43話 暴走
話が気に入らなかったので一度書き直していました。
間が空いてすみません。
それでは本編をどうぞ!
ゲルマの一応正式にパーティーへの所属が決定し、本当の意味で"レジスタント"というパーティーが出来上がったところで、南の山へと移動した面々が最初に遭遇したのは、
「おい!1匹そっち行ったぞ!」
という近くに向かってくるこちらに向かって言ったのか怒鳴るような大声と、厳しい面で走ってくるというか動いてくるというか表現に困るが、とにかくこちらへとのっそりと枝葉をガサガサと揺らしながら向かってくる一本の木、つまりは、
「トレントだな。どうする、リーダー?」
ファンタジー御用達、高さ5m程の樹木型のモンスターの出現。
それを見たゲルマは背負っていたタワーシールドを構えながら問い掛けてくる。
「迎撃する!ゲルマ、止めれるか?!」
「当然!」
「よし。ペグは隙を見つけたらドンドン攻撃していけ!ラナは牽制、ミーシャは
チャンスを待って詠唱開始。俺はそれぞれのフォローに入る!」
「了解や!」
「…。」
「おう。」
「了解っ☆」
それぞれ自分に与えられた役割に文句は無いようで指示にしたが、「モンスター…殺す。」
あ、ラナが暴走した。
「おい、ラナ!!」
「モンスター、殺す。」
話聞いてくんねぇ!
クソッ、仕方がない!
「ゲルマ、注意を引いてくれ!こっちはラナの暴走を止める!」
「チッ!ああ、ちゃんと抑えろよ!」
「当たり前だろうが!」
ゲルマと一瞬で会話を交わし、自分の斥候職としての一切の能力を使用しようともせずにただ何の工夫も無くトレントに向かってただ一直線に駆けていくラナの後ろを追う。
トレントは一直線に自分に向かって駆けてくるラナに対してのっそりとした動きで太い枝を振り下ろす。
その枝はカサカサと葉同士が擦り合わさったときに起こる音を立てながらラナの頭上へと迫り、
「やらせるか!!敵を穿て『ファイヤー・バレット』!所詮は木、燃えとけ!!」
[アイテム]から取り出した杖から火の弾丸が出現し、トレントの幹に刻まれた厳しい面に向かって飛んでいくと、
ジュッ
その厳しい面の表面に10円玉位の焦げあとを作る程度だった。
「なっ!?」
くさタイプにはほのおタイプが効果抜群じゃないのか!?
「ラナっ!!」
届かぬと分かりつつも伸ばした手、そして視線の先にいるラナはトレントの振り下ろされたその太い幹と枝葉に呑まれ、
ズゥゥン
というやけに重々しい地面との衝突音が響く。
「ラナーーー!!クソッ!」
最初からラナが暴走することだって分かってただろ!
どうして油断してた!
まずはあの太い枝を退かしてラナの状態を確認することが先決だ。
となると注意を引いて、
「そいつは俺の役目だ!『ショック』!」
ゲルマがタワーシールドを勢い良く地面に叩きつけて地面を揺らす。
するとトレントは先ほど振り下ろした枝を持ち上げ、ゲルマの方に向き直り、のっそりとした動きでありながらも少しずつ動いて移動していく。
「助かる!」
ゲルマがトレントの注意を引いてくれたことに感謝して走り出し、枝の振るわれた先に出来た小さなクレーターを覗き込む。
「ラナッ!ってあれ?」
ラナがいない?
辺りを見回してもどこにも居らず、血の一滴も見当たらない。
ということは、
「一応は無事なのか?」
ラナの行方はまったく分からないが、
「ラナはここにはいない!おそらく無傷で何処にいるはずだ!」
振り返りながら全員に聞こえるように声を張り上げて情報の共有しておく。
その視線の先ではゲルマがタワーシールドを手にトレントの枝葉による猛攻を防ぎ、ペグが不自然な加速を繰り返しながら攻撃を加えてゆき、ミーシャが詠唱を終えると何かが彼女の持つ派手なピンク色の杖の先端から緑色のブーメラン状の何かが素早く射出されて、トレントの太い枝を切り落とす。
有効な攻撃が与えられているようで、トレントは時折身をよじっている仕草なのか樹冠がガサガサと揺れている。
「ラナの行方は後回しだ!とりあえず先にそのトレントを仕留めるぞ!」
一人で探しに行くという手もあるが、俺だけだとミイラ取りがミイラになる可能性もあるからな。
さっさと全員で木っ端を捻ってから探しに行く方がいいだろ。
「先にリートはラナちゃん探しに行かんかい!コイツは俺が仕留めといたる!」
声を張り上げてそういうペグの力強い言葉に、先程出した指示を撤回しそうになるが、
「先にこのデクを潰していく!これは決定だ!」
ラナの強さを俺は信じる!
俺にはトレントの様な硬そうなモンスターに対して有効的な攻撃手段は持ち合わせてないが、
「俺には付与魔法がある!!」
さっさと決めろよ、ペグ!
「彼の者に強き力を『エンチャント・「メキメキメキ!!」STR』?」
何故かトレントの樹冠から太い枝が剪定されているように落ちてきているんだがこれ如何に?
