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冒大付属の磁力使い  作者: 高瀬義雄
第1章  VRBトーナメント 動乱の春大会編
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第1話 遅れてきた吸血姫

アリアは父から忠告されたことを受けて、やっぱりこうなってしまったかと珍しくしょげていた。


(禁忌魔術指定されかねないので外では神龍の魔力含めて使わないように、かあ。仕方ないですね。)


彼女が使った魔力も魔術も、本来なら世に出すべきものではないのは分かっていた。


しかしVR以外で使ったら、他の神龍が何事かと飛んできかねないらしい。


彼女は実は竜人でありながら、翼がないため翼竜人種に対抗するために使ったに過ぎないのだ。


ただ神龍の許可が無い限り絶対に使えないのではしょうがない。


後に放った魔術関係なく駄目らしいので、それ以外でまた対策を考えなければならなくなったと頭を悩ませていた。


メイフォン含め皆が隠さなくなってきたので、自分もいいかと思ったが魔術規模の問題ではなかったようだ。


教師が垂れ流している回復魔術の講義を小耳に挟みながら、嫌なことは忘れるために、いつも常備している竜人用の高カロリー飴を舐める。


彼らの先祖は戦争に勝ったのに、糧食が尽きて国としては崩壊したりするなど、その暴食ぶりのエピソードには事欠かない。


技術が発達していない古代で、彼らが他の国に攻め込む理由は大体食料不足が原因であった。


実に種族としてはコスパが悪く、戦いを誉れとする彼らの間では弱くても料理人であれば社会的地位が保証される程だ。


竜人のご飯は早い、安い、多いが鉄則である。


最近では旨いも追加されるようになってきたが。


「このように回復魔術は才能とそれに伴う努力、

経験が必須で世界で最も難しい魔術の一つとされています。ですがその有用性は高く即効性の高さから

特に災害救助、急性期病院などで重宝されます。」


回復魔術は魔術を発動した上で対象とする身体の構造まで理解していなければならず、


さらに自身の魔力と対象者の魔力を同調させなければならない。


「仮にこれが不十分であった場合対象者の身体の構造が滅茶苦茶になります。


なので回復魔術はその才があったとしても免許を持たない者はその使用を固く禁じられています。


破った場合はかなり重い罪に問われます。」


グロテスクな光景を妄想してしまった生徒がそれなりにいただろう。


たが教師はこの危険性を説明することが、今日の授業で最も重要であるため加減するつもりはない。


「そもそも人体の構造は種族によって又はその人種の中でも様々です。それを全て文献から学んだ後に

実習を通して頭に叩き込む必要があります。」


自らも適正があり真面目に勉強した時期があったが、

自身の半生を犠牲にしてまで得ようとは思わなかった

教師はそれを実感していた。


「この上対象者の傷病の程度やその際の状態を考慮に入れて魔術を発動する必要があり、状況を考えれば

無限に可能性があります。」


ツムギは本当はそれなりの回復魔術の才があるのだが

そんなことに使える時間もお金もないし、回復の奇跡は得意なので気にしていなかった。


「ですがこれを簡略化して人体への効果を固定化したものが天人の奇跡に存在します。回復の奇跡というのは即効性を落として一定の効果しか及ぼさない代わりに複雑な行程を無視できるのです。」


全体的に見れば奇跡はそこまで得意ではないのだが、これが使えるおかげでここに入ることができたツムギはそれに何度も助けられた。


今まで生きてきて殆ど病院には行ったことがない。


「聖国は奇跡の詳細を公表していませんが、その実用性は認められています。高位の聖職者であれば法外なお布施さえ積めば部位欠損すら治せるのですからそれでも破格と言えるでしょう。」


