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バカと天才は紙一重  作者: 檀那友人
3/3

僕の母

 

  午後5時05分



 裕太と別れて10分後、我が家についた。鞄とキーチェーンで繋いだ鍵を鞄の中から取り出し上下二つの鍵を開ける。僕の家は中々、防犯意識が高い。というのも、16年前のある日、父が仕事から帰宅すると、知らない男性が母の対面に座りお茶を飲んでいた。父が驚き


「あの、、、どちら様ですか?」


 と訊ねると


「いえ、、、あの、、、、」


 男性は口ごもり答えようとしない。







「あのね、この方ドロボウさん!」



 母は、何の脈絡もなく満面の笑みで言った。



「#$%&%”#”!!”$!!!」



 当時の父はあまりのことに絶叫したという。



 母の言う「ドロボウ」さんは、後悔と自責の念を表情に浮かべつつこう言った。



「いえ違うんです!!、、、いえ、違わないんですけど、、、初めは、本当に盗みをさせていただこうと思ってお宅に忍び入ったんですけど」


 盗みをさせていただく?そこでの敬語は余計に腹が立つ。


「全員留守だと思ったら、奥様がいらっしゃいましてリビングで鉢合わせになったんです。そしたら奥様が、、」




「あら、何のご入用ですか」


「いえ、あの、ドロボウに入ったんですけど、、、」


「あらまあ、それは。とりあえずお茶でも一杯どうです?」


「あ、いただきます」




 父は、宇宙人の会話のように二人の話が頭に入ってこなかったという。呆然と立ち尽くす父を前に母は、こう続けた。


「それでね、この方に何を差し上げようかと考えてたんだけれど、何かいいものがあるかしら?子供も生まれたばかりで高価なものなんて、うちにはあまりないじゃない?」


 父は、怒りを通り越してもはや面白くなってきたそうだ。そんな父に向けて「ドロボウ」さんはこう言った。


「いえ!もういいんです!奥様のやさしさに触れて、自分がどれだけ愚かだったか気づきました。今から自首します」




 そんなこんなで母の防犯意識の低さは、いくらこの安全大国日本でもいかがなものかと不安を覚えた父が、現我が家の防犯機能を万全にした。




 ちなみによく遊びに来る畑中さん(あだ名がドロボウさん)がこの人物かどうかはあえて聞いていない。



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