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story1 違和感

ジュリ視点です。

チュチュチュチュ.........。


小鳥の声が聞こえる。

朝の、気持ちの良い太陽が顔を擽る。

思わず顔を背けそうになる。

あくびが出て、もう少し寝てもいいかって思え.........。


思ってはいけないのだった。

よく考えれば私は、今日夜番だったのだった。

確かに最近は魔物こそ強くなりつつあるが、それでもここまで眠くなることは無かった。

またグテモーラ様に怒られてしまうな。


起きようと思ったが、何かがおかしい。

私は木の幹に背を預け、うとうととしていた筈。

しかし、何故だか今は地面を背にし寝ているのだ。

しかもそれは極上のふわふわ感。

何だ、このベッドは。


ベッド自体は、私の村にもあった。

私自身ベッドと言っていいのか分からないが、柔らかい草で編んだベッドを使っていた。

しかし、これはもはや別格どころか別物だ。

こんなの、王様が使うものじゃないのか。

とんでもない柔らかさの布団に、程よく頭を跳ね返す素材の枕。

更に、これまた柔らかい心地の布がかかっていた。


これは、何だ?

一体何の夢なんだ?

状況が掴めないが、一旦布団から出る。

と、同時にクラっときた。


この状況で、今度は何だ?

というか、どうなってるんだここは。

私は先ほどまで森に居た筈だ。

それが何故か、部屋にいる。

しかも部屋には神妙な物がいくつか置かれている。

あの本の山は何だ?

何やら絵画が書かれているぞ。


こっちには黒い大き目の板がある。

その近くにはこれまた四角い何か凹凸の付いたアイテムが落ちている。

その隣には、これは!!

まさか、まさかこれは神札じゃないのか?!

あの、伝説の龍を呼び出せるとか言う...!

何故こんな部屋に、というか何なんだここは?!

私はどうなっている?

まさか、死んだのか?


と、部屋に驚く私だったが、ここでとある事に気づく。

何やらいつもより視点が低い気がするのだ。

しかも、身体が嫌に軽い。

まるで身体中の筋肉を削ぎ落したかのような、嫌な軽さだった。

周りの空気が重く感じる。

ふと腕を見れば、まるで枝のように細くなってしまっていた。

これは......!?


まさか魔物の攻撃かと警戒する。

こんな精巧な夢を見せてくるとは、この森の魔物には幻術効果のある者も居るのだな。

だが、間違いなくあのベッドの手触りは本物だ。

確実に私を仕留めるために甘い罠という訳か。

姑息な魔物だな。


剣を抜こうと腰を見たが、剣が無い。

というか鎧も無かった。

慌てて頭をまさぐると、兜すら無かった。

そんな、馬鹿な。

寝ていた時に仲間もやられていて、且つ装備も奪われたというのか。


確かに絆をイマイチ感じない仲間ではあった。

私に近づく金目当ての女性に対し、おこぼれは貰うとか何とかいう女性尊厳尊重のカケラもない戦士。

協力的ではあるが、その反面一々気の毒がってお金を恵んだりメシを勝手に持ち出したりするため面倒臭がられる僧侶。

一々高圧的で、平民である私に対し何が気に入らないのか毎度の如く罵詈雑言を吐いてくる魔法使い。


確かに私もイマイチ乗り気になれない部分はあった。

それでも、先ほどまで共に夢を背負い戦ってきた仲間だったのだ。

それが、一瞬でやられた。

私が少し目を離した隙に。


後悔してももうどうする事も出来ない。

私が寝ていたばかりに、彼らを死なせてしまった。

この枷は私が背負っていこう。

......だが、ひょっとしたら、生きているかもしれない。

助けに行く他無い。

幸い、どうやら扉があるようだった。

こんな怪しい所からはとっとと抜け出してみせる!


