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辻ヒーラーさんは今日も歩く  作者: Luce
第2章 辻ヒーラーさんと初イベント。
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39話 豹変


ラナの先導に従って冒険者ギルドへとたどり着いた訳であるが、中には種族、性別問わず多くの者がいた。


その彼らは特に新しく入ってきた俺たちに注目する訳でもなく、仲間内で話をし続けながら何かを待っている様子だった。


まあこの様子だと肝心な話はまだ始まってない様だから一安心と言ったところか?



すると、受付口の一面の壁の一部に設けられた扉から昨日も見た美少年のバジルが姿を現し、息を大きく吸い込んで、


「おめぇら仕事だあ!!」

「「「ぉぉおおおお!!」」」


言葉遣い!?

あの美少年が戦士の顔になってるし。

やはり英雄様だからか?


「おめぇらにも分かりやすいように簡単に説明してやる。このローニッツ都市の東西南北、全ての方位に"前触れ"のクソッタレが出てきたんだとよ!ここまで理解したら黙って頷け!」


イメージ崩壊が著しいんですが?

そんでこの空気の中、楽しそうに首を縦に振る君たちはあれですか?

ドMってやつですか?そうですか。


「おいそこのリートとかいう小僧!おめぇには伝わんなかったか!?難しいことなんて言ってねぇだろ!理解したらそのバカみてぇに開けてやがる口閉じてさっさと頷け!」


口悪っ!?

何なんですか、このノリに乗れなければオカシイの?


まあラナがこのノリに乗れているのは分かる。

ペグ、お前は何故このノリに乗れている?

それもどうしてノリノリで声まで上げてるんでしょうか?


「聞こえてねぇのか!?」


ヒイッ!


ドスが、ドスが効いております!

ついでにこの冒険者ギルドの中にいる殆どの者から空気が読めてねぇなとか言うような視線が集まっております!


コクコクコクコク


「分かりゃあいいんだ。だが、付いてこれねぇようならさっさと出てけ。はっきり言って邪魔だ。」


ぐっ、確かにあまりのインパクトに置いてけぼりを食らったが、ここで離脱は避けなければならない。

とりあえずあのインパクトについては考えないことにしよう、そうしよう。


「んじゃ、説明再開すっぞ。んでその対応にこの都市の上の西と東のクソッタレ共がどうにかしろだとよ。はっ、おめぇらは黙ってこの都市の兵士に指揮権渡して一つにまとまってブルブル震えてろ。」


おいおい、クソッタレって言っていいの…って我慢我慢。


「そのクソッタレ共、こっちに偉そうな言葉遣いしてるくせにその声震えてやんの。傑作だろ?」


え、ここって冒険者ギルドじゃなくてそういう人達の集合場所ですか?

バジル様はギルドマスターじゃなくて親分ですか?

そんでそれを聞いて膝を叩いて笑うあなた方は構成員の方々ですか?


ペグ?…既に構成員の方のようです。


そしてバジルは大きく床をドンと踏み鳴らすと、


「いいか!おめぇらの仕事はそのブルっちまったクソッタレ共のためじゃねえ!他でもねぇおめぇらの大切なもんのために戦いやがれ!他でもねぇこの俺、"極百"バジル=ケトゥーニハがそれを許す!」

「「「ぉぉぉおおおお!!」」」


バジル様の言葉に興奮したのか構成員の皆様は大きな声を上げているわけですが、素直にこの状況に流されてみると確かに興奮する理由も少しは分かるっていうもんだな。


まあそれでも近くにいる冒険者とハイタッチをしたり、お互いに肩をバンバンと叩き合ってお互いの無事を祈りあっているペグには敵わないが。


…やっぱ確信したわ。あいつがフレンドやらが少ないっていう理由、絶対に関西弁とかじゃねえな。


「集まってきた情報についてはこっちの方ですでに纏めておいた。その情報を確認すればさっさと戦って来い。兵士やギルド所属以外の面々と役割分担するのは半日が過ぎてからでいい。それに気にするな、今回の戦いではこの俺も出るからな。さっさとしねぇと全部手柄持って行っちまうぞ」

