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冒大付属の磁力使い  作者: 高瀬義雄
序章 純人の立場
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第20話 VRB部への入部

「これは俺の負けだな。麻宮航平だったか。

強いな。また勝負してくれ。次は絶対に負けんぞ。」


ウェインはこれからの自分の身の振り方を考える必要が出てきたがそれならそれでハンターになればいいと考えていた。


それに春のVRBトーナメントが近い。

実力は大会で示せばいいのだ。


「はっきり言うと単に賭けに勝っただけだ。

ウェイン・ハーヴェスト・オルノールだっけか。

今度やったら勝てる気はしないから遠慮したいな。」


勝ち逃げはさせんぞと言われてまあそうだよなあと

先が思いやられる。これだから竜人は嫌いなんだ。


「お前本当に強えじゃねえか!地面に飲まれた時は

マジで負けたかと思ったぜ!」


ザルツでも相性差で負けそうだな。こいつも何か隠してるけど言うつもりはないらしい。


「俺は正直負けたかと思ってたよ。すごいなあの粘りは。人間かお前?」


鬼に乗り移られてピンピンしてるやつが何を言う。

憑依ってそんな簡単にできることじゃないぞ。


「••••••あんな化け物相手によくも勝ったものだ。

俺ならば現実で会ったら逃げているぞあれは。」


大丈夫、俺もリアルで敵として出会ったら

絶対逃げるから。

お前の狼からも俺は逃げると思うよ。

そもそも逃げられるか分からないけど。


「ーー意外だね。そんなに強そうに見えないのに。」


この黒猫は好き勝手言ってくれる。

だが無表情の割にこちらに興味を持っているようだ。

こいつとは敵対したくないな。

何をされるか分からない。


腹ペコ竜姫の姿が見えないが

どっか行ってるみたいだな。

無茶苦茶目立つのでいたらすぐに分かる。


もう疲れていたのでとっとと帰ろうとしたが、

相手チームに絡まれた。


「本当にいい勝負が多かったよ。まさかここまでとは思わなかったな。」


エルフと竜人の混血から見ても純粋に賞賛しているらしい。


「またやりてえなあ。でもあんなんズルいぜー。

どうすりゃいんだろ。」


俺もザルツと殴り合いだけは御免だな。


「なんて家に言えばいいのよー。あんなの真面目に話して信用されるかしら。」


まあいきなり昔話に語り継がれるような生き物が召喚されてボコボコにされましたって言っても証拠ないと

信用されんだろうな。


「私が彼女と戦っていれば••••••無理か流石に。」


あれを見てあの竜姫と戦いたいやつなんているのか?