「うわっ、なんやこれ!なんか俺の周りにオーラ的なんがまとわりついてんねんけど何これ!」
メキメキメキッ!
ほらまた。
「こんな珍妙な事すんのリートのアホしかおらんわ!!リート、説明プリーズ!」
なんだ?
腐朽した?モンスターのトレントが?
「一体どうなってる!」
「あれあれ?リーちゃんは分かってない感じぃ?まあペーちゃんもだけど☆」
「うわっ!」
「『うわっ!』ってちょっと酷くない?で、あの枝が落ちてきた理由本当に分かってないの?」
いつの間にか近寄ってきたミーシャに驚きつつも、その質問の答えが分からないため、
「分からない。」
「リーちゃん、二点減点だね☆……確かに初めてのパーティーリーダーだとか事情を抱えたパーティーメンバーがいるとしてもみんなの命を預かるの、もっと観察力を養いなさい。でないと仲間を失ってしまう。」
如何にもな雰囲気を出しながら何かを悔いるような目をしているミーシャの様子に、普段なら言葉をかけるべきなのかを悩む場面であるが、
「悪いが端的に言ってくれないか?ラナを探しに行かなきゃならないから。」
生憎、今は余裕が無いんだ!
「はぁー、少し落ち着いて☆ミーシャちゃんだって緊急事態ならもう少し慌てるよ☆」
あー、となると、ミーシャは今は慌てていない。
つまりは緊急事態では無い。
今の状況での緊急事態というのはラナの行方知れず。
そして不自然に落ちてきた枝。
「ああ、トレントの上に登っているのはラナか。」
「だいせいか〜い☆」
トレントのあの一撃を避けて、更にはバレずにてっぺんまで登って攻撃を加えているとなると、ラナは意外と冷静だったということか?
「んー、ラナちゃんは暴走しているということで間違いないよ☆ただ、Bランク冒険者というネームプレートはそんなに安くない、あの程度の攻撃、反射的に避けることが出来るというだけの事だよ☆端的に言うと、Bランク冒険者を舐めんじゃねーぞって所かな☆」
「…もしかしてさっきの俺の言葉、根に持ってる?」
「んー、端的に言うと少し☆」
「すみませんでした!!」
あの言葉の弾み具合とは裏腹な真顔は絶対少しっていうレベルじゃなく根に持ってるっぽい!
後で甘い物でも渡して機嫌をとっておこう、そうしよう。
「と、ところでラナは大丈夫なのか?」
「んー、大丈夫じゃないね☆という訳で暴走後は宜しくね、王子様役☆」
「は?」
「だってー、女の子を正気に戻すのは男の子の役目でしょ?」
それは物語の中でだけだろ?
そんなこと現実にやってみろ。
「ハッ」
って鼻を鳴らされて終わりだぜ?
もしくは「鏡見てこいや」とか「チェンジで」とか言われるに違いない!
そうに決まっている!
「…はぁ、気分落ちてきた。」
「あれれ〜?リーちゃんって意外とめんどくさい系??」
「うっせ。」
そうこうしている間にもトレントの樹冠の枝葉はラナの手によって次々と払われてゆき、ついには、
「あー、見たくねぇ。」
「…ああは成りたくないもんや。」
「よし。」
「あー、容赦ないね☆」
大多数の枝葉は払われて、盆栽というには大きすぎるが不格好な手入れをされたそれのようになっており、パッと見の印象としては隠すものが無くなり地肌が露出してしまっている頭のように見え、リートとペグは将来の自身の髪を幻視してしまう。
で、地肌を露出させられたトレントはそのことに対して怒りを表しているのか、樹木の体を必死に揺らすが、悲しいかな。
先程までは確かになっていたガサガサという音もなるものが無くなってしまい、残った枝葉が虚しくカラカラと音を立てる。
そしてその残った枝葉のうちの一つにラナがしがみついており、彼女の表情はどうにも伺えないが、トレントの体をよじるような動きにも振り下ろされることなくぐっとしがみついているのを見ると、相当な思いを込めているということがよく分かる。
で、
「けどあれで倒せるのか?ラナには決定力に欠けるような気がするが?」
「だーかーらー、Bランク冒険者舐め過ぎ☆」
そんなものか?
「その証明に、ほら☆」
「ん?」
ミーシャに促されてトレントの方に視線を移してみると、
「えー、…は?」
トレントはついさっきまではラナを振り落とそうと虚しい音を立てながら身をよじっていたのに、今は体が痙攣しているようにピクピクとしており、
「なんだアレ!」
ミーシャの口ぶりからして十中八九ラナの仕業なのだろうが、あんなふうにモンスターをしてしまうようなアビリティなんて聞いたことも見たことも無い。
「詳しい話はラナちゃんから聞いたら良いよ☆まあそのためにも~。」
「ラナの暴走を止めるのが先決か。」
目的は定まった。
後はやるだけ。
ラナを正気に戻すのに一番手っ取り早いのは『ソウル・キュア』だろうからそれを早く発動させたいところなのだが、如何せんラナとトレントの距離が近すぎてターゲットが逸れたら今の麻痺状態のトレントを解き放つことにもなりかねないからな。
下手に手を出すことは出来ないとなると、
「さっさとトレントを始末するしかないんだがな。」
高火力な魔法を発動してしまえば誤ってラナを巻き込んでしまう可能性があるから迂闊な行動は取れない。
「それに木の癖しやがって火魔法も通らないとか可笑しいだろ。」
「トレントに火魔法?効かないよ?」
「はっ?」
トレントなんていう名前してるが、結局木だぜ?