「ギルマスは重役出勤で頼む!」「総指揮は任せたからな、それが終わるまで絶対に顔出すなよ!」「お願いだから手加減してよ!?」「終わったな、魔物共」


…どうにもその実力に関しては信用されているみたいだが、その性格面には少々の問題はありそうな気がしてきた。


「そんじゃあ色々決まってる奴らはさっさと行って来い。そして四肢を失おうがちゃんとココに帰って来い。そんときゃ俺が酒の一杯でもおごってやる!」

「「「ぉぉぉおおおお!!」」」


これが英雄。

バジルがゲームの中の存在であるとかそんな話じゃなく、今自分が相対している者こそが英雄であるということを本能が知っていた。


彼の言葉は一種の熱病のようにこの場にいる冒険者たちの体を蝕み、一向に冷める様子がない熱で以って恐怖も絶望も興奮の一色に塗り替えていった。


これはまずいな。

体全体が彼の言葉に侵されてしまって今にも飛び出して杖を振るってしまいたくなる。


「んじゃ、行って来い!」

「「「ぉぉぉおおおお!!」」」


バジルの言葉を受け、冒険者たちは大きく声を上げると、体を反転させ彼に背を見せると隣にいる者たちと無事を祈りあいながらギルドの外へと次々と出て行った。


「アレだな。今すぐあの後ろに付いていけないのは少々残念だという気持ちがふつふつと沸いてくる。だがな、お前は出て行っちゃだめだろ、ペグ」

「グェッ」


アホはどうやら先ほどの彼の言葉の熱に浮かされたようで、次々とギルドを出て行く者たちに続いて出て行こうとしたので首根っこを引っつかんで強引にその足を止めさせる。


「なあアホ。さっきの言葉に影響されたのは俺もだからその気持ちも分からないでもないが、それにしたって迂闊だ。少しは考えて行動しやがれ」

「ゲホッゲホッ、あ、ああ。悪い。ちっとばかし影響されすぎたみたいやな」

「分かったのなら良い。ただ、アホは許すが馬鹿はこの状況下じゃ許容できないからな」

「ほんますまんな。反省しとる」


こいつは関西圏に住んでいるだろうから今ので分かっただろう。


てなわけで本題だ。


「ラナ、知り合いは?」

「付いてきて。」


そう言って歩いていくラナの後ろにペグと二人、付いていくわけなのだが、あのノリにいまいち付いていけてなかった俺も興奮させるものがあったせいか、ギルド内に残っていた者たちも積極的に話しかけ、臨時パーティーが結成されて第一陣の冒険者たちの後に続いてギルドを出て行った。


その流れに逆らうようして三人はギルドの奥の方まで歩いてゆくと、


「ちょっといい?」

「んあ?ラナか。ちょっとこれ食べてからでいいか?」

「うん。」

「よし、ちょっと待ってくれよ。」


ラナがそう声をかけた相手はルートの緋色の髪よりも深い燃えるような赤の髪を持った大男で、身長は2メートルを超えているだろうということが良く分かる。

その声かけられた大男はラナから了承を得ると上を向き口を大きく開いて、手に持っていた残り半分ほどのハンバーガーの詰め込み、ゴキュゴキュと音を鳴らしながら咀嚼してゆき、ごくりと呑みこむ。


そして口元の汚れを手の甲で拭うと、ラナの方を向いて、


「悪い。しかしラナが俺になんの用だ?あいつらは?」

「…死んだ。」

「…そうか。で?」


言葉だけ聞けばひどく冷たいようにも聞こえるが、ラナの仲間が死んだと聞くとギュッと拳を握りしめたところを見ると冷たいわけではなく、言葉が足りないだけのようだな。


「今回の戦いのためにパーティーを組んだ。それに加わって。」

「俺がか?自分で言うのもなんだが俺は守ることしか出来ねぇぞ?」

「そんなこと百も承知。だから誘ってる。」

「へぇ。で、そっちのが?」

「そう。」

「ふぅん。」


赤髪の男は俺とペグの姿を見ながら、


「強いのか?」

「さあ?」

「さあってお前…。」


男は頭痛を堪えるようにラナに呆れたような声でそう言った。


まああんたがそういうのも分かる。

どこの馬の骨とも分かんねぇやつとってのはまだしも、その実力も知らずにパーティーを組むっていうのは余りにもリスキーだからな。

それにペグはともかく俺は所詮Dランク冒険者だから腕が立つとは言えないわな。


ちなみにDランク冒険者程度なら適当なモンスターを狩りまくってたら片手間でも上がれる。

実際俺は"(あかり)"の食材調達をして、要らないものを売り払っていたらいつの間にか上がってた。


「ラナ、お前本気か?」

「本気。」

「…そうか。俺としては別にコイツらがある程度の実力を持っていれば何も文句はない。」


おお、意外と好感触?


「ただ、ラナの信頼の言葉だけじゃ背中は預けられねぇ。だから見せてくれよ、返答はそれからだ。」

「…どう?」


ラナが俺に聞いてくるが、それはもちろん、


「問題ない。ただそっちの力も見せてもらうぜ?」

「ハハハッ、その口に見合い程度の力は持ち合わせておけよ?その時は俺も見せてやる。で、そっちのは?」


顎で指し示されたペグは、


「もちろん問題あらへん。…ただ、俺のは変な戦い方やねんけどエエ?」

「モンスターを倒せるんだったら問題ねぇ。」

「そかそか、そら安心したわ。」


ペグも了承と。

それじゃあ、


「俺はリート。よろしく出来るだろうから宜しくな。」

「俺はペグや。よろしゅう。」

「ハハハッ、俺はゲルマ。よろしく出来るといいな。」


どちらも手を差し出して握手をしながらそう言ってやる。


…一応俺って回復メインだよな?

なんでこんなに肉体派のノリになってるんだ?


あっ、バジルの影響か。


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もう一つの連載作 テーマは邪道の王道。
「真実は迷宮の中」
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