チャイムが鳴ったと同時に食堂へ脱兎の如く消えた竜姫を見ながら、いつも通りだなーとその背中を追いかけていた。


副部長から一年皆で放課後VRB部に集まってくれと言われたので取り敢えず向かう。


そこには顔を見せていなかった部長がいた。


「はじめましてー。ライア・オルゲイド・レイフォースだよー。私部長だけどめんどいことはウェインに言ってね。」


マイペースな竜人だなーと航平は思ったが口には出さなかった。


「見てたけど君ウェインに勝ったんだね。純人に負けるなんて思わなかったよ。地精の加護が無かったらあれで終わってた筈だしね。」


事実なので反論の仕様もない。レインという竜人の時と同じく相性の差だと思う。


皆が軽く自己紹介をした後、副部長が本題に入る。


「今回集まってもらったのは事前に知らせた通り、

春の大会についての説明だ。基本的には3年が中核になるが実力次第ではもちろん一年も可能性がある。」


ウェインもその魔術の有用性から一年のうちに

レギュラーに入っていたのだ。


流石に先輩の顔はある程度立てていたが。


「知っている者もいるだろうが、ひとまず大会の概要を知らせておく。以前は全試合トーナメント方式が

取られていたのだが、参加校が多すぎるために現在

予選はバトルロイヤル方式に変更されている。」


あくまでも予選のみであり、本戦は全てトーナメントとなっている。


「予選は大体1チーム4人で構成されるが本戦は6人が原則になっている。基本的には総勢でベンチ含めて30人をベースにしている。大会にもよるがな。」


かつてVRBは固有魔術の存在から競技としては著しく公平性に欠けると言われていた。


しかし元より人種や種族の違いもあるのだ。


固有魔術自体は特殊なものが多いが、対策自体はそこまで難しい訳ではない。


何より興行として非常に利益が高かったために、ある程度の障害は無視されたのだ。


例え力を持たない種族でも、見ている分には楽しめるし、戦闘種族の憂さ晴らしとしても都合が良かった。


現在では無くてはならない娯楽となっている。


「現在3年や2年の他のメンバーは他校の偵察で留守にしている。顧問を紹介しよう。知っている生徒もいるだろうが菅原誠也先生だ。彼は我々に接近戦の指導をしてもらっている。」


