第五章:「高校潜入と、青春に紛れた借金地獄」
午前9時20分、会社オフィス。
「――というわけで、次のターゲットは“高校生”よ♡」
「……は?」
タクマとシンの声が完全に揃った。
「いやいやいや!未成年に金貸すとかアウトでしょ!?法的にヤバいやつやん!」
「違うわよ。借りたのは“担任教師”。でもその担任、逃げたの。しかも学校からも連絡つかない」
「なるほど、んで……?」
「だから、潜入して調べてきて♡」
「なんでやねーん!!」
30分後。
タクマ(生徒役)・シン(保健の先生役)として、
東京都立〇〇高校へ潜入開始。
制服はリサイクルショップで調達。なぜか女子用スカーフまでついてきた。
「……なぁシン、俺、25歳やぞ。顔バレせん?」
「むしろ精神年齢が高校生以下だから自然だ」
「殺すぞ」
職員室に入り、教頭と名乗る男と対面。
「ふむ……貴君が“転入生の谷口くん”かね?」
「は、はい!谷口たく……まお、です!」
「その名字いる!?」
シンは保健室の鍵を渡され、謎の勤務開始。
タクマは2年B組に放り込まれた。
2年B組。教室。
生徒たちの目が「え、誰このおっさん」で揃う。
「はじめまして〜!大阪出身の谷口ですぅ〜。夢は、借金返済ですぅ〜」
「夢が重い!!」とクラス全体が総ツッコミ。
「よし、友達作って情報集めよ」
タクマは隣の席の金髪男子に話しかける。
「なあ、あんたんとこの担任、最近どないしてるん?」
「どこの方言!?」
金髪男子曰く、「先生は3日前から“自己啓発セミナー”で失踪」とのこと。
一方その頃、保健室。
女子生徒:「先生、腹痛ですぅ……」
シン:「……緊張型ストレス胃痛。ミルクティーでも飲むといい」
女子生徒:「イケボ……」
別の女子:「あれ、先生イケてない!?今どきこんな保健の先生レア!」
シン:「仕事中です」
シン、無意識にファンを量産していた。
放課後。屋上。
タクマはついに担任教師を発見。
スーツにジャージを羽織り、パンの耳をかじっていた。
「見つけたぞ、債務者ァ!!」
「ギャァァアア!!高校は逃げ場ちゃうんか!?」
「逃げんな!金返せ!生徒の前で破産せんといて!」
バトル勃発(ただの追いかけっこ)。
逃げる教師、制服で走るタクマ。
騒ぎを聞いた生徒たちが集まり、なぜか応援合戦に。
「タニグチ先輩いけえええ!!」
「借金回収しろぉぉぉ!!」
「え、なんの部活これ!?」
最終的に、体育倉庫の前で捕獲。
「教育より、金の大切さを教えてやったわ……」とドヤ顔で去るタクマ。
帰り道。
「シン……青春って、重いな」
「お前のせいだ」
「制服姿で借金回収って……俺、今世で道間違えてへん?」
「お前は前世から間違えてる」
その夜。社長から一通のLINEが届く。
「いい仕事したわね♡タクマ、似合ってたわよ……制服姿♡」
「……既読スルーでええよな?」
「即ブロックだな」
──こうしてまたひとつ、東京のどこかで学び舎が汚された。