スマホ乗りたい病
このところ我が家では、奇妙な病が蔓延している。
気が付けば、アイツもこいつも…皆、かかっている。
キッチリと、しっかりと。
ときにだらしなく、大胆に。
立ち向かうものもいるが、病気を隠そうとしないものがほとんどだ。
その、おそろしい病の…名は。
スマホ乗りたい病である!!!
黒い猫もデカい猫も丸い猫もしっぽの長い猫も神経質な猫もできの良い猫もマイペースな猫も!!!
みんな、みんな…揃いも揃って、人のスマホの上に乗るのである!!!
ちょっとソファの上に置き去りにしたとたん、しっかり毛だらけに!!
ちょっと洗濯物を干そうと椅子の上に置いたら、ヌクヌクに!!
ちょっと宅急便を受け取ってる間に、香箱の下敷きに!!
猫砂を替えてるのを確認して、大胆不敵に飛び乗り!!
風呂上がりに2匹乗ってることもある!!
たまに爪を研いで病をごまかしにかかる不届きものもいる!!
なんで…なんで人のスマホに乗るのだ!!
旦那や娘や息子のスマホには乗らないのに、ご丁寧に…私のスマホだけ!!!
……初めは、一匹の猫だった。
まるでスフィンクスさながらに、スマホの上に、両の手をのせて。
ずいぶんはしゃいで、騒いだのが…いけなかったとでもいうのか。
どこの守護神だよとオオウケして、娘と一緒に写真を撮りまくったせいで…おかしな病が生まれたとでもいうのか。
思えばあれをきっかけにして、私のスマホに乗る猫は…どんどん増えていったのだ。
それはもう、まるで流行り病のように、じわじわと…確実に。
スマホを見かけるたびに、乗らねばならないのだと…乗らずにはおられないのだと、猫たちのキラキラとした目が、訴えている。
病気なんだから仕方ないじゃないと…いつかは治るかもしれないじゃないと、猫たちのわざとらしいため息が、ハンコを押したように似通っている。
どう考えても、スマホ乗りたい病が蔓延しているとしか、思えない。
何の変哲もない、ごく普通のこの黒いスマホケースのどこにいったいそんなにも夢中になれる何かが備わっているというのだ……。
………。
もしかして、スマホケースを替えたら、なおるやつ?
そうだなあ、随分傷だらけになってきたし、そろそろ変えても良い頃合いか。
かくして注文した、新しいスマホケースだったのだが。
スマホのりたい病は、猫以外にも…蔓延していたらしくてですね。
まさかの、130キロ越えが…全力で乗りましてですね。
「わあん!!!買い替えたばっかなのにぃイイイイイイ!!!」
スマホに猫が乗るくらい、ぜんぜん大したことじゃなかったんだなってですね。
しみじみと思う人が、どこかにいるというお話ですよ……。