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(ある意味)無敵にして比類なき魔王の物語

作者: トモナ

ふとネタの神様が舞い降りて急いで書きあげました。

武力や内政チートで強くなる魔王はあれどこんな魔王はみたことがない(はず)

知恵さえあればどんな勇者も英雄も封殺出来るという搦め手の一種になればと思いました

 よくある話だ。

 トラックに轢かれたり跳ね飛ばされたり、歩いていたら光り輝く何かによって此処ならざる世界にやってきてしまったという話自体……もう使い古されたようにも思える表現だとは我ながら思っている。

 そんで呼ばれた理由が世界の命運をかけて決戦の為のものだとか、特異的な力を持っている事によるその世界の趨勢と命運を左右しかねないものでそれに縋りつかねばならないような状態だとかさ。

 酷いやつだと人体実験だとか使い捨ての兵器同然の為にってのもあるが今回のこれはそれに当てはまらないので助かったと思っているよ。


 そして俺の目の前には一台のタブレットが置かれてやがる。


 部屋は埃だらけで整備なんてされてないうえに通路もクモの巣なんかが好き勝手に作られている石造りの建築物ときやがるだけでなく、窓から見えた景色は植物がうっそうと生い茂る廃墟ときた。

 人の気配なんて判らないがそれでも


「あぁ……なんもねぇわ」


 そんな独り言が出てくるくらいにはもう何もないと来てやがる、俺の異世界転生ってやつは良くあるハードモードってやつなのかよ。

 加えて俺は乙女ゲームとかもやったことなんてないからこういった出だしから、この始まり方がどういったゲームでどういったシナリオになっていくかなんて皆目見当もつかいなときてる。

 本当に手詰まりとなっちまうとかえって頭が落ち着くらしく、背負っていたカバンから煙草を一本吹かせるだけでなく味わう余裕すら出てきた。



『おめでとうございます、あなたはこの世界の魔王として君臨する事となりました

 この板はあなたの魔王生活を少しでも助けるものとして授けられたものです

 数奇な運命を引き当ててしまった以上の努力を、世界たる私は期待します

 限られたポイントを駆使してこの廃墟を素晴らしき魔王の拠点として活動を行ってください

 虐殺と恐怖を作り出す暴君でも、作り上げた臣下達と文明を作り出して大国の帝王となるも、堕落した淫欲溢れる生活を送るも自由です

 あなたを殺さんとする人間達を相手にどのような選択をするかを私に見せて頂きたいのです』



 しかも世界の敵タイプと来てやがる、内政チートだとかあんなの専門知識がないと出来ないってのにさ、この世界ってやつはよほど俺を苦しめて殺したいようだ。

 堆肥だって精密機械や薬品無しで作ろうと思ったらどんだけ大変だと思ってる……ふと見える海から塩田を作って塩で暴利を貪るなんて夢のまた夢だってんだ。



『では健闘と検討を祈ります……元の世界に嫌気の差した逃亡者へ』



 それからタブレットには俺が見たいと思った色々な情報が何にもしてないってのにどんどん表示されるだけでなく、可愛らしい聞き覚えのある音声で淡々と内容に関することや効率的な運用法について語りだす。

 まぁどれもこれも所持しているポイントに対して何十倍・何百倍・何千倍の数値を要求してくれるからどう頑張っても運用できないと来てるのが何ともポンコツらしさがあって嫌いになれねぇ。


「とりあえず殺し屋がくるまでは?」


【時間で言えばひと月はありますので、チュートリアルを済ませてましょう】


「ご丁寧な事で、弱い相手しか来ないんだろうな?」


【それすらもあなたの運です、あなたの三つ前の魔王は最初から勇者がやってきて蹂躙されて終わりでした

 五つ前は五年間は駆け出し冒険家程度しかこない辺鄙な立地でしたので戦力の拡充は容易でした

 もっとも一つ前の方はひたすら自己強化に傾倒して文字通りたったひとりで世界の有力者達と戦えるほどに成長したました】


 くっそ……なんだよこのクソゲー。

 この一年って数字も全然信用できないと来てやがる。

 表示される【ゴブリンなどの家来を作る】や【彼らが生活出来るようにしよう】だとかの表記がいかにもゲームらしさを煽ってきやがるがこちとらリトライもセーブも出来ないオワタ式だぞ。

 そんなんでどうやって初見のシミュレーションゲームで最高難易度がクリアできるってんだ。

 しかも消費するポイントに対して返ってくるポイントが物凄く少ないという資源的な意味でも全然どうにもならない、敵の姿や強さは判らないのにこっちの強さも全くわからない。


