とは不思議と話の趣味が合い、
会話がとても弾んだ。
そして連絡先を交換した私たちが交際し、結婚をするまでに、そう時間はかからなかった。
夢のような生活だった。
高身長で、端正な顔立ち、
加えて名家の出で、大企業に勤める彼は、
寡黙な所もあったがとても優しかった。
私たちには子どもは出来なかったが、
2人で世界中を旅して、
たくさんの思い出を作った。
そして、50年後の現在、
私はたくさんの管に繋がれ、
病院のベッドに横たわっている。
医師からもう長くないと言われていたので、
覚悟はしているつもりだ。
彼は傍らで私の手を握りしめているが、
私に握り返す力はもうすでに無く、
彼の方を向くので精一杯だ。
「今まで…ありがとう…」
「僕こそありがとう…でも、きみに言わなきゃいけないことが…」
私は最後の力を振り絞り、首を横に振った。
「もう、いいのよ……」
「僕は…詐欺師なんだ……!」
彼の言葉をぼんやりと聞きながら、
私は暗闇の中で、そっと目を閉じた。
彼は最高の夫で、
彼との生活は素敵な結婚生活だった。




