第八章:「金持ちの館と、借金ゲームの罠」
午後4時、新宿の外れ。
タクマとシンは、高級住宅街の外れに立っていた。
目の前にあるのは……まるで城。
「え……なにこれ?ディズニーランドの没エリア?」
「いや、これが今回のターゲットの“自宅”らしい」
「借金してるやつが、城持ってんの!?なんでやねん!!」
門を通ると、二人の前に現れたのは──
黒いスーツの男たち。動きが、やたらと……忍者。
「ようこそ……“神城財閥”へ」
「財閥!?」
「当家の御当主・神城ジョージ様は、只今“紅茶とバイオリン”中にございます」
「その組み合わせいる!?」
案内されたのは、金箔の階段、ガラスのシャンデリア、
そして床に刺さった謎の「刀」。
「……ここ、日本で合ってるよな?」
「文化が渋滞してるな」
やがて現れたのは、真っ白なスーツにシルクハット、蝶ネクタイの男。
──神城ジョージ(35歳)
「うぉっ……本物の変人きた……」
「お初にお目にかかりますぅ 借金取立人のお二人さま」
「返済の件で来たんですけど……」
「うん!わかってるよ!でね、ひとつゲームをしないと、お金は払えないの」
「……は?」
「この館の中に“私の財布”が隠されてます 見つけたら、全額払います」
「頭おかしなっとるんか!!!」
ゲームスタート。
・部屋1:回転寿司のセットがあるけど、ネタが全部英語のクイズ
・部屋2:ジャングル風呂。ワニ(ぬいぐるみ)出現
・部屋3:床が全部トランポリン
「この家、絶対アホや!!」
「……でも、ちょっと楽しい」
「負けんな、シン!!」
ようやくたどり着いた最終部屋。
中央に置かれた巨大なパンダのぬいぐるみ。
その口の中から、財布発見。
「やった……!!これで──」
「その財布は“偽物”です」
「てめぇぇぇぇぇ!!」
最終的に、ジョージが自分で落とした財布を床下から発見。
支払い完了。
「いや、自分で忘れただけやんけ!!」
「ゲームとか関係なかったじゃん!!」
ジョージが笑いながら言った。
「……でも、少し楽しかったでしょ?」
「……否定できへんのが悔しいわ!」
帰り道。
「シン……金持ちって、自由すぎひん?」
「金が多すぎると、常識を忘れるらしい」
「俺も忘れてぇぇぇ!!電気代とかガス代とか全部!!」
通知が鳴る。
【鬼社長】:
「ジョージ様、昔私が合コンで蹴った男よ。苦労したわね♡」
「また社長の黒歴史かよぉぉぉ!!」
「社長の元カレ名簿で地雷踏み続けてるな、俺ら」
──こうしてまた一つ、無意味に疲れる仕事が終わった。