episode0 荘田 寿理
前日譚です。
という事ではじめましての方ははじめまして。
テキオレを見てくださっている方はこんにちは。
こしあん大福です。
これから、宜しくね!
荘田寿理は、陰キャである。
誰がどう見たってそういうだろう。
彼自身、そう言われたところで痛くも痒くも無かった。
実際そうなのだから。
今更お前陰キャだろと詰られたところで彼にはダメージなど無い。
そもそもが、彼はそういった事をあまり気にしていない。
というか、気にしなくなったのだ。
元々、彼は名前もあって幼少期は結構気にしていたのだ。
輪に入れず一人絵を描いたり、皆が鬼ごっこをしているのを指を咥えて見つめながら本を読んだりするのが。
彼は元々その性格もあって友達などできなかったが、それでも友達は居た。
だが、だんだんとその数は減り、小学生になる頃には誰も居なくなっていた。
実際には彼を友達だと思っている人間は居たのだが、彼視点ではもはや誰も信じられなかった。
それ以来彼は誰からの意見も気にしなくなった。
彼はずっと目立たない役を貫いてきた。
最も目立たないよう空気を演じてきた。
人との話は業務的なモノのみ話し、とにかく関係を出来ないようにした。
誰にも相手にされなければ、そもそも関わらなければ辛くなることは無いなんて言うある筈のない妄想に囚われていた。
彼は決して悪い人間では無かった。
ルールは守るし、何かあれば注意だってする。
勿論目立たないようにだが。
決して悪い人間では無いのだが必然的に話さないせいで孤立する。
学校であれば班決め、席替え、更には体験の席や修学旅行のバスの席まで孤立してしまっていた。
彼の周りにはあまり悪い人は居らず、彼をいじめるような事は無かった。
だが、その反面近づくことも無かった。
結果、余計に彼は拗らせ誰とも本気で関わらなくていいと思うようになってしまった。
寿理は思っていた。
自分の生まれてきた意味って何なのだろうと。
これと言った特技も無い。
今からなんて遅い。
出来る事は無いのだと。
実際そんな事は無いのだが、彼は少なくともそう思った。
接客業なんてやったら話せずすぐクビになるだとか、作る側なら不器用過ぎて出来ないだとか。
終いにはユーチューバーなんて手も、と思った。
だが、もし誹謗中傷が来たら?とも思う。
周りに人が来なかっただけで傷ついた自分が、罵詈雑言に耐えれる訳が無いと。
大体何を見せるんだ、ゲームは3流、アニメは2流。
何もおすすめなどできなかった。
彼は行く末を憂いてこそいたが、だからといって行動を起こすほど積極性も無かった。
だが彼は今の現状に文句を言わなかったため、消極的な所も特に指摘される事も無かった。
精々、教師に相談がある時に人がいる所では話が出来ないという事を指摘されたぐらいだろうか。
さて、彼は普段学校に通って居る高校生である。
彼の朝は早い。
何故なら学校へ早く着いていつも通りソシャゲ「リズミカルますかっと!」をやりたいからだった。
ログボを受け取らなければ彼の朝は始まらないのだ。
いつも通り母親が作ってくれた朝飯を流し込み、急いで学校へと向かう。
だが、途中で道草を食うせいでいつも大体ギリギリだ。
ログボを受け取るのは昼休み以降となる。
道草を食うのは、コンビニで飲み物を買うからだ。
家から水筒を持っていけばいいものを、俺はこれしか飲まん!とばかりにブラックコーヒーを買い込んでいる。
大人に見られたい??
ノンノン、彼は単純に眠いだけだ。
授業はしっかり受ける。
彼は頭だけは悪くなかった。
同学年は全部で130人、その中で上位20人にギリギリ食い込むくらいの実力であった。
といっても別に高偏差値の学校では無いのだが。
彼は睡眠不足が祟り、大体5時間目で寝てしまう。
それを防ぐためにコーヒーを買っている筈が、飲まずに寝てしまうのだ。
結果、彼の家には飲みかけのコーヒーが4本はある。
しかもそれを夜飲むから本当に悪循環であった。
勉強は得意で、数学と科学以外は全て出来た。
社会科ではいつも100点をとっており、ここだけはクラスメイトからも評価されていた。
本人は気づかないふりをしていたが。
逆に体育は死ぬほど苦手で、彼は大体のスポーツが出来なかった。
かといって下手だからと弄る人間も居らず、彼が何かに参加するとなんともいえない空気が生まれるのだった。
集団であればそうなるが、一人でやるものならば彼は大得意だ。
その間、ずっとトイレに居ればいいのだから。
先生ですら、たまに居た者として扱う事があるのだ。
彼は昼をロクに食わない。
食べるのはカロリーバーのみ。
バランス?知った事じゃないねとばかりにそれだけを食べる。
ちなみに家庭科の点数自体は80点以上が多い。
彼は部活などやっていない。
一学年の時は強制的に入るルールがあった為、仕方なく特にしがらみや関わってくる人の居なさそうな美術部を選んだ。
結局、一学年全員で創る作品に無理やり参加させられて大ダメージを負ったわけだが。
当然、彼は高校2年になる頃には辞めた。
彼は帰宅後すぐにゲームをやる。
だが残念なことに彼はネットでも友達が居ない。
SNSは見る専、チャットなんかもやっていないのだ。
しかも彼はべらぼうに上手いわけでもない。
その全ての要因から、ゲームすら一人なのだった。
夕飯を食べ風呂に入れば彼は漫画タイムへと突入する。
最近ハマッているのは王様が民を見捨てた国で冤罪で捕まっていた男が国を立て直す「revenge」だ。
これを見なければ寝れないとこればかり読んでいる。
これを読むだけで午前3時まで行くのに、更にアニメをタブレットで視聴する。
それを見た後は推しのユーチューブを覗きに行くのだ。
こうして彼の一日は終わっていく。
そんな中、彼は心の中で思っていた。
本当は、一人は嫌だと。
彼は本来好きな人だっている。
本当なら遊びに行きたい友達だっていた筈だった。
それがいつの間にかこうなってしまっていた。
どうしてなのか、自分でわかる訳が無い。
分かるならこうなってなどいない。
だが、どうしようも無いとあきらめるしかなかった。
心の片隅に想いを置きながら、彼は再びタブレットを見る。
と、ふと思い立ちごそごそとベッド裏を探る。
そこにはティッシュがあった。
彼はタブレットを検索用のアプリに変えると、何やら入力した。
そして彼は、束の間のお一人様天国を楽しんだ。
満足した彼は落ち着いた。
そして、それと同時にどうでもよくなった。
どうせ自分はハズレの人生なのだと。
ならば、今考えても後で考えても変わらないと。
結果彼はそこでようやく寝た。
まさか、次の日起きたらとんでもない事になるとは知らず。
作者の実体験みたい???
ちがうから。ほんとに。
失礼しちゃうわね。