純人でありながら戦闘種族に指導できるというのは相当な強者に感じるのだが、話を聞くと軍人あがりらしく納得がいった。


十中八九ジパングの強化人間だろう。


見た目通りだと思わない方がいいな。


「顧問の菅原だ。主に近接戦闘の指導をしている。

ジパングの軍に所属していたが現在は日本に帰化している。宜しく。」


落ち着いた低音で都合2度目の自己紹介を聞いた。


舐められないように部では出自を明かしたのだろう。


今は栄えていて人気があるジパングも過去の戦争を知っていればいいイメージはない。


自分もその1人である。


どうやらコーチは他校の偵察に付き添っているため

いないらしい。


「ひとまずこんなところか。我々は選手層の厚さで

攻めることは難しい。一年もそれなりに出場のチャンスがある。皆頑張ってくれ。」


その後は入部に関して当たり障りのない書類を書き、

解散となった。


アリアは自分と仲の良い天人と羊人をどうにかマネージャーとして入部させられないかと悩んでいた。


昨今の女子高生にとって気心の知れた同性というのは、何者にも耐え難いということを経験から彼女は理解していた。


だが彼らの環境を考えるととてもではないがそんな余裕はない。


ゼリアとお喋りしながら帰っていると珍しくリーナ

理事長と出くわした。



「久し振り〜。アリアちゃん。ゼリアちゃん。

実は相談があるんだよね。この後少しいいかな?」


相変わらずフレンドリーな理事長だがこう見えてかなり忙しい立場なのは知っている。

特にやることもなかったので承諾すると、


「私の娘が今度こっちに編入してくるんだよね。だから友達になって欲しいんだ。」


悩んでいたら友達が勝手に増えそうである。

食堂でお茶と1人はおやつしながら詳しく聞くと、本来はこっちに来るはずだったのが用事が長引いて今まで来れなかったらしい。


「ちょっとお転婆だけど悪い子じゃないのは保証するし、それなりに自分の身は自分で守れる娘だからアリアちゃんの周りに置いても大丈夫だよー。」


「へ〜。リーナさんに娘さんなんていたんですね。

どんな娘なんですか〜?」


ゼリアは既に興味津々らしい。


「お楽しみにしといてね。来週の頭に来るから。じゃあお願いねー。独りぼっちにだけはさせないでくれると嬉しいな。」


そう言うと急いで職員室の方にかけていった。


「相変わらず理事長なのに距離近い人ね〜。

こうなればその娘もVRB部に勧誘するのもありかも。」


いくら戦闘種族でもVRB部は基本野郎ばかりなのでゼリアもアリアも同性が欲しいのである。


最初ゼリアがアリアに声をかけたのは遊びだけでなくそういう狙いもあった。


既にその人となりをある程度知っているアリアは、また面白い人がやって来るなと楽しみにしていた。



迎えた翌週航平はいつもの様にメルやミスト、メースと朝飯を食べて登校していた。


そういえば編入生が来るとか言っていたな。

リーナ理事長のお子さんらしいから失礼のないようにしないとな。


HRが始まる前に入って来た娘は菅原先生に促され、

簡単な自己紹介をした。


「セリス・アルフレッドです!ちょっと遅れちゃったけど皆と同じように接してもらえると嬉しいです!」


エルフのように見えるがそれにしては肌白く、銀糸のような髪に紅の眼を持っている。


その容姿から竜姫の隣に並んでも存在感を放てる程には顔も整っている。


純人からすれば人外の容貌と言えるだろう。


早速皆から質問攻めにされているがハキハキと喋るその姿からは物怖じする性格ではないのが分かる。


ザルツは早速絡みに行ったが異性ではなく友達と認識されているらしい。


どうも一見は高貴な麗人を漂わせているが中身は太陽のような人物らしい。


「セリスちゃんはどうして今になってここに入学してきたんですか?」


今も他人との距離の詰め方に定評のある天人が、

悪意なき質問を投げかけている。


「実は私エルフと吸血鬼(ヴァンパイア)の混血なんだ。本当はお母さんがいるこっちに来るはずだったんだけど、実家が真祖だのハイエルフだので鬱陶しくて。面倒くさいからぶっ飛ばして来たんだ。」


それは物理的になのか精神的になのかで大分変わる気がするが。


というかそれとは別に聞き捨てならないこと言ってなかったか?


吸血鬼の真祖にハイエルフだと?


なんか面倒事の匂いがするが理事長が親ならば

なんとかしてくれたのだろう。


その昔吸血鬼という種族は魔物と定義されていたが

長い交渉の末、人類と認められた。


彼らは魔物の中では極めて人類に近く、高度な知性を有していた。


文明の発達に連れて魔物側でいることに限界を感じた

真祖と呼ばれる吸血鬼の長達が、相応の報酬を手に

対等な立場で対話を開始した。


初期は彼らに恨みを持つ者も多く、話し合いは非常に難航したらしい。 


だが彼らが齎した魔物素材への知識や血液に関する研究と、真祖が神龍を証人として呼んだことから、


多大な利益を得られると確信した時の権力者達は

それを飲んだ。


元より彼らは血を摂取せねばならないから人類の天敵とされたのであって、発達した科学と魔術が人工血液の製造を可能にし、人類種との共存を実現した。



元よりリーナは愛娘を頭の硬すぎる爺婆の思想に染める気等毛頭なかった。


しかし真祖とハイエルフの血を継ぐせいで、引き継ぎやらどうしてもしなくてはいけない事があったので入学式に間に合わなかったのだ。


「これからヨロシクね!私ここでハンターになって色んな植物を見てみたいんだ!」


彼女はしっかりとした目的を持ってここに来ているらしい。


確かにハンターになれば危険地域の植生も把握できるだろう。


だからといって必ずしもハンター科である必要はないような気もするが。


自分は元々何か目的があってここに来た訳ではない。


強いて言えば魔物についてもっと語り合いたいが、

共通の趣味を持つ友人は現状当てがない。


最近VRだからといって戦ってばかりだし、たまには電子図書館にでも顔を出して魔物図鑑でも眺めようと決めた。


長く辺境にいたせいで人間との過ごし方はあまり分からない航平だった。

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