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冒大付属の磁力使い  作者: 高瀬義雄
序章 純人の立場
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第10話 眠っていたモノを起こせばこうなる

アリアは当初近づかれれば自分が前に出るつもりだった。

自分は混血なので龍鱗を持っていないが、純人の彼が前に出て獣人の相手をするよりはましだと思ったのだ。


彼は異性に良いところを見せようとして無理してカッコつけるようなタイプではなかった。

彼もそのつもりだったのだろう。


ーーエイグは射程の長い方からやるべきと思ったが、

こうなればどちらを狙うか長くは悩まなかった。


どちらも放置はしづらくヤウェンは接近戦しかできな

い。

まあ定石通り狙うなら純人だろうと踏んだ。


余裕を持って近づくヤウェンを前に、純人は距離を取りながら鉄を撃ち出している。


しかし獣人の方が足は早く、後退しながらではいずれ追いつくだろう。


連携もしづらい向こうは魔術を連発すれば相打ちになる可能性も高かった。相手が集まるなら包囲すればいい。


ただ近距離にいるヤウェンは時折打ちだされる鉄の散弾に危ういものを感じていた。


(あーれ絶対こっちが踏み込むまでは撃ってこないなーめんどー。)


こちらが一発を当てられるところまで近づけば、至近距離では避けようがない一発を必ず準備している。


エイグの魔術は鉄の壁で遮られる。

もう一方の竜人の氷と結晶の壁も硬すぎて突破できず、決定打がない。


吹雪を打たれれば下がるしかないし、これは1対1で先に純人を倒した方がいいと判断できる。


ーー航平は敵が狙うならこちらだが相手が何か手を打ってこない限り問題はないと感じていた。


相手の羊人は遠隔攻撃は持っていないようだしハイエナの方は射程はあってもこちらの壁を撃ち抜けない。

ただ手の内を全て見せているようには見えない。


(様子見で火球を打ってるだけだな。まだ獣化も切ってない。でもそろそろ来てもおかしくない。)


その時こそがこちらが仕掛けるタイミングであると感じ、魔力を練っていた。


ーーその時が来てアリアは魔力の高まりを感じた。

鬱憤が溜まりきっていたであろう羊人が獣化を行い、彼目掛けて走り、巧みに自分と羊人の射線上に彼を挟む。


(これでは壁しか作れません!)


だからアリアはハイエナの方に吹雪を放った。

最悪彼が倒れても自分がどちらも倒せばいいと。

どうせ彼なら一人でもなんとかする気がしたのだ。


ヤウェンは焦れて獣化したというよりはエイグの合図を待っていたというのが正しい。


もちろん殴れる感触を味わえないことに退屈を感じてはいたが。


獣化すると蹄や角がより一層大きくなり、伸びた筋肉線維が彼女の腕の射程を伸ばす。大きく発達した脚からステップを踏んで一気に懐に飛び込んだ。


鉄以上の硬度を誇る蹄から柔軟な突きが飛び、魔術の展開できないタイミングで純人を捕らえた。



航平はここが勝負どころと感じ、

()()()()()()()()()()


ヤウェンはまさか向こうから距離を詰めてくるとは思わず、突きの威力を下げるためにわざわざ密着するつもりかと思ったが、そうではなかった。


相手は創り出していた鉄のセスタスを手に纏って型に入った動きから正拳突きを繰り出した。


黒錆鉄魂流 磁鉄拳


恐らく世界で彼一人しか使わないであろう拳を振り被りながら、魔術が発動し磁力で勢いが乗せられた一撃を通す。


ヤウェンは純人がわざわざ接近戦をする利点を見出せなかったが、相手の拳の鋭さを見てその考えを改めた。


直前で足を踏ん張り歪なステップを踏み敵の拳を空かす。


ただヤウェンは隙だらけの筈の純人の目に危ういものを見た。


だからガラ空きのボディになるべく体勢を崩さない突きを放った


蹄腕突!


