第7話 交錯する強者たち
エレアはこちらが先に敵を視界に捉えた時、魔力を用いず先手を打った。
彼女はたった1人でレイアード傭兵団を全滅させられると思ってはいなかった。
だから敵を散らすために、煙幕手榴弾と遅らせて閃光手榴弾を放る。
相手が狭い場所で連携してくるとは思えないが、こちらは現状では急造の部隊だ。
得体の知れない魔物まで味方にいるし。
少佐が認めているが流石に不安の方が勝る。
真っ当な連携が期待できないなら、敵が固まっている状況は望ましくない。
学生相手ならば1対1を挑まれて逃げる竜人は少ないだろう。
彼らの武装を意図的に破壊して後輩の援護をすることも考えた。
しかしそこまでさせてくれる程無能な傭兵には視えなかった。
自分から見ても学生の枠を既にはみ出している子達であったため、余計なお節介はいらないだろう。
誓約書の提出や手続きはしていないので、日本の法律だとまだ一般人扱いだが。
自らの意志で戦場に出ているのだから、アリアの用に前線に出るべきではない才覚者でさえも、リスクを許容するべきだ。
まあ万に一つも彼女を死なすつもりなぞない。
制御不可能な状況になれば、即時撤退するよう少佐にも命令されている。
現代に入ってからは、一応竜人の中で暗黙の了解として、軍籍学生の命を奪うことは若い芽を摘む行為であり忌避されている。
むしろ人質として捕まえておけば高確率で身代金が手に入る。
しかしここは竜国ではないし、過去に例外が起こらなかった訳では無い。
相手はテロリストだし何よりこちらから仕掛けているのだ。
そんな手心を加えてくれるとは考えない方がいいだろう。
その場に拳竜がいたならば話は別かもしれないが。
自分の標的を見つけられなかった彼女は、目が眩んだ敵に向けて範囲火力を放つ。
魔術にて可燃性のメタンを創造し、翼で巻き起こした風に乗せてから対象の周囲に火花を起こす。
一定以上の濃度を持つメタンガスが酸素と混ざり合い連鎖的な爆発を引き起こす。
この国であれば本来通報案件だろうが、寂れた倉庫街に響く轟音を気にする者はいない。
既に散開していた連中を追うことはせず、自らの役割を果たすためにその場を離れた。
レイアード傭兵団に斥候として所属するオルフェ・レイクドールは敵に先制された事を恥じていた。
黄の鱗に銀の角を持つ竜人は、今後竜国諜報部隊相手に待ち伏せをする選択肢を外した。
大戦により親兄弟と家を失い、学費も払えず寄る辺の無かった彼は傭兵に堕ちた。
だが生来の生真面目さから修練を怠ることは無かった。
その御蔭で傭兵の中では珍しく教養と信用があり、彼らの中ではいい意味で浮いていた。
そこで当時親友のために戦力を求めていたレイアードの眼に止まったのだ。
それなりに傭兵団で古参の立ち位置にいる彼は、先制攻撃を受けた事から、アジトをもう捨てた方がいいと考えていた。
(分かってはいたが、既にここの構造まで把握されているようだな。)
魔術妨害下であの純人を退けた学生達を相手した後に、本命が控えている事を考えると楽観できる状況ではない。
まあこの程度の障害などいつものことだ。
今度はこちらから捉えた見知らぬ魔力から、学生の誰かだと見て取れる。
手っ取り早く奇襲して終わらせるべきと考えた彼は、道端に隠されている魔力を纏った植物の種を見逃さなかった。
足を止めて向こうの様子を伺う。
敵もこちらの存在に気付いたようで戦闘態勢に入る。
「こんな所に普通の人が紛れ込んでるとは思えないけど一応聞いておくね?貴方はレイアード傭兵団の一員であってるかな?」
銀髪紅眼のエルフが半眼でこちらを睨んでいる。
こんな場所で律儀に尋ねてくるとは笑いかねないが、そのセリフとは反対に抑揚には棘しかない。
「心配するな。この場には我々だけだ。今はまだな。」
