第七章:「変態ライバル取立人と、江戸時代の妄想地獄」
午後1時。下北沢。
いつものように、二人は次のターゲットを探して街を歩いていた。
「なあシン。思わへん?」
「またか」
「もし俺ら、江戸時代に生まれてたら……どんな風に借金回収してたんやろなぁ?」
「……知らん」
「いやいやいや、考えてみてや!絶対カッコいいって!着物着てさ、帯刀してさ……!」
【タクマ妄想中】
──舞台は、江戸・借金町
シンとタクマは着物姿、刀を腰に差し、表情は険しい。
背後には提灯と浮世絵。背景には「ドドンッ」という和太鼓BGM(脳内)。
太ももにはサラ金の印。
「シン、この者は二度も借金の期日を破ったでござる」
「ならば……逃げられぬよう、股間をスパァァンと――」
「ストーーップ!!」
現実のタクマ、自分でツッコミ。
「股間切るってなんやねん!!誰得!!」
「……また変なこと考えてたな」
「もうちょいまともな空想しようと思ってたのに……シンの台詞が怖すぎて全部台無しや!」
その時──前方から、奇妙な男が歩いてきた。
・銀色のスーツ
・片手にぬいぐるみ(クマ)
・片目にモノクル
・背中に「取立王」と書かれたマント
「……なにあれ」
「何かのイベント?」
「どうもぉ〜〜〜!この辺で債務者を探してる“取立王”、キング様のご登場でぇす♡」
地面にバク転着地しながら登場したその男の名は:
──取立キング・斎藤
「おやおや?君たち、同業者さんですか?ってことは……ライバルだねぇ♡」
「うわっ、なんやこのテンションしんど!!」
「……声がうるさい」
「うるさいとかじゃなくて、全体的に存在が騒音や!!」
斎藤はぬいぐるみに話しかけはじめた。
「クマちゃん……この人たち、怖いよぉ……どうしよう?」
「ぬいぐるみ通訳すな!!」
「君たちのこと、クマちゃんが“敵認定”したから〜〜、取立バトルだよ♡」
数分後、交差点前にて
取立バトル(という名のただの口喧嘩)勃発。
「債務者の心を掴むには“柔らかいアプローチ”だよ!」
「いや普通に請求書でええやろ!!」
「ふわっと包んでガツンと請求!それがキングスタイル!」
「こいつ……うっとぉしいけど、なんか回収率高そう……!」
「嫌な才能持ってんな……」
最終的に、債務者がキングのクマぬいぐるみを見て泣き出し、その場で全額支払った。
(※幼少期に似たぬいぐるみを失ったトラウマ効果)
「ほらね?“記憶と涙”で回収するのが、キング流〜〜♡」
「お前……絶対善人じゃないな」
その夜、事務所。
「なぁシン。俺ら、真面目にやってるのに……なんであんな奴に負けたんやろな……」
「クマだな」
「クマって最強なんか……?」
通知が鳴る。
【鬼社長】:
「今日会ったキング斎藤、昔私がフッた男よ。気をつけてね♡」
「やっぱり社長の過去は地雷の宝庫やぁぁぁぁ!!」
「この会社……平和が来る気がしない」
──こうして、新たなライバル“キング”が登場。
だが、最大の敵は己の妄想だったかもしれない。