「トレントって生木だから。燃えないよ?」
運営さん、本気ですかい?
どうしてここにリアリティ求めちゃったかな!
そうなると俺の持っている攻撃手段で通じるものとなると…あるにはあるが、数が心もとない上に攻撃範囲を指定しなくても良いばら撒きタイプものしかないからな。
ソロプレイヤー故の弊害がここに来て足を引っ張っている。
となると、
「ペグ!任せた!彼の者に秀逸なる技を『エンチャント・DEX』!さっさとあのウドの大木伐採して来い!」
「また訳の分からんオーラが出よった!後でちゃんと説明せえよリート!」
覚えてたらな。
「うおおおお!!」
叫び声をあげながら持ち前のSTRを活用して地面を強く蹴り、[軽化]を使ったのかトレントの高さを優に超えて飛び上がり、最大到達点でガクンと気合の入った声と共に玄翁をそのまま大きくしたようなハンマーを背面に構えるような体勢で降下してくる。
このペグの行動に対していくらモンスターで考えるだけの知能もないものとはいえど、分かりやすい脅威を見逃すわけもなく、トレントは着地予想地点から逃れようとガサガサと体を揺らして移動しようとするが、
「…させない。」
そのトレントの動きを今度はラナが見逃すわけもなく、巧みにナイフを操ってトレントの表皮を抉り取ると、戦闘装備として身についていたウェストポーチに手を伸ばし何かしらを取り出し、それをそのむき出しになった部分に対して塗りこんでいる?
「!?!?」
トレントは何か強い刺激を受けたように体をブルブルと震わせて身もだえ、心なしか変わるはずも無い幹に刻まれた顔が一層険しくなったようも見え、暴れながらもその場を逃げようとするが、
「させねえよ!」
ゲルマがその進路を塞ぎ、大きなタワーシールドでシールドバッシュ、トレントの体を支えている根っこが地上に露出するほどの威力で衝突し、トレントは大きく体勢を崩す。
そしてそこに、
「『スマッシュ』ぅぅううう!!」
ペグが白い光を纏ったハンマーを勢い良く振り下ろして体勢を崩しているトレントと衝突する。
激痛に身悶えるようで、更には体勢を崩しているトレントに[重化]プラス落下速度プラス持ち前のSTRを最大限に活用しているペグに対抗する手段など残されているはずもなく、狙ってやったのかは分からないが幹に刻まれた顔にハンマーの木殺しの部分が衝突し、大きく陥没させた上に更にミシミシと大きな破砕音を響かせながらハンマーはその奥へ奥へと進んでゆく。
そして、
「ラァァアア!!」
最後のペグの気合の篭った咆哮を最後にトレントの上半身と下半身のつながりはあっけなく分かたれ、
『You win!』
『経験値を入手しました。アイテムを獲得しました。』
そのウィンドウと共に細やかな白い光となって消えていった。
そして、
「おうラナちゃん、助かったわ!」
「……ごめんなさい。」
「ん?何で謝ってんの?」
「私が暴走したから…。」
「なに言ってんの?リートのラナちゃんに対する指示は牽制や。トレントの注意を引くという役目は十分に果したやんか。」
「けど!」
「けどもへちまもあらへん。俺が助かったんは事実や。大人しく受け取っとき!」
「……。」
「それでええよな!リート!」
こいつ、幽鬼の如く次なるモンスターを探して歩き出したラナの肩をサラッと叩いて注意を自分に向けさせてこんな事言いやがった!
まあ本当の意味でこの世界にとっての死というものを感じることの出来ないプレイヤーとしては脱落者が出なかったから次から注意をしてくれたら良いというように話を纏めても良いんだが…。
そんなことを思いながら、顔を俯かせて俺の顔を伺ってくるラナにばれないようにゲルマとミーシャに目でそれぞれに問いかけると、どちらも俺の決定に任せるというようにコクコクと頷く。
…はあ。
「今回だけはペグの言うとおり、俺の指示に従った結果ということで、助かった、ラナ。」
暗に次はラナの暴走として処理するぞという意味を込めてそう言ったのだが、
「やってさ、ラナちゃん!」
「…ん。」
…ん?
「んー☆これってもしかして?」
「ラナのアレは多分仲間を失ったことによる依存心というところじゃないか?」
「にしては顔、赤くないか?」
いつの間にか近づいてきていらゲルマとミーシャとで、今のペグとラナの反応についてボゾボゾと話をしていたのだが、これってもしかして?
ラナがペグに惚れたっぽい?
意外とヘビーな方向にいつの間にか行っていたので、シリアス壊しときました。




