平和すぎる魔王城。
ほのぼのが書きたくなった。
「何故だ。何故、勇者が来ないのだ。我は暇をもて余すしかないのか!」
ガラスがビリビリと震える。男らしい渋い声。魔王というにふさわしい風格。でも、根はめっちゃ優しい魔王がそこにいた。
「魔王様。人狼ゲームとかはいかがでしょうか。」
上級悪魔の一人が上申する。
「人狼ゲームか、悪くない。できるだけ早く用意せよ。」
魔王の横にいる魔界四天王の一人、イフリートが部屋に戻る。
帰ってきた彼の手の中には、お菓子の箱のようなものが握られていた。
「ええ。魔王様がそう言うのを待っていました。手作りの役職カードでございます。」
魔王は、イフリートからカードの箱を受け取る。
「よかろう。では、始めるとするか。」
「司会は私が務めさせていただきます。」
提案者である上級悪魔がそう言う。誰も異論を挟まないため、彼に決定した。
実際彼には念話が使えるため、最適解であろう。
「では、ゲーム開始でございます。」
今回のルールはこうだ。
・参加者4人(魔王様、イフリート、悪魔A、悪魔B)
・人狼1人、占い師1人、村人2人
・最初の夜は、占いのみ
一番単純なルール。だからこそ駆け引きが重要になってくるのである。
gmがカードを裏返して配る。参加者がカードを確認する。
gm「皆様方、カードを回収させていただきます。」
この時点で、gmにはすべての職業がわかっている。だが、当然の如く、顔に出したりなどと迂闊なことはしない。
gm「最初の夜がやって参りました。皆様方、顔を伏せて頂きたく存じ上げます。」
魔王「そう堅苦しくなるな。こちらも落ち着かぬ。」
gm「ありがたきお言葉。では、最初の夜がやってきました。みなさん、顔を伏せてください。」
夜が明けた。
二日目朝。
魔王 生
イフ 生
A 生
B 生
gm「朝がやってきました。この街には魔王様よりも恐ろしい狼が潜んでいるようです。これから平和的に話し合いを行い、本日追放する人を指名してください。」
魔王「我よりも恐ろしい人狼って……」
イフ「真に受けないで下さい。」
魔王「そう、じゃな。」
イフ「話し合いを始めましょう。ではまず、村人の方、手を挙げて下さい。」
魔王以外が手を挙げる。
A「魔王様が人狼ということで?」
魔王「ちっ、違う。我は占い師だ。」
おーっと、ここでまさかの占い師CO。
イフ「で、占いの結果は?」
魔王「イフリート、貴様は白じゃったぞ。」
イフ「疑っておられたのですね……」
イフリートは、悲しそうに呟く。
そしてそれは華麗にスルーされる。
A「では、誰を追放しましょうか?」
魔王「今日は誰も追放せぬ。gmよ、それでよいか?」
gm「わかりました。今日は追放なしで。」
日が沈む。
gm「恐ろしい夜がやってきました。みなさんは眠りについてください。」
日が昇る。
三日目朝
魔王 死(占い師CO)
イフ 生(魔王→白)
A 生
B 生
gm「昨日襲撃されたのは魔王様でした。街には、魔王様の無惨な死体が残されていました。」
魔王「嘘、じゃろ。」
gm「残念ながら死んでしまった魔王様は口を挟まないようにお願いします。」
魔王「人狼許すまじ。」
gm「遺言はそれで以上ということで。これ以降口出ししないでください。」
魔王は残念そうに墓場ゾーンに行く。
イフ「半々の確率ですね。」
A「全くしゃべらないこいつでは?」
B、沈黙。
イフ「生きてるか?」
B、鼻からちょうちんが出てくる。
イフ・A「寝るなー!」
イフ「とりあえずこいつ追放でいいか?」
A「問題ないでしょう。」
gm「追放する人は決まりましたか?」
A「イフリート、どうぞ。」
イフ「犯人は、お前だ!!」
Aを指差す。
gm「決定でよろしいでしょうか?」
イフ「間違いないでしょう。」
A、硬直。
gm「村人の勝利です。魔王様の魂は浮かばれました。」
魔王「は?」
ちょうど、魔王城に来客が来る。
「ちょうどいい。貴様ら、ちょっと人狼ゲームを一緒にせぬか?」
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