【こうしている間にも時間は過ぎていきますよ?】


 ……ふと思いついた。


「なぁ自己強化ってのは肉体的な強さしか出来ないのか?」


【魔術的な意味ならば魔力の強化やこの土地をあらかじめ魔力を強化する陣地として構築するなども可能です】



 どうせだ賭けてやろうじゃねぇか。



「知力の強化と陣地強化ってのは施設とか色々弄れるってあるんだが……」


 知力の強化や陣地構築に掛かるポイントだけ少ないこと。


「歴代の魔王ってのは戦闘ばっかりだったんだよな?」


【最終的にはそうなりました、国家として大成しても国益のトラブルなどから戦争状態への突入なども珍しくなかったですね】


 そして俺が異界人であることから生まれる意地悪な知識の使い方がある。



「なら俺は……史上初にして無敵の魔王になれる!」



 どうせなら派手にやってやる。





 そして世界は無敵の魔王に苦戦を強いられる。



「問題、アウステ帝国の第十五代皇帝の名前をフルネームで答えよ!」



 廃墟となっていた土地には多くの魔族やエルフといった亜人達が手を取り合い生活し敵である筈の人間達すらこの土地に腰を下ろし彼等と共に無敵の魔王を打倒する為に切磋琢磨を続けている。

 学問所には生徒達の楽しそうな喧騒が途絶えることはなく、魔王城近くの巨大な研究機関への門をくぐり知性の英雄……偉人として名を歴史に残さんと勉学に励む毎日が繰り広げられていた。



「アウステ=ドミーナ=カール=フォン=デュラウン=ナイトハルト=ブラチャリー=十五世!」



「馬鹿め! フォンの次にナイトハルトが来てその次にデュラウンがくるんだ、もっと勉強して出直してこい!

 敗北者は恒例の城の外への強制ワープの系と一ヶ月の挑戦権の剥奪だ、今度はうっかりがないようにするように!」



「ちくしょぉぉぉ! 半年ぶりの魔王挑戦だったのにぃぃぃ!」



 古来より様々な魔王が現れては勇者とその仲間達との戦いの中に命を散らせていった。

 新たに現れたかの魔王は勇者と対峙する事となった際にこう言ったという。




「古来より力で戦いを挑み散った魔王が数多くある、当然ながら勇者や英雄の数もまたそれと同じかそれ以上はいたであろうな

 だから私は知恵で戦いを挑むことを宣言しよう、無論この戦い方にはあなた方にとっても利点はある

 それは【歴史上初の知恵による戦いを挑む魔王を討ち果たした最初の英雄という称号】を得られるということだ

 私という魔王が降臨している間は魔王がもたらす暴力による恐怖が世界を覆うことはないということだ

 綺羅星のように輝く英雄は数多くあれど語られる英雄の大抵は【最初の功労者】か【記憶に残る活躍をした者】だけで、あとの者達は語られることすらないものまでいる

 挑むものよ、お前達は欲しくないか? 永劫に語られる知性の頂点に辿り着いたという比類なき栄誉が!

 我が子だけでなく、己が一族や国に対して消えなることなき永遠の名声が欲しくないか!

 後世において知恵者であるならばこの人のようになれと語られる名前が……自分のものであるという称賛の言葉を残したくはないか!?」



 それは世界の人々に麻薬となって広まる。

 力なくとも得られる名誉が自分から転がりこんできたという現実に彼らは震えあがったのだ。

 諦めていた栄誉に手が届く、幼き日の憧れが自分になるという幻想を実現させられるかも知れないという甘い誘惑。

 力自慢や体格に恵まれていた者達を見返すだけでなく知恵者という肩書に消えることない栄誉を当らえられるかもしれない。


 見返したい。


 手に入れたい。


 残したい。


 魔王によってもたらされた栄光の未来に誰もが手を伸ばした。

 その手が刃を手にした者達を魔王から遠ざけてしまうと知っていても、伸ばさずにはいられないものがあるから。

 自分達が日向に立つものになり、いつも自分達を虐げている者達を暗がりに叩き落すことが出来るというおぞましい心に気付かないふりをしながら。

 この夢が一日でも長くあれと祈りを持って、知恵を持って魔王を殺さんとする者達を逆に始末していく。



「さて次の挑戦者候補達は来週のこの時間に来るように、私とのクイズ勝負をしてもらうので体調管理と予習を欠かさぬようにな」



 そうして日々か過ぎ去っていく。


 彼は【比類】なく【無敵】の魔王となった。

 彼が意地悪な魔王で在る限りは……この物語に終わり来ないだろう。


もし先駆者がいなければ彼は最初の【知恵チート】になれるはず

少なくとも作者は某クイズ番組系統のがかなり判りません

よくあるひっかけ問題とかなんて特に……


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