33話 生き方
お久しぶりです。
なかなか忙しくて連載が・・・。
とりあえず連載できるところまでは連載しますので、応援していただければ嬉しいです。
「...。ごめん。」
涙が枯れたようなラナはリートの上から降りてそう言った。
「いや、気にしていない。それより俺の方が謝らないといけないな。酷いことを言って悪かった。許してくれとは言わない。」
いくらラナが生きる意味を見失いかけていたとは言え、彼女の仲間の死を侮辱したことに変わりはない。
謝っても意味が無いのだろうが、謝意を示しておきたかった。
結局は俺の自己満足だけどな。
「...その事については許さない。絶対に。」
「そうか。わかった。」
そうだよな。俺とラナが出会ってから一日も経っていないのに信頼関係も何もないよな。
踏み込みすぎたのかもしれないな、俺は。
リートはこれからのことを聞こうと思っていたのだが、あまりに死に急ごうとしている様子のラナを見かねて仲間を侮辱するような言葉を発してしまったのだ。
その言葉を発してしまったことに罪悪感を抱き、本来の目的を果たせそうにない様子でラナはラナで感情の整理がつかないためか、ただ遠い目をしており、ただ沈黙が二人を包んでいた。
その空気を破ったのはラナだった。最後の言葉を発してから続いていた沈黙のときは長く、窓から見える夕日は西に流れている大河の水平線に紅い空を残して沈み始めていた。
「・・・聞きたいことがある。」
「・・・言ってくれ。」
静かに口を開き、疑問をなげかけるラナに自分の答えを言おうとひとつ咳払いをし返答したリート。
「私は生きていていいの?みんなやりたいことを持っていた。みんな夢を持っていた。そのためにみんな必死に生きていた。・・・けど、私にはそれがなかった。私が持っていたのはみんなと足並みをそろえようと作り上げた虚構の夢だけ。そんな私が夢を持ったみんなの命で生かされていてもいいの?こんな私がこの先笑って生きていってもいいの?どうして私なの?夢を持っていないような私よりも夢を持ったみんなが生きてくれていたほうが良かったのではないの?なのにどうして私を選んだの?」
ラナはどうやら自分一人が生き残ったこと、いや、生き残ってしまったことが受け入れられないようだ。そして夢を持ったみんなが本当に好きだったのだろう。そんなみんなとともに歩めることが何よりも楽しく、うれしかったのだろう。だからこそラナは虚構の夢を作り上げた。みんなとともにいたいと思っているから。
そしてそのみんながいなくなったことによってその幸せはもう二度と味わうことの出来ないものになってしまい、残ったものは虚構の夢だけになった。つまりは彼女は今自分を見失っているのであろう。だからこそ、こんな空っぽな自分ならいっそのこと・・・等と考えてしまっているのかも知れない。
彼女はいま、縋るものを探しているのだろう。
だから俺の答えが彼女のこれからの生き方になる可能性が高い。
こういうとき、どういう言葉を掛けたらいいのだろうか。
なんていうかこう、伝えたいことは存在しているのだが、それをどうにもうまく言葉に表せない。
けどこれだけは伝えておきたい。
「俺はそれはラナ自身が見つけ、選択するべきだと思う。」
当たり前だけどこれが一番大切なことだと思う。
俺の言葉を聞いて、ラナは見捨てられたと思ったのか顔を伏せた。
そんなラナに俺は言葉を重ねる。
「別に俺は君が憎くて言ってるんじゃない。言いたいのは誰かを生きる意味にするなってことだ。
誰かと一緒にいるのは楽しくていいよな。けど、その誰かに生きる意味にしているとその誰かがいなくなったときに自分というものがわからなくなる。ちょうど今の君みたいにな。」
リートはそう言葉を一度区切ってラナを見るが俯いたままであった。が、ラナのウサギ耳はこちらに向いていた。
その様子から話は聞いているようだと判断して話を再開する。
「だから君のこれからは君自身で決めるべきだ。相談には乗る。悩み事だって聞いてやる。立ち止まるようなら背中だって叩いてやる。けどそれは自分自身で選んだ道を進んでいる者にしか出来ないんだよ。誰かの後ろを歩いてる者には何を言っても心には響かないからな。」
ラナは伏せた顔をあげてこちらを一心に見ている。
その目から視線をそらさずに、数秒目を合わせた後、最後に畳み掛けるように言葉を続けた。
「俺には仲間を失ったことはないからし、そんな奴の言葉は軽く聞こえるかもしれない。けどこれだけは何度でも言っておく。君は君自身のこれからを君自身で考えるべきだ。」
リートはそう言い終えると[アイテム]から”コップ入りの水”を取り出して話続けて乾いた喉を潤すために一気に呷った。喉を通る水が乾いたところを溶かしていくときの痛みがどこか気持ちよかった。
ラナはリートの言葉を聞いてまた顔を伏せたが、先程の不安のために顔を伏せたような様子ではなく、自分の中で言葉を噛み砕き、消化しようとするような様子であった。
そのラナの様子を見て、リートは先程までと同じように他人に自分の生き方を託すようではないように見え、彼女の出した答えがどうであれ尊重しようと決心した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして数分後彼女はゆっくりと顔を上げた。
そうして彼女の答えを待っていたかのように見つめるリートの目をまっすぐ受け止め、そしてそらさずに見つめ返し、こう言った。
「・・・君の言いたいことはわかった。確かに私は今まで他人に自分の生き方を求めていた。けど、それは決して悪い経験ばかりではなかった。その生き方をしてきたからこそ私は仲間たちに出会えた。それは一生の宝で誰にも否定なんかさせてやらないし私もしない。」
そこでいったん言葉を区切り、強い目でリートを見る。
その視線を受けてもリートはたじろぐことなく続きを促すように彼女を見ていた。
そして、
「けど、リートの言うとおりそれじゃあ先に進めないっていうことも今回のことでわかった。だから私は自分自身で道を決めていくことにする。」
「だけど、私にはその方法がわからない。だからこそ、」
「リート、私に生き方を決める方法を」
「相談させてほしい。」
そう言ったラナの表情は真剣で自分で考えて出した結論ということが伝わってきた。
ちゃんと俺の考えを受け止めて真剣に悩んだ様だな。
そういうことなら勿論、
「ああ、相談に乗ろう。」
そういって返すしかないよな?




