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バカと天才は紙一重  作者: 檀那友人
1/3

僕は天才

 僕の名前は、中野克己かつみ

 はじめに言っておく。僕は天才だ。


「こいつの蟹味噌、海に溶け出したんじゃないか!?」

 と思わせるほど脳みそカスカス(略してミソッカス)のカニと同様の脳しか持ち合わせていない君ら凡人とは頭の作りが違う。そう怒るな、軽いジョークだ。


 カニの甲羅を開けて、カニ味噌が少なかったとき。それに勝る悲しみはない。あれは落ち込む。流石の僕を持ってしても、カニのカニみそがどれほどの量なのかを透視することはできない。・・・


 将来的に遺伝子構造を弄って、脳みそパンパンのカニを作ってやろうかとも考えたが、彼奴らがそれほどの知能を持った場合の水中生態系が予測できないため諦めた。というより、3匹分食べれば済む話だった。


 それに、運動神経も凄まじく良い。どこぞのヒザ神だ~モモ神だ~は全く理解できない。彼らの動きは人間のそれを大きく超えている。身体構造を分析したいほどである。いっそカニ味噌にしてくれようか。・・・さらにこれらを周りにひけらかさない性格の良さも持ち合わせている。どうだ、ん?そうだ、完璧人間だ。


 おっと、とりあえず基本スペックだけ伝えておこう。

 年齢17歳 高校二年生

  身長183㎝(モデル並)

  体重68kg(モデル並)

 ルックス 向井〇似(モデル並)

 また、前を見てわかるようカニが好物だ。



 僕は、ほとんど全ての人間が経験するであろう失敗をしたことがない。

 身体的なことで言うと、骨折はおろか躓いたことがない。 だが、皆がよくタンスに足の小指をぶつけるくらいなら死んだほうがマシだと言うので、試しにぶつけてみたが、良くみんな生きているなというくらい痛かった。


 九九も2秒で覚えた。だが、1×1=1を毎回言うたび先生は笑っていた。あれは未だに納得できない。

 1×1=1まで述べて初めて完璧だろう。

 まぁ、これを九九風にいうと「いいちがいち」になるからな、先生の気持ちもわからなくはない。

 兎に角、何1つ僕には欠点がない。本当に高性能アンドロイドかと思うほどだ。



 昨今、僕は少しずつ世の中から注目されるようになった。ほんの、ヤンーミルズ方程式と質量ギャップ問題を解決(数学上の難問)し、100メートルを8秒89で走っただけなのだが。一昨日まで世界中187社の取材を受け続け大変だったよ。最もバカだった質問が今でも頭に残っている。

「100メートルを走りながらあの問題を解いてもどちらも達成できましたか?」

 だ。ふざけるな、出来たに決まっている。全く、今思い出しても腹立たしい。


「朝ごはんよー、おりてきなさーい。」おっと、朝食の準備が出来たようだ。いこうか。我が家は二階建ての6LDK、築年数8年の持ち家である。僕の部屋は、階段を上がってすぐ目の前にある。


 階段を下りると現平成ではもはや天然記念物であろう割烹着姿の女性が立っていた。

 この人は僕の母、政子。37歳、主婦だ。特徴は普通。普通なのだ、この人は。多少、いやかなり天然ボケしていることを除けばだが。

 先日もエアコンのリモコンを、小一時間テレビに向けてポチポチしながら僕にこう言った。


「かーくん、リモコンの電池が壊れちゃってるみたーい。」



 、、、どういうことだ。

 テレビでもリモコンでもなくリモコンの電池が壊れてるだと?状況を説明してくれ。電池は切れるものだ。そもそも、本当に電池が壊れていたとしてそれを見抜けるような知識を持ち合わせているのか。まったく、この人はよくわからない。


 というか、それはエアコンのリモコンだ。あなたがボタンを押すたびに、右斜め上の方向から「ピピっ」という電子音が鳴るのが聞こえなかったのか。

 あんなに沢山の連続した「ピピ」を聞いたのは生まれてこの方初めてだ。

 途中聞いた事もないアラーム音が鳴っていたな。

 僕には「もうやめてっ!」と言っているように聞こえたよ。断末魔のようなね。

 まったく、よくこの親からこの子が生まれたと思う。


「おう、おはよう。」


 この人は僕の父、裕彦。職業は弁護士だ。48歳。

 母が大学2年生の頃、パソコンの迷惑メールを開き、エロ画像が閉じなくなり、法外な金額請求が表示されたことに困惑し、当時父が勤めていた法律事務所にパソコンを持って駆け込んだ。その時、父が一目惚れしたのが我が両親の出会いだ。

 その後、11日の交際期間で結婚して、2ヶ月で子供が出来たと聞かされた時は、説教をした。4歳だった僕がね。4年前の両親の浅はかさに激怒した。命を軽んじるな。この場合は僕だ。


