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バカと天才は紙一重  作者: 檀那友人
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ネジ事件

 そんなこんなで自分の教室についた。僕の学校は県下有数の進学校。僕にとってはさして意味のあることでもないが。

 その学校の北校舎三階、一番手前の二年三組、ここが僕の教室だ。僕の席はその教室の、窓際の後ろから三番目にある(どうでもいいが、漫画やアニメの高校生の主人公の席は大体ここな気がする。気のせいだろうか)。

 机の右に鞄をかけながらコ〇ン君に思いを馳せる。今日もコ〇ン君の気持ちを存分に味わうとしよう。授業中に何があるわけでもないのでまた放課後。

 ・

 ・

 ・

 ・

 放課後。

 

さて、今日も無事に学生の本分(とコ〇ン現象)を果たした。帰るとしよう。机の右にかけた鞄に手を伸ばし教室を出ようとすると、教室後方の扉の外から声をかけられた。


「かつみ、早く帰ろうぜ!」


 こいつは裕太。僕の幼馴染兼親友だ。もう11年目の付き合いになる。人当たりが良く、面倒見もいい。みんなに好かれるタイプの奴だ。二人で帰宅していると、裕太が唐突に話し始めた。


「なあ、あのネジ事件なんだろうな、昨日のでもう四件目だぜ」


 ネジ事件とは、ここ最近多発している一家失踪事件だ。家族全員が一夜にしていなくなってしまうという事件が、半年の間に四件続いている。


 この事件に共通しているのが、夫婦に子ども一人の核家族の家庭であること、家族間に問題はなかったこと、そして、失踪したどの家からもネジやリングなどの小さな機械部品が発見されていることだった。


一件目の家から見つかったのがネジであったことから、メディアが面白がってネジ事件と名付けた。一家「誘拐」事件と報道されてもいいように思うが、各家に争った形跡のないこと、犯行声明のないこと、一家をまとめて誘拐することのリスクの高さと不必要さから「失踪」と推定されている。


「本当に不思議な事件だよな。事件の発生してる場所も日本各地ばらばらだしな」


 僕は言った。一件目は長野県、二件目は熊本県、三件目は埼玉県、四件目は北海道である。


「でもさ、ある意味俺らも他人事じゃないんだぜ」


 と裕太はいった。そう、三件目の失踪事件の当事者は、僕らと同じ学校に通う原川七瀬だからだ。隣の隣のクラスの子で、特別親しいわけではないが二、三度言葉を交わしたことがある。物腰の柔らかい真面目そうな子だった。


 帰り道は、こうして二人で事件の真相を話し合っていた。


「やっぱり誘拐じゃないのか」


「組織的な犯罪かもしれない」


「海外逃亡は?」


「パスポートが残っていた」


 結局結論が出ないまま、僕らは別れ、各々の家路についた。悲しんでいいのか、不安に思っていいのか、何とも言えない感情が僕を包んでいた。


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