荒廃した日本
「おやすみなさーい」
母親に寝る時の挨拶を交わして、階段を登る。自分の部屋のドアを開けて、疲れた身体をベットにまかせようと倒れこんだ、その時。
ドクン
周りの景色が止まった。全てが静止している世界で、風景にいつもと違うところがあるとすれば、水の中にいるみたいに周りの景色が揺れていることくらいか。と思ったら、急に物凄い早さで周囲が動き始めた。あくまで、周りだけ。切れかけた電球みたいに、窓の外はチカチカしてるし、ドアもたまに開いたり閉まったり、全てが目まぐるしく変わっていった。
時間にして、一分くらいだろうか。眩暈と共に、斗真の身体はベットに突っ込んだ。
「痛っつぅ……」
頭を起こして、部屋を見回す。すると、学習椅子に、二郎が座っていた。
「あ、起きたね。」
二郎は、平然と、つまんなさそうにいった。そして、続けた。
「ようこそ、令和253年の世界へ。令和2年の押川斗真、そして、"死神"押川バルセブ冬馬の祖先、国家機密第一級序列第一位よ」
二郎は、よくわかんないことをしゃべっている。
「おい、二郎。ふざけるのはよせ。俺を驚かせたいのはわかるけど、いくらなんでもこれにはひっかからない…」
「ふざけてる?なら、これを見てみろよ。」そういいながら、二郎はカーテンをひいた。窓の外には、見渡す限りの荒廃した土地が広がっていた。あとは、ポツポツと家があるだけだ。
「えっ…じゃ、本当にここは令和253年なの?そしたら、お母さんは?他の家はどこいったの?だって、」
慌てていろんな質問を投げかける斗真を、二郎は制止した。
「まぁ、まてよ。お前の母親は死んだよ。250年以上たってるんだから、当たり前だろ。あと、他の家は全部、なくなった。風化したんだ。もう、この辺に住んでる人は、ほとんど居ないよ。この家が残ってるのは、ま、幸運というべきだな。」
そういうと、二郎は一息ついた。
「斗真、おまえの時から温暖化っていうの、もんだいになってたろ?なんだか、その影響は意外と早く地球を蝕んでたみたいで、150年くらい前に一気に大陸全土が荒廃しちまったんだよ。んで、石油は消えるわ、池は干上がるわ、鉱物はなくなるわ、その他諸々の問題で、領土問題がかなり深刻化してる。実際、日本だって西日本と東日本で分断しちまったよ。」
「んでもって、それを予測してたのは一人だけ。皮肉なもんだよな。」
二郎は、ため息をついた。