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なろうラジオ大賞

5年目の真実

作者: 静夏夜


 明日で5年になる。


 秘密にしてきた生活も今日で終わるが、報われるのだろうか。


 思えばこの金魚も手に入れてから5年、長生きしている方か?

 大切に育て、水草と藻を生やした水槽に沈むモニュメントは、今や何が置かれていたのかも判らない……


 あの頃の仲間も今は何をしているのか、雪山に逃げた二人は一昨年遺体で見付かった。


 同年の暮、暖炉で燃した筈の帽子が見付かり、追い詰められた和菓子職人は温泉で三日月を見ながら酒を呑み、翌日コスモスの咲く丘で自決した。


 教師の立場を使い、文化祭でクエストと称して理工学部の学生にパスワードを解かせようとしたらしいが、悲しいかな解らなかったと言う4年前の連絡を最後に、埠頭で車ごと海に落とされていたのが昨年の台風で浮いて出た。


 残る二人の連絡が途絶えてから立て続けに起きた事を関連付けずにはいられない。



 犯人は判っている。


 警察官の女だ。


 当時から迂闊な事は言うべきでは無いように思えていた。

 金の裏取引に絡む話を掴み、職権に物言わせ奪う計画を持って来たのもあの女だ。


 明日、皆で分けた金を持ち寄る筈だった。


 怪しい金を溶かしてカナダ金貨に造り変える、裏社会の巧妙な手口。


 とはいえ盗んでスグに持って行けば足が付く、その為に危険を承知で5年も寝かせていた。


 凡そ2億円分だった金の価値はコロナや株価暴落の憂き目に高騰し、今や当時の2.5倍程の価値を持つ。


 正しく金を産む金のたまご。


 コレを手にして良くぞ今日まで生きて来られたものだ。



 犯行から数カ月後、残る二人のもう一人が自分の命の危機を感じてか、パスワードのようなメモを残して消えた。


【Au2/7TRY5/3】


 海外事業に動く製薬企業との黒い噂が付き纏う厚労省のエリートだった男が突然消息を絶って何故に、特に警察が動く事もなくニュースにすらならないこの国の防衛意識には呆れるばかりだが……


 また喪に服す事になるのかも知れない不安より、それも明日で終わりと己を鼓舞して息を吐く。



――KONKONN!――


 明日の事を考えつつ、20は在ろう水槽の置かれた部屋で水草弄りをしていた私だが、ノック音に焦り扉を見た。



「パパー、お魚さんもいない水槽なんかイジってないで夕飯作るの手伝って、て、ママが呼んでるよー!」



 あの年に産まれた娘からパパと呼ばれる悦びに鼻で笑う、何のプレゼントを買ってやろうかとアクアリウムの底に生え揃う藻を優しく撫でた。



「今行く」



 明日になれば全てが替わる。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点]  1000文字。全部入れ。思わず唸りました。  主人公の置かれた立場がよくわかります。  それにしても黒幕さん。すごい……。クライムノベルのラスボス級! 主人公にしたダークな作品を読んで…
[良い点] 仲間たちが次々に…犯人は分かっていて…という不穏な出だしに、読み進んでいくと、キーワードが次々に…。一気にラストまでいきました。 明日で終わる、逃げ切れたかのような5年の月日。娘の明るい…
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