何とかなりそうだな
「とりあえず何か暇つぶしできるもの出してよ」
「そんなことしてもここからでれないもん」
すねたように彼女は言う。
「とりあえず、落ち着こうって話だよ」
僕は身振り手振りをしながら大げさに言う。
「楽しまなきゃ!わからないだけなら悲しいからね!」
「うん。わかった。でも、何するの?」
「スポーツは得意?」
「それなりにはできるけど」
うーんそうだな。二人でできるスポーツというと少し難しいか。
無難にキャッチボールとかでいいか。
「グローブとボールだしてよ」
「よっ!」
僕はボールを身体全体の体重を乗せて投げる。
「どこ投げているのよ!」
ボールは明後日の方向へ飛んでいく。
「ごめんごめん。久しぶりすぎて」
彼女がボールを投げる。
滞空時間がすごく長い。上でとまっているんじゃないかと錯覚するほどだった。
「おお!すごいな」
「これくらい簡単よ!」
得意げに自慢してくる。
「じゃあ、思い切り真上に投げてみてよ」
「いいわよ」
そういうと大きく振りかぶって真上とボールを投げた。
「おお!ぐんぐん上っていくな」
「当り前じゃない。私が投げたんだもん」
ボールはぐんぐんと上へあがり、ついには見えなくなった。
「なあ、どこに行ったか分かるか?」
「わからないわ。落ちてくる気がしないわ」
「白っていうのもわかりにくいよな」
「そうね。次は赤にしてみましょうか」
赤いボールを取り出し、また真上に投げた。
しかし、ボールは落ちてこなかった。
「なあ、ここって重力あるよな」
「あるに決まっているわ。さっきまでキャッチボールできてたのが証拠よ」
「そうだよなぁ」
そういいながら待っていたがついにボールが落ちてくることはなかった。
これは何か、手掛かりになるかもしれない。
ボールが落ちてこないということはおそらく、上には何かがあるはずだ。
今は何があるかはわからないが、この状況を脱出するには必ず必要になるに違いない。
このことをわからせてくれた天使には感謝だな。
「ありがとな」
彼女は顔をリンゴのように赤らめた。意外とかわいいところがあるじゃないか。
「別にいいわよ」
すましたような雰囲気を出そうとしているが、表情が負けている。
「いや、ありがとうな」
僕は彼女の頭をなでる。
「なでるな!」
生きているときはこいつにはいいイメージがなかったが、仲良くなるとかわいいもんだな。
まあ、相手が俺のことをどう思っているかはわからないけど
そんな彼女は照れながら僕から距離を取ろうとしていた。