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冒大付属の磁力使い  作者: 高瀬義雄
第0章 プロローグ
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第1話 困った時に頼れるのはやはりCONNECTION


「正直難しいかなあ、この成績では。」

(もう受験も終盤とは言え教師がそんなこと言わなくてもいいじゃないか。)


麻宮航平は先ほど小人(ハーフリング)の塾講師に言われた言葉を噛み締め、夜のアスファルトに幽霊(ゴースト)のようにため息を吐いていた。


身長は男子中学生にしては平均的で、握りしめた参考書から受験生だと見てとれる。


参考書をしまい懐から出したメモには全て斜線が引かれており、全ての高校から色よい返事が貰えなかったようだ。


少し癖っ毛のある黒髪に落ち着いた黒目で純人(ニューマン)でありぱっと見あまり印象に残らない。


そこまでオシャレに気を使っているようには見えないが、本人に聞けば先立つものがないだけだと理解できるだろう。


(ただでさえハンデがあるのに自分の頭が使えないのは分かっていたが、これではトロールみたいと言われても仕方ない。また帰ってメルに慰めて貰おう。)


どうせ実家の牧場を手伝うのだからまともな高校は諦めて最終学歴中卒でもいいかと悩んでいたら、

親から流石に高校は卒業しろと言われたのを思い出す。


母さんもたいして変わらんでしょと言って、

またアイアンクローを食らいたくはないので不毛な想像を打ち切る。


VRバトルの広告が流れているのを見ていっそそういう道もありかと妄想に耽っていた。


しかしドワーフの電気屋の角を曲がるとそんな余計なことは文字通り全てどこかに吹き飛ばされていった。


自分の人生では一度として発掘できないような

青玉(サファイア)が、竜人(ドラゴニュート)印のサラマンバーガーを両手いっぱいどころか山のような量を抱え、スキップしながら歩き食いをしている。


年の功は自分とたいして変わらないように見える。


しかし男どころかどんな女から見ても否定しようのないスタイルを持つ美人が、満面の笑みで歩き食いをしていればどんな老若男女でも振り向くだろう。


(ぶっちゃけ見た目どうこうよりサラマンバーガーの量がおかしい、えあれもしかして一人分じゃないよな?)


しかし落ち着いてその水色の結晶角と白い尾、

隠しているがしっかりとした牙を見れば

大体いつも腹ペコで有名な竜人がご馳走にありついているだけだと言うのが分かる。


人外の美貌というのはこういうことを言うのだろうなと思いながら、辛うじて不躾な視線を消す。


「やっぱりハンバーガーは竜人印のサラマンバーガーが一番かな?いやでもジャパンのDXマッキンゼーバーガーも捨てがたいんだよねえー。でも量をもうちょっと増やして欲しいなあ。」


最初の衝撃から立ち直ると、角に限らずよく見ればきめ細やかな銀髪と純白の肌、サファイアの瞳を持っている。


銀髪を二つの結晶角に引っ掛けたツインテールにしており、明らかに普通の竜人ではないのが分かる。


しかし注目を浴びるのには慣れているのか、多少独り言を聞かれたくらいでは気にならないらしい。


よく通るが別段大きな声でもないのに、それが耳に入ってきたのは、それだけ自分が彼女に釘付けだったということだろう。


周りの男が絶対に放っておかないと断言できるような気配(オーラ)を振りまきながらも、

その注意は全て目の前のご馳走にしか注がれていないらしい。


あそこまでの美貌を目にすると自分とはレベルが違うと思うのか気安く絡みに行くゴブリンのような男はそうはいないようだ。


しかしどんな場所でもバカはいるもので、明らかに彼女に絡もうとした男が、次の瞬間黒服の竜人のお兄さんに肩を掴まれて路地裏に消えていった。


さーて俺は何も見なかったぞと気分を変えるとお気に入りの鳴き声が聞こえ、スマホを取り出す。

(あれ知らない番号だな、誰だろう?)