「神龍の魔力••••••私も何れは。」


あれは明らかにヤバそうだったから触らない方がいいだろう。竜人に睨まれても困る。


「スカウトに無様な姿を見せてしまったな。部長にも合わせる顔がない。」


勝ったのに勝ち越してる気全くしないけどな。

そういえば部長は名前も聞いてないな、

どこ行ってるんだろう。


本当に疲れたので余計なことは放っといて帰るかなと思い、VRコロシアムを出ようとする。


「待ってくれ。俺は君たちを我々の部に勧誘したい。

うちは名門と言ってもいいし断る理由は無いように思うがどうだね?」


副部長権限で勧誘ができるらしいがまさか全員とは思わなんだ。


「我々と互角以上に戦えるのであれば学生としては

正直十分過ぎる。顧問やコーチに許可と面談は必要だが君たちの返事次第になるだろう。そこまで急ぐ必要はないからゆっくりと考えてくれてもいい。」


近々大会が有るらしくそれまでに入部すれば大会に

連れていってもらえるらしい。


確かにVRBトーナメントを直に見れるのであれば

願ってもないかもしれない。


選手として出れなくともいい経験になるだろう。

航平もVRB観戦は好きでよくTVの前で家族と一緒に

車座になっている。


皆断る理由は無かったようだが一気に6人も入れて

良かったのだろうか。


「そもそも学生レベルで我々とまともに戦える者などそうそういないぞ。竜人の派閥でもないのにそこまで戦える者は少ない。1年はゼリアとゼルクだけだ。」


確かにこの人の地震魔術とか有翼人種でもなければ

対処しようがないしな。


というか他にいなかったのか。

そういえば部活の勧誘とかまだだもんな。


「いずれメンバーは紹介するが今日は疲れているだろうし帰ってもらって構わない。」


俺はお言葉に甘えて退散することにした。

地面の中でミンチにされそうになったのだ。

軽くトラウマものである。

メンタルを大分削られたので帰って魔物図鑑でも

読もう。


自他ともに認める魔物オタクだが昔同級生に引かれて以来隠している彼は、高校生としては一般的な悩みも抱えていた。



ーー黒猫と赤猫がVRB部の部室で対面に座っている。


「ーー私はねお姉ちゃんを探してるんだ。灰色の猫人で混血だと思うんだけど心当たりないかな?」


ゼリアの知り合いはその生まれ上竜人方面が殆どであるため獣人に関しては詳しくない。


「う〜ん。ゴメンね。私獣人方面には詳しくないんだよね。知り合いも大体竜人側だし。」


一応知っていそうな知り合いに彼女について聞いた

ばかりだったが、芳しくなかったことを考えると

彼女の姉のことだけ知っているという可能性は低いだろう。


「ーーそっか。いいよ、ありがとうね。元々望みは薄いと思ってたから。」


「生き別れた姉を探しているなんて今時難儀なことしてるわねえ。獣人なら中国の何処かだと思うけど、

流石にあの国で人探しは骨が折れるわね。」


なんせ獣人は数が多い。一つの町の人間1人1人に尋ね人などしたら日が暮れるどころか年が明けるだろう。


黒猫は帰ろうとするが赤猫は最後に一つだけいいと

質問した。


「あなたって中国の裏出身なの?」


「ーーん、秘密。」


話す気のない笑顔でそう呼ばれ降参したゼリアは

実家の連中にどう伝えたものかと頭を悩ませていた。




その頃アリアは自分の父にある提案をしていた。


「お父さん。その勧誘、私が窓口になりましょうか?」


ディルク少佐は愛娘の提案に悩んだが、それが最善であったのも事実であった。


アリアは彼を見つけて仕事の顔になる。


「ウェイン副部長。少し折りいってご相談があるのですが2人で話せないでしょうか?」


少し硬めの言い方に何事かと身構えたが相手の表情を

見ると悪い話ではないようだ。世の男が期待しているような話でもないらしい。


「構わないよ。私にはこの後の予定もないしな。」


決着は一瞬であったし炭鉱跡での労働に比べれば大したことはない。

試合内容的にもこちらの方が大分余力が残っている。


適当なVRB部の部室に入りお互いが椅子についたのを見てからお茶を沸かしてアリアは本題に入った。


「私の父であるディルク少佐からウェイン副部長に

スカウトの話が来ています。詳しいことは直接本人に会ってからになると思いますが。」


アリアはそこで一度話を切って相手の反応を見てみるがまだ彼の中で結論を決めるつもりはないらしい。

取り敢えず門前払いという訳ではないようだ。


「ここを卒業後に諜報部の私設部隊に入隊という

経緯になります。労働条件はこちらが素案になっています。」


用意しておいた資料からデータを引っ張りだし