やはり魔術が展開され磁力が展開される。

そしてそれに引っ張られた純人の体勢は、腰に仕込んでいた鉄のベルトにより数歩ズラされる。


獣化済みの自分が捉えきれない純人を見て、苛立ちを覚えながらも、ヒリつくような殴り合いができる相手に自然と口角が上がっていた。


ーーエイグはやはり一番ヤバかったのはこいつだと自分の勘を褒めていた。


魔術合戦になると吹雪を無尽蔵に起こし、こちらの魔術は全て結晶の壁で完全に止められる。


次第に押されていき、低下する体温から動きが鈍くなる。狩人はあちらだと気づいた時にはもう跡がなくなっていた。


コキュートスの名をミドルネームに冠している時点でただものではないのは分かっていた。


だがこれはかなり古い慣習であり、そんな情報にもアンテナを張り巡らせていたエイグにとっては、

逆に骨董品のような見栄であった。


何も知らない周りにはいい威嚇になったろうが。


問題はそれとは関係なく、眼の前の相手に絶対に魔術では敵わないのが分かってしまったことだった。


元より鱗はないようだが竜人である。接近戦もやろうと思えばできるが近距離でも魔術を併用してくるようで勝てる気がしない。


元来あまり魔術が得意ではない他の獣人たちでは彼女の実力がわかりづらかったのだ。


エイグは獣人にしては魔術を得意としており、グループの中では新参者であったが重宝されていた。


(勝てねえ。ナニしても。なんで気づかなかった。

今まで隠してやがったな!)


エイグが取った行動は非常にシンプルであった。

敵わないと見るやいなや獣化を使い逃げだし、もう一人を先に仕留めに動いた。


ヤウェンと二人掛かりであればまだやりようはある。この選択をしたエイグは冴え渡っていたと言える。


ハイエナとしての顎や牙が大きくなり、心肺機能が増進すると、上昇した持久力とともに一息に駆け抜けた。


ーーまさか一目散に逃げ出すとは思っていなかったアリアは期待外れで少し拗ねた。


だから彼の方にハイエナが近づいていると知った時にはちょっとだけ後悔した。


(あ、本気出さないと彼に迷惑かけそうですねこれ。)


また周りに引かれるのではないかと。

自らの内に眠る暴力的な才能を恐れながら。


ーー航平はいきなりこちらに方向転換したハイエナが

飛び込んで来るのを見ると、己の未熟を悔やんだ。


彼が魔術を打ち出し火球が迫るのを見たが、何かをする前に結晶の壁がせり上がり、全てを遮断する。


しかし見越していたハイエナはそれを迂回し、魔術を展開する隙を作らせないように接近戦を挑んでくる。


相手の羊人も少し驚いていたが、合わせるのに支障はなく挟み込むように右の蹄でフックを刺した。


曲蹄突!


曲がるような軌道で重い蹄が襲い来る。


ハイエナの獣人が右の爪を伸ばし、対応できないようにわざと少し遅らせてから首を狙う。一撃で仕留め次に備えるために。


首刈り爪薙(くびかりそうてい)


航平はここに至ってVRとしての遊びで考えるのを辞めた。


命のやり取りに慣れきった者の眼が殺気を放つ。


右腕に纏っていた鉄の塊を、最速で展開した磁力魔術で羊人の利き足目掛けて吹き飛ばした。


結果を見ずにハイエナの方を向き、迫る爪を避けきることは諦め、逆に敢えて受けてこちらの反撃を確定させた。


避けきれなかった爪が右肩を抉るが、残る左腕の鉄塊に磁力を乗せて、通り過ぎようとするハイエナの顔面に殺す気でカウンターを叩き込んだ。


一撃で仕留めるために遅らせていた動きが仇となり、対応できなかったエイグはこっちもヤバかったと悪態をついて消失した。


足を打たれたせいで即応できず、特大の吹雪に飲み込まれたヤウェンは、眠れる獅子はそっちかーと諦めて目を閉じた。

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