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辻ヒーラーさんは今日も歩く  作者: Luce
第1章 辻ヒーラーさんと始まり。
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8話 騒ぎの元で

[武術アビリティ]を[〇〇術]という表記に変更。

いろいろ変更ばかりしてすみません。

「警備隊だっていうならこの街の平和を守ってくれる人たちなんだろう?それなのに自分から平和を壊そうとするとはどういうことだい!」

「うるせぇ!守ってやってるんだからおとなしく言う事を聞けってんだよ!このばばぁ!」


騒ぎの元に駆けつけたリリエルとリートが目にしたものは恰幅のいい女性が程よく体の引き締まった男性に殴られそうになっている光景だった。

咄嗟に思念操作でメニューを開き、[アイテム]から"石ころ"を取り出して男の後頭部をめがけて投擲。


「いってぇなぁあ!今俺様に向かってなにか投げたヤツ出て来い!」


よし。ストライク。

殴りかかるのをやめて、"石ころ"を投げた犯人を探す男。

そんな言い方して名乗り出るやつなんているわけねぇだろ。

普通は、な。


「俺だが?」


名乗り出てみました。

だって、あいつ女性に殴りかかろうとしたんですよ?


「てめぇ、俺様が誰だかわかってんのか?」

「はっはっは〜。やだなぁ、知る訳ないじゃないですか〜。女性に手をあげようとする警備兵なんている訳ないですもんねぇ?どう思います?リリエルさん?」

「ふふふ。そんな自分の行動も律することが出来ないような人が警備兵な訳ありませんよ。リートくん。」

「リートくんって呼ばれるのもなかなかいいな。いや、けどリートって呼ばれるのも捨て難いな。難しい。」

「お好きな方で呼んで差し上げますよ?ふふふ。」

「う〜ん。やっぱりリートで頼む。それじゃあ、俺も…、じゃあ、リリィでどうだ?呼び方。」

「っ!……こ、これはなかなか照れますね。リリィ…ですか。リート?これからはリリィでお願いします。」

「了解したよ、リリィ。」

「お願いしますね?リート。」


「て、てめぇら!この俺様をバカにしてんのか!?」


「あっ、純粋に忘れてた。」

「忘れてましたね。」


あっ、なんだかあいつプルプル震えてる。

やっぱり怒っちゃったかな?

いやぁ、途中までは煽り目的だったんですけどね?

リリィのリートくん呼びはついついハートを打ち抜かれてしまいましたね。

あれは反則だと思います。


「お、表に出やがれ!公衆の面前でぶっ殺してやる!」


そういってズンズンと外に出ていく男。

おー。俺が表にでろって挑発するまでもなかったな。

っと、それじゃあついていくとしますか。

そうして、あとを追って店を出ようとする俺達。


「あ、あんた達!ちょっと待ちな!どうしてあんた達が戦うことになっているのさ!殴られそうになったところを止めてもらったのには感謝してるけど、あんた達が怪我をするくらいならあたしが殴られた方がましだよ!」


なんだか肝っ玉かあさんって感じだな。

いい人そう。

なのに、この人を殴ろうとしたあの男はやっぱり許せねぇな。


「大丈夫ですよ。怪我をするつもりはありませんから。」

「だけど万が「行ってきますね。」ってちょっとあんた!」


彼女の静止する声を無視して外に飛び出す。


「リート、私も手伝います。」

「おう。リリィがいれば安心だ。」

「そうですか。にしてもリリィという呼び方はその…いいものです。」

「そうですかい。ま、そそくさ懲らしめて食堂街巡りを再開しますか。」

「ええ。そうですね。」

「まぁ、それに俺達が必ずしもあの男を懲らしめる必要も無いしな。正直、ベストは見回りの警備兵が来るまでの時間を稼ぐことだな。」

「え?懲らしめないのですか?」

「だって懲らしめたら俺達も事情を長々と聞かれるハメになるだろ?けど、避けるだけに留めておけばやつは同僚の前で守るべき市民に暴力を奮っているわけだ。そっちの方が俺達はさほど目立つこともなく、同僚からの心象も悪くなるから厳罰に処せられる可能性も高くなるわけだ。」

