表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

第六章:「最強のババァと、傘と、無限ループの昼ドラ」

午前10時30分、中野区・事務所。


「おはよーございます……」

タクマが入った瞬間、社長がタバコをくゆらせながら笑った。


「うふふ♡ 今日のターゲットは、ちょっと“年季”が入ってるわよ」


「年季?なんか嫌な予感が……」

「中野南商店街。72歳。未払い金額:9000円」

「……え、たった9000円?」

「でもこのババァ……9ヶ月逃げてる」


──ザ・伝説の女債務者:オガワ・フミエ(小川フミエ)


午後12時、中野南商店街。


「なぁシン。おばあちゃん相手に本気出すって……なんか業深くね?」

「俺たちは金を取る機械だ。感情は捨てろ」

「……シン、たまにマジでロボやと思うわ」


商店街に入った瞬間、どこからか威圧感が走った。

──風に揺れる日傘。

──ショッピングカートの異常な機動力。

──空から響く「ふんっ」という鼻笑い。


「……来たな、伝説のババァ」

「ターゲット発見」


フミエ婆、紫の帽子にフリフリスカート。

見た目は上品、でも目つきは戦場帰り。


「おやおや、借金坊やたちじゃないの〜?うふふ、若いっていいわねぇ〜♡」

「どうも!タクマですぅ!お金返していただけますぅぅぅ!!」

「お金はね……心の余裕がある人間にしか使いこなせないのよ、坊や」


「おばあちゃん哲学いらんねん!!」


フミエ、日傘で攻撃開始。

傘シュッシュ → タクマ避ける → カートで押し返される → 小走りで逃げられる。


「やっべぇ、動き早ぇ!!」

「……完全に“戦闘民族”だな」

「なんでその年でバックステップできんねん!!」


商店街の八百屋前、薬局前、豆腐屋前……

追っても追っても、同じ場所に戻ってくる。


「シン……この街、ループしてへん?」

「いや、それは君の追い方が下手なだけ」


ついに囲み成功。二人で両サイドから詰める。


「諦めな!フミエババァァ!!」

「この年まで生きててねぇ、諦めたことなんて一度もないのよ♡」

「うるせぇ!!金返せ!!」


フミエ、カートの中から突然……


──湯呑み茶碗を投げる。


「どっから持ってきたその攻撃アイテムぉぉおお!!」

「奥義・お茶の間波動拳!」

「名前つけんなぁぁぁ!!」


最終的に、豆腐屋の冷蔵ケースの裏に隠れていたフミエを発見・確保。

返済額:5000円+高級煎餅2枚。


帰り道。


「シン……俺、今日、ばあちゃんって怖いなって初めて思ったわ」

「知恵、体力、戦術……完敗だった」

「あと、豆腐屋のおじちゃんに“ようやった”って褒められた」

「……街に味方がいるのは心強いな」


その夜、またLINE通知。


【鬼社長】:

「フミエさん、昔うちのライバル会社の顧問だったのよ。よく捕まえたわね♡」


「……情報、先に出せやぁぁああ!!」

「完全にボス戦だったな」


──72歳。借金回収界のラスボスは、まだ現役だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