私の肉体は、どうやら経験値を吸われたのか貧弱になってしまった。

これでは村で生活していた頃よりも低くなってしまったな。

そして魔法も使えないようだ。

どうやらこの空間の中にはアンチマジックエリアがあるらしい。

そこまで対策されているとは、敵ながら天晴だ。


しかし諦めきれないのが私だ。

どう足掻いてでもここを抜け出す。

まずは様子見だ。

ここにあるモノを取っていこう。


この神札はきっと役に立つ。

それに、武器の替わりになるであろう刃物を見つけた。

刀がヤケに軽い気がするし、ゴテゴテとしていて何なのか分からないが、きっと強い武器なのだろう。

残念だったな魔物よ、私が出られないと思い油断したな。

捕まえている場所に武器を置いていくとは、先ほどの天晴を取り消したくなるな。


と、突如扉の向こうから音が近づいてくる。

この音の感じは、足音だな。

しかも、結構な地響きだ。

これは手強い相手に違いない。

あの感覚から言って、恐らく階段を上がっているな。

今、この部屋の前まで来た。

こうなればやるしかない。

私は剣を構え、腰を落とす。

さぁ、何が来る。




ーーーーーーーーーーーーガチャ





「寿理ィ、早く起きなさい!!!!!!!!!」



「覚悟!!!!!!!」



咄嗟に剣を振ろうとし、思わず立ち止まる。

この人は、人間だ。

慌てて剣を降ろし、何とか踏みとどまった。

危ない、あまりに警戒しすぎて人間を殺してしまう所だった。


「アンタ、何やってんのよ。こんな朝っぱらから。寝ぼけてんなら顔洗ってきなさい。全く、起きたと思ったらこれなんだから。」


何やら怒られている。

何やっている、と聞かれても。

寝ぼけても何もない。

一体、どうなっているんだ。

まさか、私もあの後やられて、近くを通りがかった騎士団か何かに助けて貰ったのかもしれない。

となるとここは宿か病院だろう。

仲間も別の部屋に居るかもしれん。

まずはこのご婦人に聞いてみるか。


「あの、申し訳ないが聞かせて頂きたい。ここは何処なのだ?というか、貴方は誰だ?」


と、この婦人の顔がまたも険しくなった。


「アンタねぇ、そうやってふざけてると本当に遅刻するわよ!!...はぁ~、折角中学2年生の病が治まったかと思ったらこれだものね......。全く、先が思いやられるわ。」


またも怒られてしまった。

ふざけてないのだが。

まさか、俗にいう戦闘と一切関係ない場所なのか!?

話には聞いていた。

魔王などの話自体は知っているが、中立という立場の為戦いを知らない国があると。

とはいえ流石に聖王国の紋章を見せれば大体は分かってもらえると思うが。

しかし、本当に何処なのだろうか。

こんないいベッドに寝れるのだ、きっと王室御用達のベッドなのかもしれないな。


.........さっきからこのご婦人に怒られてしまっているが、果たして私は何故怒られているのだろうか。

......いや、それはそうか。

急に起きたかと思えばいきなり質問攻め。

それは仮にもレディに対して失礼だったか。

私としたことが.........。

あと、チュウガクニネンセイの病とは何なのだろうか。

まさか、この今の状況と関係が!?


「先ほどは失礼した。...私の名はジュリ。聖王国レスターニアから旅をする勇者だ。以後、お見知りおきを。」


すると、今度は呆れたような顔をして言われた。


「あのね、本当に時間無いのよ。それと、いい加減それ辞めないと恥ずかしいわよ?...ふぅ、ほら早く顔洗って。その姿で学校に行くの?大体ね、勇者寿理って安直過ぎよ...。ふふふ、全くしょうがないね。」


時間が無い...?

何か差し迫った問題があるのだろうか。

そして、恥???

確かに先ほど失礼したがそこまで面と向かって言われると来るものがあるな。

だが、今、さらっと言ったがあまりにも不自然なモノがあった。

今、学校と行ったか?

行けるのか、学校に。

本当に?


あの女性はそれ以上話しては来なかった。

早くしなさいよとは言われたが。

しかし、何故最後あの女性は笑ったのだ?

私には何一つ分からない。

とりあえず言われるがままに部屋に行く。

と、そこには何やら不気味な男が立っていた。


ぼさぼさの黒い髪。

小さい目になんとも言えない形の鼻。

体系は細く、全体的にもっとメシを食べた方が良い男だ。

もっと言えば、なんというかパッとしないな。

見た目は兎も角、髪や顔は精油などで何とかなりそうな感じがあるが......。

服装も分からない。

なんだ、このダボッとした服は。

紺色で横に麻木色のラインが入っている。

絶妙に合わない......。

............。

奴は全く動かない。

顔を洗わなければならないので、あの女性に教えて貰った通り台の装置を動かそうと近づく。

するとその男も近づいてきた。

あまりの近さに驚き離れると、奴は驚いた顔で私から離れた。

......?

これは、まさか。

試しに私の右手を上に振ると、奴は左手を上に振った。

それだけでは無く、私が腰を左に突き出せば奴は右に腰を突き出した。

..................。

これは...。

これは、間違いなく鏡だ。

何故そんな高価なモノがこの施設にあるのかは分からないが、とにかく鏡だろう。

という事は.........。


この、いかにも不健康そうな男が、私という訳だ。

納得したくなさ過ぎたが、とりあえず装置を動かし水を浴びた。


そこで、ふと私は違和感に気づいた。

というか、当たり前に思うべきだったのだ。

この水の綺麗さに。

なんだ、この透明度は!?

普通手洗い場の水など少し汚いものだぞ!?

ここの手洗い場は、まるで飲めそうな程綺麗で透き通っている。

何なのだ、本当に。


顔を潤した所で、腹が鳴る。

きっとあの女性が入った部屋が料理場なのだろう。

ならば、食べる部屋は何処なのだろうか。

そう思い、私は奥へと進んでいった。

あまりこういった異世界の勇者がこちらに来るって無い気がしますね。

有ったら教えてくだせえ。

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