「い、意外と黒いですね。リート。」

「そうか?さて、それでは警備兵が来るまで攻撃を躱す練習相手にでもなってもらいましょう。」


そんな話をしながら店の外へ出ると、男がいきなり殴りかかってきた。

うおっ、びっくりした。

男の拳を右に飛んで避ける。


「いきなり殴りかかってくるとはいいご挨拶じゃありませんか?これであたっていたら流石に酔っていたからといっても、言い逃れはできませんよ?それでも構いませんが?」

「うるせぇ!さっきからてめぇは気に入らねぇ!いいから殴られやがれ!」

「全然よくありませんが?にしても警備兵がこんな人たちの集まりだというのなら、街の皆さんは護身術を習わなければいけませんねぇ。」


拳に対して皮肉で返す。

にしても酔っているせいか拳に力は入っておらず、こどもの駄々程度にしか感じられない。

これじゃあ、戦闘訓練にもなりそうにない。

というわけで興味が失せたので早く来てくださいよ〜。警備兵さ〜ん。


「くそっ!当たんねぇ!おい!避けんなよ!」

「そうは言われましても困ります。殴られて喜ぶような性癖も持ってませんし。」


にしてもそろそろ諦めてくれないかな?

これなにがあっても攻撃なんか掠りもしないな。

酔っているとはいえ大丈夫かな?こんなレベルのやつが警備兵になっているなんて。


「だぁああ!鬱陶しいな!てめぇ!ハハッ、イイぜ?ぶっ殺してやる。」


いくらやっても拳が当たらないことに業を煮やしたのか、腰に下げた剣を抜き、構える。


「ハハッ、ぶった斬ってやる!オラァアア!」


そういって剣を上段に構え、突進してくる。

え?え?え?正気かこいつ!?いや、正気なわけねーよな!?

本気でなに考えてんだ!?


「オラァアア!しねぇええええ!」


そういって剣を振り下ろす。

ってなんだか速くね!?


「っと、危なっ!なんでこいついきなり攻撃が鋭くなってんだよ!」


上段からの振り下ろしを寸でのところで横に飛んで躱す。

十分な剣速で振り下ろされた剣はそのまま地面に衝突するかのように思われたが、腰のひねりを利用して横薙ぎの一撃に変化させる。

咄嗟に後ろに飛び退くが、一瞬間に合わず剣が掠め、服と薄皮1枚に横一文字に切り裂かれた。

それに慌てて、男から距離をとる。


「っつ!なんでこいついきなり強くなってるんだ!?」

「大丈夫ですかリート!あぁ、少し血が出てます!あわわわ。ち、[治癒魔法]を、っと、私使えませんでした!どうしましょう!どうしたらいいですかリート!」


切られたことに気がついたリリィが慌てて近寄ってきて、止血しようとしているが慌てているせいで、今ひとつ役に立っていない。

にしても、血が流れるなんてすごい再現度だな。現実みたいだな。


「落ち着けリリィ。それよりもどうしてあいつはいきなり強くなったんだ?」

「お、落ち着いてますわ!私!いきなり強くなったのは[武術アビリティ]の[剣術]のせいですわ!先程までは拳で攻撃をしていましたが、[拳闘術]のアビリティは持っていないですので、あまり強くなかったのですわ!ですが、剣を持ったことによって[剣術]が発動して、剣を持った動きに補正がかかったというわけですわ!」


なるほど。そういうからくりか。道理で動きが格段に変わるわけだ。

にしてもリリィの口調崩れてきてないか?