「へー、そうなんだ。まだお客さんが来るのかな。多い分には構わないけどね。」
いきなり活性化した種が成長してこちらを狙う蔓と化す。
知っていた彼は種の無い方に飛び退ることで対処する。
「名前は名乗らずともいい。お前の後ろ盾は何処だ?」
殺す気は無いが返答次第では対応を考慮した方がいいだろう。
自分が軍籍学生だった頃を思い出す。
貧乏学生だった自分は碌な武装を用意できなかった。
それでも初めての実戦で現役の傭兵をなんとか下したのだ。
既にいない親も当時は喜んでくれたものだ。
今はその反対の立場にいる事が感慨深い。
「一応言っておくよ。私はね、あなた達に襲撃された高校の関係者だよ。」
返事と共に魔力が滴る。
地面へ向けて垂らされた魔力から一斉に植物が開花する。
彼女は罠を仕掛けて敵が網にかかるのを待っていたのだ。
事前に仕込んでいた植物により、周囲を埋め尽くすと同時に敵の逃げ場を奪う。
自分はある意味アタリを引いたようだ。
「残念だが先約がいてな。早く終わらすためにも加減はできんぞ。」
「大丈夫だよ!おかわりが来てもいいように皆連れてきたからね。」
自信満々でこちらを狙ってくる女学生相手に本気を出すのは大人げない気もするが、そんな甘い事を言える世界ではない。
銀雷竜と呼ばれた男が特徴的な魔術を展開する。
創造さればら撒かれた銀を伝い、電撃が奔る。
傭兵団の中で斥候を任される程度の男は、敵の魔力の質を見て次の戦いの余力を残せるか怪しいと感じていた。
この時相手が吸血鬼の真祖とハイエルフの混血であると知っていれば彼は即撤退を選んだだろう。
単純な規模では天竜派閥以上の赤竜分家に属しているライアは、一家の中でも変わり者だった。
気分屋でマイペースな彼女だが、その振る舞いが許されるぐらいには、ゼリアと並び同世代の中で抜きん出ていた。
そんな彼女はある意味強ければ許されるという竜人を象徴していると言える。
だが彼女はそれが転じてどのような身分であれ強い者が、それ以下の者に後塵を拝するのを許容できなくなっていった。
自分と同等以上の力を持っていながら、口だけ達者な雑魚にへりくだる岩竜を見ていて腹が立った。
我慢できなかった彼女は、彼を護衛として雇う形で冒大付属に入学させた。
その時にぶん殴った雑魚が面倒を起こしたが、彼女は意に介していなかった。
亜竜産まれのウェインはハンター科でも、ここの学費を払えるような資金はない。
竜国は亜竜戦争に勝ったはいいが内戦ということもあり、既にこの世にいない相手から賠償金を毟り取れなかった。
そのため彼らの子孫に借金を背負わせ、炭鉱などの劣悪な環境で働かせることで国内の不満を沈静化した。
レインは亜竜でありながら、身内の戦争にて満身創痍のライルデン教諭を匿った。
この一件から彼の信頼を得ることができたのだ。
大戦により妻子を失い、死に場所を求めていたライルデン教諭が、彼を養子として迎えるのは自然な流れと言えた。
彼は軍略に関してはウェイン以上の才能があり、竜人の中でも稀なデスクワークの方が得意な人種だった。
基本脳筋な竜国の中では彼の様なタイプは重宝されるのだ。
それに対してウェインは偶々同級生にいたライアが、彼の才能を惜しんでここへ入学させたことになる。
それ故に部長としての雑用を押し付けても何も言われないのだ。
亜竜嫌いの親族に止められても、彼女のポケットマネーでどうにかできてしまうのが、派閥の強さと彼女の奔放さを表していた。
ウェインが単純に優秀であったのも理由の一つだが。
そんな気分屋の筈の彼女は、受け取った見取り図から食糧庫の場所を逆算する。
最短距離で敵部隊の食糧庫があるであろう場所を目指す。
基本的に竜人にとって兵糧は最優先護衛目標であり、腕の立つ食糧庫番を必ず用意している。
