『“二度目の春風”再び!』
「ウハ、ウハハハ、アハハハハハハ…」
太郎は、翌日の職員室でいきなり大声を出して笑った。
心の底から周囲構わず笑い声が木霊するくらいはっきりとけたたましく
満面の笑みを浮かべて…。
余り突然の出来事にびっくりし、思わず椅子から転げ落ち、
のけ反った不幸な女性が約1名。
「もぉー津彼先生!いきなり突然笑い出すなんて…一体全体どうしたん
ですか?気持ち悪い!」
「あっ…す、すいません!つい、いつもの癖でぼーっと考え事してたら
昨日のこと思い出しちゃって…それよっか、先生、大丈夫ですか?
何か3回転してたみたいですけど…」
「3回転じゃありません。1回転して机の角で頭打っただけです!失礼な!
余計なお世話よ、全く!Leave me alone! 放っといてちょうだい!
あ~痛い!痛い!」
「いや、実はですね、伊香出先生…!」
「伊香出じゃありません!多古出伊香代です。隣席の
名前ぐらいちゃんと覚えてほしいわね、Mr. Tired!」
「どうでもイイじゃないっスか、そんなこと…?」
「どうでも良かないの!本当、ぶっ飛ばすわよ、アンタ!!」
「いや~実は私のクラスの日上がですね…あの無口な日上雄三がですよ、
先生…!」
と言いかけて太郎はその言葉を全てぐっと呑み込み、黙って相手を見てまま
にっこりと微笑む始末。
「えっ?何、何、何なのよ?日上君がどうしたって?一体何があったのよ?
ちゃんと説明して!」
「あっ、イ、イヤ…何でもないっス!何でもないんですって!
どうか気になさらないで下さいよ、イカタコ先生!」
「だ、誰がイカタコよ、アンタ!もぉーあったまに来た!言いかけたことぐらい
きちんと喋りなさいよ、ツカレタロウ!気になって仕方ないじゃないの!
い、一体何があったのかなぁ?白状しなさいね!コラ、コラ、コラァ!」
自称女子プロレスラーを豪語するイカタコ…(←失礼!)タコイカ(←こっちも失礼だと思うんですが…)得意の卍固めが炸裂し、ドクターストップ状態に…。
「1・2・3!おっとTKOでタコイカ選手の勝ちか?」
(『私の台詞ってたったこれだけ?すっと出番待ってのに…トホホ!』by校長)
「い、痛――――い!ちょ、ちょっと止めて下さいって!ひえ~止めて!
マ、マジ痛いんですけどぉ!」(…と言いつつまだ笑いが止まらない(^^)太郎!)
こうして津彼太郎の“明るく健全な日常”(「どこがだよ?」by太郎)の
再スタートが切って落とされることに…。(↓もうすっかり初夏ですね、皆さん!)
♪柔らかな日差しの中で 佇む午後の空白
疲れて心を癒すように 春風がいま通り過ぎる♪
のがみつかさ『春風浪漫』より
“太郎が言いかけた言葉”、それは忘れもしないあの日、日上雄三が彼に苦しい
胸の内を語ってくれた言葉の中にあった印象深い一言。それは…
「一生懸命な姿(津彼太郎)の後ろで半ば軽蔑気味に指差して
クスクスとうす笑み浮かべて笑っていた連中のこと、俺は絶対許せなかった!」
おわり
この度は最後までご閲覧いただき誠にありがとうございました。 時代背景として 平成2年(1990年)を目安に2018年作成したものに加筆修正を行い投稿させて頂きました。ですからお若い方には『ビデオテープ』だの、『EPレコード』だのと言った意味不明な言葉にピンと来なかったかと思いますが、当時を懐かしむ意味で敢えて使わせて頂きました。まだまだ大変な時代ではありますが、コロナ禍の中で少し でもほっとできる心の余裕を産むきっかけにしていただけたら幸いです。
どうか皆さん、今後もお体に気を付けて以前みたいな平穏無事な日常が戻ってくることを心から願い筆を置かせていただきたいと思います。(何分ド素人の書いた作品故に拙い表現、内容構成の未熟さ、稚拙さ等どうぞお許し下さいませ。) のがみつかさ