「ヘヘヘッ、女に心配してもらえるなんていいご身分じゃねーか。羨ましい限りだな!そしてそんなテメェがよりムカつくなぁ!」


そうしてまた剣を上段に構えて突進してくる。


「この男!私が成敗してくれますわ!」


そういってどこからか槍を取り出して構える。


「リリィ、それしまえ。ところで今の俺でも解毒魔法は使えるか?」

「どうしてですか!解毒魔法は使えますわ。詠唱は、

「彼の者から毒は取り払われん。『ポイズン・キュア』」

ですわ!」


それを聞きながら[アイテム]から杖を取り出して、先端を男に向ける。


「そうか。ありがとうな。

「彼の者から毒は取り払われん。『ポイズン・キュア』」


杖の先端が向けられた先にいる男に向かって魔法が発動する。

すると、


「うぉっ!なんだ今の光は!ってあれ?なんで俺は剣を抜いて振り下ろそうとしているんだ?」


リートまであと50cmほどの距離で男の動きが止まった。

ふぅ、ぎりぎりか。

すると男の後ろから大きな声が響き渡る。


「こちらは警備兵だ!そこの剣を抜いた男!即刻剣を下ろし地面において、頭の後ろに手を組んで当て、ゆっくりこちらを向け!」


あれは警備兵だったか。よし、これで解決かな?


「警備兵?」


そういって、男は剣を抜いたまま後ろを振り返る。


「おい!剣をおけと言ったはずだ…ライアン?」

「リッツか。どうしてここに?」

「どうしてここに…、じゃない!店で騒ぎを起こして、女性に暴力を振るおうとしている男がいると通報を受けて来た!これはどういう状況なんだ!応えろライアン!」


そういって暴れていた男-ライアン-にあとから来た警備兵の男-リッツ-が詰問する。


「え?いや、その…。お、俺も何がなんだかわかんねぇんだ!」

「そんな返答認められるか!さぁ、キリキリ吐け!」

「そういわれてもわかんねぇもんはわかんねぇよ!」

「お前、ふざけているのか!」


そういって話が一向に進まない2人。

すると、


「あたしが説明するよ。」


と店にいつの間にやら出てきていた肝っ玉かあさんが声を上げた。

肝っ玉かあさんの名前どうしよう・・・。

途中の流血シーンで『現実みたいだな。』との表現がありますが、実は異世界でしたとか、デスゲームですとか言った路線に進むつもりは全くありません。

あくまで、再現度が高いことを表現するためのセリフです。


こぼれ話 ライアンが騒ぎを起こすまで。


警備兵の朝は早い。

4時に起床。そして、早朝の訓練を3時間。そして、朝食。


カロリーだけをとることを目的とした美味しくない食事を腹に流し込む。

そして朝食が終わったら街のあちこちに散らばって、見回り。


普段なら特に何も思わない見回りだが、昨晩女性に振られたライアンは目に付くものがいちいち鬱陶しく感じた。

しかも、警備兵をしているせいで合う時間が取れないからという原因で振られたものなので、より一層警備兵をやっているのが嫌になってきているのである。


そして見回っていると時折見かける商人らしき男と女性が腕を組んで歩いているのを見ると、警備兵をやっている自分にむかついてきている。


そして、昼時になってまた美味しくもない食事を腹に流し込んでまた見回りにつく。

そして、見回って2時間ほど経過したときのこと、市場を見回っている時にライアンは見た。


自分を振った女性がほかの男性と楽しそうに腕を組んで歩いているところを。


それを見たライアンは反射的に近づいて行った。

すると、女性は何かを感じ取ったのかライアンが迫ってくるのを見て、男性の腕を引っ張り人ごみに紛れていった。

女性の姿を見失ったライアンは、行き場の無い怒りを持て余し、1つ舌打ちをして見回りを再開した。


そうして、その日の勤務が終わるとそのまま食堂街にある酒場で安酒を何杯も呷った。

そして、懐に入った革袋から酒代をカウンターに叩きつけると、適当に店に入った。

そしてまた、酒を頼んだところ酒は出していないというので怒鳴り声を上げた。


これがリリィとリートの耳に入ったという訳である。

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もう一つの連載作 テーマは邪道の王道。
「真実は迷宮の中」
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