竜国の輜重部隊は他国の部隊と比較するとかなりの権限が付与されている。
専用の護衛部隊が編成されているのを鑑みれば、その力の入れようが分かるだろう。
倉庫街の中でも守りやすく、緊急時に糧食を運び出しやすい場所に目星を付けた。
近づくに連れて身を隠しながら目的の場所へと向かう。
バレてるなあ。これ。
隠れても無駄だと感じ、身を翻して逆に戦いやすい場所に誘導する。
突き当りを曲がり、倉庫から出て普段はコンテナが積まれていると推測できる空き地まで引く。
「分家の気紛れお嬢か。亜竜に肩入れしたと聞いていたが、そこまでお優しいタイプには見えんな。」
紅い角に白い翼の竜人は、空から彼女に向けて知っている情報を吐き出す。
ヘイグ・オルランドはレイアード傭兵団において食糧庫の防空担当である。
真っ先に糧食を狙ってくる辺り、お手柔らかな歓迎などする必要はないだろう。
「へえ、知ってるんだ?元うちの派閥のどなた様?」
「捨てた家だ。興味は無いさ。そんなことよりほぼ学生だけで意趣返しに来たのは本当のようだな。正気か?」
軍籍学生は同級生の中でも未来が保証されている。
よって余程実家に力が無い様な竜人でもなければ、命の危険がある任務は当てられない。
レイアード傭兵団の実績から考えて、軍籍学生をぶつけるには不適当と言わざるを得ない。
いくらしっぺ返しとはいえディルク少佐が娘に許可するとは思えなかった。
下手をすれば殺されても文句は言えないだろう。
となるとジャマーごと返り討ちにしたのは真実だということになる。
「••••••繰り返す。ヘイグより総員へ、本気でやれ、本気でやれ。」
眼の前の竜人はこちらを注視しながら、無線で味方に注意を喚起する。
彼女は聞き逃さなかった名前から、記憶の底にある男の情報を引っ張り出した。
「ヘイグ、ヘイグ・ウェルステッド・オルランド。確か赤竜家に見捨てられた家か。」
「よく覚えているじゃないか。あまり思い出させてくれるなよ。」
「あなた自身はまともだったと聞いてるけどね。」
裏の事情まで把握されているとは思わなかった彼は少し面食らう。
しかしそこで事情通の赤竜と仲が良かったのを思い出す。
「さしずめ出処はライウェルト家のご令嬢辺りか。よく調べたものだ。」
「大丈夫、興味はないよ。あなたを殴れるならね。」
「やってみろ。ならば俺の魔術も知っているだろうに。」
白炎竜と呼ばれた男は家族を奪った主家を許す事ができず、傭兵へとその身を落とした。
彼の実家が研究していた、白燐を創造する魔術は殲滅力に長けており、古くから重宝されていた。
しかし技術革新が進んだ現代では、白燐はその毒性が明らかになっていった。
彼の実家が覇権を持ち、悪用される寸前で赤竜家は刺客を放って彼らの命を奪った。
彼の代の当主が非常に危険な思想の男であったためにこの悲劇は起きた。
まだ実家に洗脳されていなかったヘイグは見逃されたが、現実は彼の心に深い影を落とした。
紆余曲折を経てレイアード傭兵団の食糧庫番になった彼は、ようやく己の居場所を作る事ができたのだ。
それを壊すのならば若い芽であれ燃やし尽くすことは躊躇わない。
ヘイグ以上の怒りをその身に秘めているライアは負ける気なぞ微塵もなかった。
しかし元来慎重な彼女は、敵の情報を偶然持ち合わせていた。
知っている情報から相性を考慮しても、厳しい戦いになる事は否めないと結論付けていた。
鏡月はVRB部との戦いにおいて負けたのを今でも気にしていた。
結果的には相討ちだったが、実質的にはヴォルフと変わらない。
周りに追いつくためにも一度実家に戻る必要があると感じていた。
自分が今まで逃げていた運命に向き直るべきだと。
そういえばあのメル、レッドやシンとかいう魔物は明らかに堅気には視えなかった。