中型の情報端末にて提示する。


VRBの出資者にしてここのスポンサーが提示した条件は高卒の給料としては破格と言える。


「••••••少し時間を貰いたい。」


「元よりそのつもりです。即決できる事でもないでしょうから。またこの提案を断ったとしてもそちら側に何の不利益も無いことを保証致します。」


実質的な影響力で考えればそんなことにはならないが

力ずくでこちらを取り込む気ならもうしているだろう。


「私はあくまで窓口なので、父の部隊と交流自体はありますが軍籍はないですから。断ってもVRB部には気遣いなく所属させてもらえると助かります。」


本来なら色々な過程をすっ飛ばして所属できる筈だが

彼女にそのつもりはないらしい。

娘を軍人にさせる気がないのは噂通りのようだ。


「それでも窓口として働いているとは思わなかったよ。だが私は亜竜の生まれだ。その部隊の全てが

亜竜戦争での悲劇を忘れている訳ではあるまい。」


魔術の使えない竜人として蔑まれた彼らは奴隷階級であり、竜人に非ずとして‘‘亜竜‘‘と軽んじられた。

竜ですらないワイバーン等と同類と見なされたのだ。


いつかその不満が爆発し、反乱を起こすのは目に見えていた。ジパングからの武器提供が引き金となって

その凄惨な争いは勃発した。


「もちろんかの戦争の被害者達も父の部隊には存在します。私もその1人です。ですがあの戦争は結局

竜国側が全てを蹂躙して終結しました。」


自らも被害者であると語る眼の前の竜姫はそれを意に介すつもりはないらしい。


ウェインは当時若過ぎたため反乱に加わることはなく

生き延びたのだ。村の中で魔術が辛うじて使えたので戦争後炭鉱跡に送られてからは彼らのリーダーとなっていた。


「そうか。君が既に気にしていないのであれば私が言うことは何もない。だが困ったな、これで断っては

白状が過ぎるというものだ。」


相手側から歩み寄っているのにこちらが一方的に拒絶する訳にはいかない。


ウェインはその生まれとは裏腹に友に恵まれたおかげで捻くれずに済んだが、こういう筋を通すことができるのも周りに好かれた理由だろう。


「まだ卒業前の段階ですし父からは焦らずに決めて欲しいと言われています。心変わりすることもあるでしょうから。今日はありがとうございました。私からは以上になります。」


「ありがとう。検討させていただくよ。」


そう言うと、会釈と共に出ていく竜姫を見送り、

ウェインは思索に耽っていく。


(黒曜竜ディルクか。VRBの出資者にして竜国の諜報部に籍を置いている俊傑。俺にこだわっている理由が何かあるのだろうか。)


彼はまだ誘いに乗ったわけではない。竜国の上層部に対しての偏見はまだ残っている。


しかし純竜主義の連中とは距離を置いている男ならば、立場上自分を手に入れたくても不思議はない。


自分の行く末はどうなるか分からないが、奈落の底で散っていった親友(とも)のために何をすべきなのか結論を出せないでいた。


まだ時間はあるがいつか決断する日が来るだろう。



アリアは実は軍の窓口になったのは今回が始めてだったが、いい感触を得られたのではないかと思っている。


(さーて、竜炭焼きべえが私を待っています!)


父に悪くない手応えだったと返事をしてから

ゼリアから貰ったチケットを握りしめて急いだ。


帰ろうとしていた皆を如何に高級鉄板焼が美味しいかと力説して、交渉の末今日そのまま直行することにした。ちゃっかりツムギとメリルの分も請求していたアリアは無理矢理彼女たちも連れてきた。


「あの、前も思ったんだけど私達何もしてないのに

ここにいていいの?」


「今回は流石に部外者じゃないかな?」


前回も別に何かした訳ではないしたまたまそこにいただけである。


「皆で食べた方が美味しいですからね。

それにもう説得済みですから。奢りのお裾分けです。」


人が何人増えようがザルツは女子ならウェルカムだし

航平はどちらでも良かった。

鏡月もそんな懐の狭い男ではない。

黒猫はなんか竜姫に貸しと言っていたが。




ここまでの美味が存在するのかと流石は竜人御用達と言われるだけはあるご馳走を堪能した。


始めて食べる高級料理に天人と羊人は饗される全てを脳髄に染み渡らせていた。


甲殻類はマナー違反上等でロブスターをかっこみ

故郷の味を思い出している。旨い海の幸は久し振りだったらしい。


侍は高級料亭のつもりで来ているらしく普段の彼との

ギャップが凄い。目茶苦茶行儀良く食べている。

そういや実家が料亭だって言ってたな。


黒猫は眼が光りながら高速で魚を骨にしている。

無表情で早食いってどうなってんの?