 父は、大学在学中に司法試験に合格した。そこそこの頭脳の持ち主だ。

 まあ、僕は5歳の時に六法を暗唱してみせたが。

 父は、今では都心に小さな事務所を構えている。立派なものだ。僕の頭脳は母よりは父から受け継いだのだろう。

 ただ、それでもこの両親から僕が生まれるとは。神のみぞ為せる業だと思うよ。さて、そろそろ朝ごはんを食べよう。



 朝ごはんのメニュー。

 カニの炊き込みご飯。

 カニの味噌汁。

 カニカマサラダ。

 茹でたカニ。


「ねえ、裕彦さん。この子どうしてこんなにカニが好きなのかしら。うちの家計は毎月カニが中心よ。カニを考えてから光熱費が気になるの。きっと、かつみなんて名前を付けたせいよ。名前で惹かれあってるんだわ。」


 、、、どういうことだ。「か」の一文字しか合っていないのに惹かれあうも何もあるか。


「そうだね、政子さん。来週から全部カニカマにしてみようか。かつみは、あれで味オンチだからきっと気づかないよ。」


 おい、聞こえているぞ両親よ。ふん、だが残念だったな。 僕は、食べずともあなた達2人の目線や息遣いでカニカマだということに気付くことができる。

 ん?味は?わかるわけないだろうバカか!人類の叡智であるカニカマをなめるな。


 さて、朝ご飯も食べ終わったことだし学校に行こう。正直、学校は憂鬱だ。何故なら僕の持ちうる知識は東大レベルをも遥かに凌駕しているのだから。どれくらいの知識量かというと、アイルランドの考古学者から相談のメールが来るくらいだ。


 あなたが、頭脳はそのまま小学1年生に戻って授業を受けなければならない状況を想像してほしい(これをコ〇ン現象と呼ぼう)、苦痛でしかないだろう?僕ほどコ〇ンの気持ちが解る人間もそうはいないはずだ。高山み〇みさんの後を継ぐのは間違いなくこのぼくにな、、、おほん。


 そのため、この通学中もなかなか気分が乗らないのだが、毎日、無理矢理、僕のテンションを限界突破させる奴がいる。


「おっはよーーーーーー!!!!!」


 きた、こいつだ。朝から何だこのテンションは。現実のものとは思えない。この子は西野あやみ。いつでもどこでも非常にテンションが高い。僕はこいつを朝ドラヒロイン女と呼んでいる。


「誰が朝ドラヒロイン女よ!」

 おっと、心の声が漏れていた。


「いや、それくらい人気者だということだよ」

 これも事実には違いない。


「それならいいけど?あんた今日も気怠そうな顔してるわね~」


「そうかな?まあ、察してくれよ」


「まあね~あんたにしたら授業はつまらないだろうし、コ〇ン君みたいに事件は起こらず平和だしね~」

 この作品の筆者はどれだけコ〇ンが好きなんだ。

  ん?前方の2人組みもクラスメイトだな。


「おはよう、平井、中田」


「おー、おはようかつみ。なあなあ、またサッカー部の試合に助っ人で来てくれよ~」


「おい、やめとこうぜ!だってこいつ、ほら」

 2人はほくそ笑みながらそそくさと走って行った。


「なにあの2人。感じわるい。あんたもしかしていじめられてるの?」


「いや、そういうわけじゃないんだけど、はは」

 2人の反応も仕方ない。この話は、2ヶ月前に遡る。



 僕は、サッカー部の練習試合の助っ人を頼まれた。特に断る理由もなかったので、快諾してその日、早速練習に参加した。すると僕は、メッシのようなドリブル、イブラのようなヘディング、ピルロのようなパス、CR7のようなシュートを次々繰り出しチームメイトを唖然とさせたのだ。


「おい!かつみ!お前やっぱすげえな!お前がいたらバルサにも勝てるんじゃないか!?」


「ほんとだよなぁ、次の試合なんて楽勝だよ」


「そんだけ凄かったら、ゴールポストで壁当てとか出来るんじゃないか?」

 やってみた。



 バシュッ、ヒュー、コーン、、、バシュッ、ヒュー、コーン、、、、できた。


「おい!すげえ!こいつすげえよまじで!!」

 全員が拍手喝采だ。





「なによ、それならなんでさっき笑われたのよ」



 問題はこの後だ。


 僕は煽てられ、このポスト当てを練習中に2078回も続けた。そして迎えた練習試合。



 ピー!



 開始の笛が鳴る。


 待ってましたとばかりに僕にボールが集まる。

 僕は、メッシのようなドリブル、イブラのような(以下割愛)そしてゴール前絶好の位置、CR7のようなシュートを放つ!

 すると、、、、ボールはポストに跳ね返り僕のもとへ戻ってきた。


「おしい!」「ドンマイドンマイ!」


 こんな言葉が掛けられたのもこの1本目までだった。試合を通して僕の放ったシュートは全部で37本。なんとその全てがポストにあたり僕の足元へ戻ってきたのだ。


「相変わらずあんた凄いのにバカね~。でもそれならシュートを蹴らなければいいじゃない。ほら、ピルロ?だかのパスがあるんでしょう?」


 僕を舐めてはいけない。僕の凄いところはこれだけに留まらない。僕は、ポストを意識するあまり、シュートはおろか、パスさえも全てポストにあたり僕の足元へ戻ってきた。

 

 結果、その試合はスコアレスドローに終わった。厳密には僕のポスト壁当てで終わった。ハーフタイムに汗だくの僕が水を飲む中、汗ひとつかいてない彼らの視線の痛いこと痛いこと。冷や汗までかいてしまったよ。



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