航平が言うのならまあ大丈夫だと思うが。
自分は魔物を斬ったことがあるが、あんな雰囲気の魔物など見たこともない。
魔物牧場じゃなくて傭兵斡旋所の間違いじゃないのか。
よく考えてみれば航平はかなり謎が多い。
戦闘種族でもないのに人生の大半を辺境で過ごしている時点で普通ではないのだ。
今更過ぎることに悩んでいた彼だがそこで遂に敵と邂逅する。
こちらは連携できる程付き合いが長くないメンバーである。
このため相手に集団で動く事を徹底された場合、逃げて合流することを事前に決めてある。
その後は範囲攻撃で相手をバラけさせて対処する算段である。
彼は渡されたインカムを起動する必要は無いようでホッとした。
しかし眼前の影があまりやる気を出していないのを見て訝しむ。
「あれやらないのかよ?お前レイアード傭兵団てやつだろ?」
見れば自分より幼く見える女の子は、眠そうな眼を擦りながらこちらをじろりと見ている。
ゼフィア・レイアードは天竜家がその身柄を欲した程の才能を持っていた。
危険を感じた彼女の親が妹をアーフェンの所に送ったので、幼い時分から彼女は傭兵団の世話になっていた。
金髪黄眼に黄色の角、無造作に伸ばされた金糸の様な髪は、翼含め身体を一色で統一しており、眩しい色合いをしている。
だがそれが本人の美貌にはよく似合っている。
年頃の竜人としては華奢に見えるが。
「そうだよ?例の学生さんかー。私はまだ非戦闘員だからねー。緊急時以外は戦わないように言われてるんだ。」
だからと言って余裕にしているのはどうなのかと思うが。
「だってお兄さん、私を傷つける気ないでしょ?」
こちらの頭の中を見透かされたようで違和感が凄い。
だが鞘に手を掛けていないのを見れば、こちらにそんな気が無いのは一目瞭然か。
戰場でも年下の女子に刃を向ける様な精神性を持っていない彼は他の場所へ赴こうとする。
その時食糧庫番から全員に警告が届く。
団の中でも上位に位置する男がわざわざオープンチャンネルで呼びかけている。
それにより食糧庫が狙われたことを察する。
彼女は食糧庫番を熱望したが摘み食いするので却下された。
それでも可愛がられているので、おやつはくれたが。
しょんぼりしていたが、実力と食べ物に対する手癖の悪さは信頼されていた。
「気が変わったよお兄さん。食糧庫を狙うなんて純人でも許さないよ。」
変わり身の速さとその体型から、彼女は育ち盛りでありながら腹一杯にご馳走を食べれていないようだ。
傭兵という職業柄故仕方ないものかもしれない。
「なんだそりゃ。非戦闘員じゃなかったのかよ。」
知り合いの竜姫と似た様な思考回路を感じるが、あの子程大食漢では無いだろう。
あれはどう見ても別枠だ。
「食糧庫が狙われたら緊急時に決まってるよ!」
竜人にとっては割りと緊急事態である。
ゼフィアは幼い時から傭兵の世界に染まっていた。
だから自らの飯を奪うならば相手の命を奪うことも辞さない。
彼女は食糧庫番になれなかった鬱憤もまとめて純人の侍に向けて吐き出すつもりだ。
時間制限付きだがレイアード傭兵団最強と認められた迅雷竜が侍の前に立ちはだかる。
彼は年下の異性を斬りたくなぞなかった。
だがそんなことを言ってられる余裕が無いことに気付いた時には、もう死が眼の前まで迫っていた。
メイフォンは部長と同じように別ルートから敵の食糧庫に向かっていた。
敵の規模事態は小さく、傭兵と言えども戦闘要員は10人程度と聞いている。
その分一人一人は精鋭らしい。
誰かが負傷した場合、後方の氷竜姫の所まで撤退するように言われている。
多少の怪我ならば自分は無視できるのでお世話になるかは分からないが。
氷竜姫に交渉の上報酬を確約してもらった彼女は、セーブしていた力を全力で振るうことを決めた。