まあどうせもう今日は勉強する気もないし非通知でもなければと出てみれば、


「もしもし君がアンナの息子の航平くんかい?私はアンナの友達のリーナで冒大付属のお偉いさんなんだ。親友から息子がこのままだと息子の学歴が三行も書けないから助けてと言われてね。」

と女性の流暢な声で呼ばれた。


よく考えれば親自身も三行もあるかなと悩んだが、お偉いさんにしてはやけに砕けた口調で話をしてくれているのでこちらも楽だった。


「はい。俺が航平です。でも母にそんな知り合いいたんですね。どんな縁か想像がつきませんけど。」


「まあ昔色々あってね。君が望むなら実は推薦枠をあげないこともないよ。ぶっちゃけコネってやつだね。」


(あ、前言撤回、この人母さんと同じ属性の人だ。お偉いさんとか言ってたけどぶっちゃけ過ぎ。)


「詳しいことは会って話そうか。難しいことは私とに任せといていいよ。エルフの世界樹に賭けてね!」


(結構声軽いけどほんとに大丈夫なんだろうか。

新手の詐欺とかじゃないよな。どこでエルフの知り合いなんて手に入れたのか知らないが何よりも母と同じ属性を感じるので大丈夫だろう。)


「でも自分の実力も見てないのに推薦枠なんかにしてもらって大丈夫なんですか?

冒大付属ってかなり偏差値高いし、最先端の設備も揃ってるって聞きましたけど?自分では流石に場違いかなと。」


「大丈夫大丈夫。アンナが認めてるなら問題ないよ。

身体のことも聞いてるし、というかどうせハンター科だろうしそんなに偏差値は気にしなくていいよ。推薦枠関係なくあそこは頭いいわけじゃないしね。」


遠回しに馬鹿にされている気がしないでもないが悪気は感じないしそもそも渡りに船である。


断る理由もなかった彼はここで首を横に振っていればもっと平穏な学生生活を遅れたであろう。


どちらが彼にとって良かったかは分からないが。



夜景が見える部屋で明らかに安物ではないソファーに座りながら、食べかけのハンバーガーとスマホを両手に持つ美少女がいた。


冷蔵庫から竜人印のお酒を出しながら電話の相手と

笑い話をしていた。


「お父さん竜人でもないのに流石にあれはやりすぎだよ。感謝はしてるけどね。」


本人も微笑んでおり半分は冗談なのが見て取れる。


「ごめんよ。アリア。大丈夫、怪我はさせていないからね。でもあれぐらいしないとアリアに近づく悪い虫は一生減らないと思うよ。少しだけ()()()()をしたら快くこちらの要求を飲んでくれたよ。」


自分の美貌は理解しているが、それを何かに活かそうと思わない彼女にとっては、迷惑さえかけなければいいかと思う程度のことであった。


「それとは別に話があるんだ。どこで情報を聞きつけたのか分からないが、このタイミングで冒大付属の推薦枠を取ったものが2人いてね。気になるから調べさせたんだ。情報はそちらに送っておくよ。お休み。」


「大丈夫だよ。向こうには頼りになる先輩もいるし、一応気を付けておくけど。お休み、お父さん。」


スマホを切ると充電機に挿し、サラマンバーガーの最後の一口を名残惜しそうにを食べ、しっかり歯を磨いてベッドに薄めの布団をかけて横になる。


相変わらず過保護だなと思いながらも親の温もりに感謝する。


推薦枠の横入りは気になるが流石にここまで派閥の影響力はないので何かあれば彼女に相談すれば問題はないだろう。


親元を離れた後のこれからの学校生活を楽しみに頭の中に描いていると、


そういえば今日は珍しく純人(ニューマン)を見たなと思っていたが彼女にはその程度のことだと思っていた。


これが彼との初めての出会いだったと気付くのは特待生枠として冒大付属の面接を受けた日にVRBを見ている時だった。







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