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迫る予兆

    迫る予兆



 2024年10月30日5:00 京都府 比叡山延暦寺


 三条は25日のうちに航空機で出雲大社に向かい、文献を調べた。表ではなく裏の閉架書庫もだ。

 島根県立古代出雲博物館にも向かったが手がかりはあまりなかった。ただし、弥生時代の伝承に「怪しげなるもの退治し、神は平穏をもたらした」なる記述があることを発見した。おそらく多くの人間もこれを見たがただの伝承にすぎないと判断しただろう。ただし、今の三条にはそうとは思えなかった。また、宮司の千家院俊孝に最近おかしなことはないか?と簡単に世間話のように聞いてみたところ、なんとここでも前兆が起こっていた。

 なんでも剣を持ち何かに備えるウサギのような幻覚を見たとのこと。千家院は、「いやー、久々に幻覚を見たものよ笑」と楽しげに話していたが、三条はさらに確信を深めた。

白い兎。出雲において大国主大神が救った白い兎ではないか?

 さらに聞けば、ここ数日出雲では地震に関する情報がないのに出雲大社で揺れを感じるとのことだった。

これは千家院だけなのかと思ったがそうでもない。

多くの出雲大社関係者が感じてはいるものの超常現象であろうと片付けられていた。


 そして、彼のもとに陛下から連絡が来たのは、前日の夜のことだ。22時頃に陛下からの連絡を受けた三条は京都比叡山に情報がある可能性があるというのだ。

 また、比叡山でも異変を関知しているという。彼は出雲で起こっていることを陛下に伝えた。

 陛下はかなり思案した後に伝えた。速やかに京都に向かえと。三条は多少疲れてはいたが使命感に突き動かされていた。自分の手に日本、ひいては世界の未来がかかっているような気がしたのだ。

 既に皇室が動かせる権限と人脈を用いてプライベートジェットが出雲空港に向かっていた。


 そうして、三条は夜間のうちに京都に到着したのであった。午前5時の比叡山延暦寺は静まりかえっており、不気味さを漂わせていたが、本堂周辺はそれどころではなかった。

延暦寺が蒼く光っていた。まるで幻想的な光景であったが、午前5時半頃にはその光りも消えてしまった。

 誰もが息をのみ、黙っていた。



  2024年10月30日 午前6時半

 

 比叡山では皇室勅使の三条と比叡山の高僧が集まって会議が開かれていた。比叡山は京都守護の東の要であり影響が分かりやすかった。平安の時代から常に皇室の裏と繋がりがあり、いわゆる超常現象の確認や京都に残る特殊な遺物に理解があった。

 比叡山ではこの24時間で複数の予兆を関知しており、確固たる文献はないものの、京都の守護結界が関与している可能性を示唆した。

 京都は龍脈が交わる交差点であり、かの陰陽師安倍晴明が敷いた防壁が存在しているのだ。三条は初めて知ったことだった。

 比叡山は先日の夕方ごろから京都各地の寺社と連絡を取りあっており、南側の宇治の平等院鳳凰堂や伏見稲荷、西の嵐山と天龍寺、南西の桂川と宇治川の合流地点である石清水八幡宮、北の守護寺である鞍馬寺や貴船。

 その多くで何かしらの異変が起こっていた。

 比叡山の高僧達は三条に警告した。

 「皇室がどのように対応するかは知らぬが、何か大きなことが起ころうとしていることは事実だ。政府に知らせた方が良い。それと陛下が良しとするかは分からないが御座所を東京から京都に移された方が安全だろう。」

 三条は警告を聞いた上でこう答えた。

 「必ずやその言葉を陛下に伝えましょう。ただし陛下は動かれないかもしれません。その場合は皇太子だけでも必ずお連れします。最後にまた兆候が見られたらすぐに連絡ください。」

 分かった。そう高僧達は答えると根本中堂の地下から出ていった。この国の運命の時は刻一刻と迫っていた。




2024年10月29日17:00 アメリカバージニア州ラングレー


 ルーズベルトはある程度世界各地で起こっている異変を調べきった。アメリカ政府が誇るCIAは世界各国に協力者と支部を持ち、世界の政府機関や経済界に大きな影響力と情報収集能力を保持していた。

 世界各地のCIA諜報員は各国政府の秘密裏の動き、環境の異変、さらに宗教関係者の動きを探った。

 さらに遺物に詳しいCIAの神秘部はイエローストーン国立公園に一部部隊を派遣し、別動隊がローマやロンドン、メキシコ、イスラエル、サウジアラビアに急遽向かっていた。

 既に集まってきている情報はこうだ。最も動きがあったのはイスラエル政府だ。

 イスラエル政府はユダヤ教の神官から聞いた話を話し半分ながらに調査を開始していた。

 その動きはアメリカをしのぐほどでイスラエル軍の精鋭部隊が聖都エルサレムの地下に潜り、情報収集にあたっていた。

 さらにイスラエル政府の命令を受けたと思われるモサドの動きがイランやサウジアラビア、トルコ、ギリシャ、エジプトで活発化しており、彼らの調査対象が政府機関ではなくピラミッドやイスラム教のメッカなどの歴史遺産に集中していたことも確認された。

 また、現状としてイギリス政府やイタリア政府が動いておらず、他国政府も動いていないことを確認した。

 またCIAが早期に調査を開始できたメキシコのアステカ遺跡群では異変が所々起こっていることを確認した。

 ピラミッドが夜に光っていた、変な声が聞こえたなど住人から聞き取り調査の結果が並んでいた。

 さらに、イエローストーン国立公園に派遣された神秘部の調査によるとイエローストーン内の過去の結界跡に若干の違和感を感じるともに野生動物が明らかに減少していることが確認された。

 ルーズベルトはこれらの報告を聞いて大統領に報告するかを迷っていた。期を間違えれば今後の調査に影響が出る。

 しかし、彼の直感が今がチャンス、そして選択の時であるとも訴えていた。

 そこで彼が思い浮かべたのは日本に留学中の娘の存在とワシントンの政府機関で働いている妻と軍人の息子の存在だ。

 彼が持つ情報は家族の運命を左右するかもしれない。

 特に彼は娘であるソフィアを溺愛していた。それこそ自分の命よりも。

 ただ、ソフィアは日本であり自分の力で助け出すことは有事の際には難しい。ワシントンは安全だろう。バークレーもだ。どちらも米軍やCIAのキチガイ連中がいる。

 彼は決断した。大統領にこの事を伝えると共に日本にいる友人にソフィアの保護を頼むことを。

 




 

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