いつもより上機嫌で敵の偵察ドローンをかわしつつ、獣人特有の鼻で食物の匂いを探る。
ヘイグの警告によりドローンによる偵察が放たれ、レイアード傭兵団は完全な戦闘態勢へと移行した。
氷竜姫に雇われた彼女はライアと共に、敵の主力の相手をすることを求められていた。
それ故に迂回してでも敵の心臓へ向かっていた。
敵の警戒網が狭まってきたのを見て、目標が近いことを悟る。
そろそろ限界かと思った束の間、物陰から隠していた機関銃から横殴りに鉄色の雨が降る。
展開した障壁が食い破られるのを見て、玄武甲を纏って無理矢理離脱する。
「悪いがこの辺は立ち入り禁止になってんだ。これで死ぬタマだと嬉しいねえ。」
何発か身体に当たったが痛みを押し殺して自らの敵対者を見据える。
「ま、なわけねえか。」
片手で機関銃を操る巨漢が視線をこちらに貼り付けている。
ゲルツ・オルガネイアはレイアード傭兵団食糧庫の地上、地下防衛担当として、設立当時から一度も外れたことは無かった。
黒い角に地竜特有の装甲翼、茶色の鱗を持つ男は地面
に伝わる振動だけで、近づいてくる何かを敵と断定した。
迷うこと無く12.7mm口径の火を吹かせた男は、自らの勘が間違っていなかった事を再認識する。
そしてその標的が生き長らえていることも。
黒猫は比較的中距離からこちらの存在を看破された事実から、最初から麒麟功を全開にする。
そのまま一息で獣化して10mの距離を飛ぶ。
それに対して、地鮫竜は足を地面に叩きつけて魔力を流し、地面からコンクリートを隆起させる。
灰色の壁がお互いを遮ると、黒猫は別のルートから迂回路を目指す。
仕掛けて置いた罠を見抜いて、横ではなく上に飛び、爆発を避ける。
地竜が既に見越して置いていた照準に、標的が吸い込まれる。
引き金を引かれた時には、黒猫は既に魔術を準備していた。
四聖の印が地面に穿たれ魔術を発動する。
四聖北玄流 玄武岩
玄武の如き岩の壁が彼女の前に築かれる。
今度こそ鉛玉を防ぎ、築いた壁をそのまま乗り越えて敵に肉薄する。
機関銃をしまい散弾銃を準備していた地竜は、効かないと見てそれも捨て置く。
魔術により身体に岩の甲殻を纏いて接近戦の準備をする。
黒猫は貯めておいた魔力を身体の隅々まで流す。
身体中に刻まれた印が発光し、魔力の発光現象を起こす。
四聖北玄流 玄武憑霊
玄武そのものを矮小な体躯に無理矢理閉じ込めることによってその莫大な力を借り受ける。
眼は亀を象り、刻まれた印が玄武の甲羅を再現する鎧となり、尻尾には魔力体の蛇が纏わりく。
それを見た地竜は岩だけでなく周りのコンクリートまで操り始める。
魔術によって地面から引っ剥がされた混凝土が形を変えて鎧となる。
双方が身体から迸る魔力を右拳に込める。
黒く染めあげられた玄武の甲羅が右の拳を護り、力を授ける。
手甲を模した魔力の発光現象が黒い光まで帯びる。
型に入った右拳を引いて左足を踏み込む。
獣人特有のバネの用にしなる腕から玄武の甲羅の如き堅い拳が繰り出される。
四聖北玄流 玄武憑霊 黒玄甲武拳
地竜は土から岩、コンクリートから鉄筋まで鎧とし圧縮する。
右手から発光現象が起きる程の魔力が収束する。
全地竜の中でも上位に位置する男の右拳に圧縮された素材が纏わりく。
無理矢理押し込めた圧力が、爆発する程の衝撃をその腕に秘める。
左足を大地に叩きつけて踏ん張り、巨大化した右腕を
膂力で力任せに振りかぶる。
地竜闘術 地裂豪圧拳
双方の身に秘めた莫大な魔力が交錯する。
衝撃波と共に濃密な魔力が場を支配し、周りのコンテナが吹き飛ぶ。
双方が弾き飛ばされ横転していたコンテナに激突する。
決着は着いたように見えた。
しかしまだ戦いは始まったばかりだった。