狼人は最初は借りてきた猫みたいになっていたが

今はもうそんなことどうでもよいと言わんばかりに顎の中に色んなものをかきこんでいる。


弾ける肉汁が竜人の眼を釘付けにしている。

こちらも普段の食べ方が嘘のように行儀良く貪っている。大量の肉を胃袋に流し込んでいるのにマナーは全く損なっていない。どうやったらできるんだろう。


竜人印のお酒を樽で貰ってるけどどういうこと?

土人でもそんなに飲めないぞ多分。


全てを平らげた後は1名を除き食べ過ぎだった。


寝言のようにもう食べれない食えんと呻きながら

皆で幸せな帰り道を辿っていった。


この幸福がこれからもずっと続けば


彼らは幸せに生きれただろう。



全ての試合を見終わった後、


ゾニス・ウェルムッド・オルレオンは今年は豊作になるだろうと感じていた。


緑角に黄鱗の竜は後輩達の戦い振りから今年の春の大会は見逃せないなと思う。


プロVRBチーム、ブレインデッド・ゼファーに所属するゾニスは、後輩達が派閥争いに縁のない氷結晶の竜姫とやりあうと聞いたので一応見に来たのだ。


翼竜人のため何かと面倒なお使いを頼まれる彼は

たまたまこの近くに来ていたため立ち寄っただけだが

そこで従妹と一緒に別の部屋から彼らを観戦していた。


ライア・オルゲイド・レイフォースは自由人であり、

部長としての仕事や七面倒臭いことは全て真面目なウェインにぶん投げていた。


赤角に緑鱗を持ち、眠そうな眼でVRBの画面を見つめている。


従兄が来るというので念の為関係者として呼ばれたが騒ぎになってもだるいと考えた彼女はそれを周りに伝えないようにお願いした。


元々強いから以外の理由でVRB部に入る気の無かった彼女は、仕事を副部長が兼任してくれるのなら入部するという条件で在籍しているため実質的な部長ではない。


この凧のような女子は目を離すとすぐに飛んでいってしまうため、ゾニスはこれではどちらが客か分からないなとため息を吐いていた。


だがそのフリーダムさも今回の試合を見れば鳴りを潜めている。


胡乱な目元で画面に眼を向けている彼女はその強さだけでここの部長と呼ばれているだけはあり、唯一興味を引くのは戦いそのものである。


「あれーウェイン負けちゃった。意外だなー。」


竜姫は私でもどうしようもないかなーと思ったが

他にも面白い魔術ばかり使う者が多い。

私も加われば良かったなと後悔していた。


いくら彼女でも現役プロの従兄が来るというのでそっちを優先したのだが。


「そーいえばスカウトの人はいないんだね。」


「今回は私だけで来ているからな。私用で近くに寄ったから母校の様子を見ようと思っただけさ。」


「ふーん。でも来て良かったみたいだね。」


「今年は期待できるだろう。ひょっとすると1年からレギュラーが何人か出るかもしれんな。」


その可能性は十分あるだろう。皆レギュラーになってもおかしくない程の実力はある。


彼女は従兄に別れを告げながら今年の春のトーナメントはレギュラーをどうするか考えるが、

めんどいしやっぱりウェインに丸投げすると決めた。


ゾニスは客なのにいきなり放り出されたがどうせ

母校なんだし迷うことないでしょと言われて、

昔から代わり映えのしないマイペースな暴君に

振り回されていた。

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