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辻ヒーラーさんは今日も歩く  作者: Luce
第2章 辻ヒーラーさんと初イベント。
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32話 心の堰

「分かった。」


そうラナは言った。

これからの冒険者ギルドの対応及び方針を聞いた後に。


「そうか。それで一つ聞きたい。」

「なに?」

「君はこれからどうする?」


と直球でラナに問いかけるリート。


「戦う。」

「戦う?」

「そう。このローニッツに攻めてくる魔物と。」

「1人でか?」

「......。」

「本気で1人で魔物と戦うのか?」

「...そう。」

「死ぬぞ?」

「覚悟の内。」

「死ぬぞって言うのは正しくないな。死んで仲間の後を追うつもりか?それで仲間が喜ぶとでも?」

「!?」

「託された情報は伝えたからもう死んでもいいやってか?」

「......。」

「仲間達が自分の命を差し出してまで守った命を捨てると?」

「...何が言いたい?」


ラナの言葉には明らかな怒気が含まれており腰のナイフに手が伸びている。

そんなラナに睨み付けられたリートは次の言葉を紡いだ。


「つまり彼らは無駄死だったって訳か?」

「っ!」


目にも止まらぬ早さでリートを椅子から蹴り倒し、馬乗りになってナイフを抜き放ち首元に突きつける。

突きつけられた首元からは血が一筋流れ出ている。

ヒンヤリとした金属の孤独な冷たさを感じながらもリートは何も言わずラナをじっと見つめた。


呼吸を荒らげ肩で息をしている。

手が震えている。

目が潤んでいる。

そして零れた。


「っじゃあどうしろっていうの!?"モンスター・カーニバル"なんて起こってしまえばこのローニッツですら攻め落とされるかもしれない!いや、攻め落とされる!いくら冒険者がいっぱいいて、警備兵が迎撃をしたって敵いっこない!この都市は守れない!じゃあ私たちの仲間が命を賭けて届けた情報だって何の役にも立たない!それだったらせめて一匹でも多く仕留めて仲間の無念を晴らすしかないじゃない!もう...、それ以外に私の大切な皆を...、大好きだった皆に私が出来ることなんて無いじゃないっ!!」


零れた。

涙が。胸の裡が。無力さが。


カランっ


ナイフが手からこぼれ落ち音を立てた。

溢れてくる涙を乱暴に何度も何度も手で拭った。

それでも涙は尽きない。


「サンタナぁ!ミチルぅ!モーガぁ!ジットぉ!ワニルぅ!皆、ヒグッ、皆どうして私を置いていっちゃったのぉ!ヒグッ、もう皆に会えないのぉ?ヒグッ、こ、こんなの酷いよぉ。ウワァァああああああ!!」


遂に言葉が零れた。

そして彼女の中で堰き止めていた何かが崩れて一気に感情が流れ出した。

そして泣いたのだ。

現実の無情さに。運命の非道さに。そして誰も救えなかった自分自身に。

彼女は泣いた。


そんな彼女をリートは慰めなかった。

何も知らないから。何も失っていないから。

ただ胸に顔を埋める彼女のされるがままにされているだけだった。

彼女を一人にしてはいけないと思ったから、ただ側にいようと。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「なっ!それは本当ですか!?まさか"モンスター・カーニバル"が起こったなどと!」


と白髪混じりの黒髪の壮年のヒト族の男性が机を叩きつけて立ち上がり言った。


「現在調査中だけど恐らくはね。"モンスター・カーニバル"ないしはそれに相当する非常事態は発生しているよ。普段とは違う雰囲気を感じて依頼を切り上げて帰ってきた冒険者パーティーも少なくないからね。何かしらの異変は間違いなく起こっているよ。」


と儚げな美少年の冒険者ギルドマスターのバジルは断言した。


「なんと...。これは非常事態ですね。」

「うん。間違いないね。」

「調査結果を待つことは必要ですが、まず戦力の確認をしましょう。」

「そうだね。冒険者ギルドとしてはおよそ2万。期待も込めてね。実のところ80%ってところかな。」

「都市自体の戦力としては5万。他の職業ギルドから戦力を集めて総数で10万といったところですかな。」

「僕もそう思っているよ。正直同数の魔物が相手でも厳しい戦いになると言わざるを得ないね。」

「本当にですか?いや、冒険者ギルドのマスターが言うのですからそうなのでしょうけど。」

「今回は恐らく僕達マスター連中が出なければならない戦いになると思う。そして戦いが終わったらそれぞれのギルドマスターの席には空席が出来ていることだろうね。」

「なっ!?それ程の戦いになると?」

「"モンスター・カーニバル"ならね。」

「そうですか...。あそこに出動要請を出すしかありませんか。」

「そうだね。あまり言いたくはないけど"厄災種"が生まれるよりはこの都市ごと吹き飛ばしたほうが遥かに被害が少ないからね。」

「"ゴエリスの凶乱"ですか...。」

「うん。あれで国が2つ滅んだからね。この都市と同規模の所も2桁は優に超す位破壊され尽くされているよ。」

「最終的に時の世界最高峰の戦闘力を持った者達が眠った頃を見計らって奇襲を仕掛け、己の最大の一撃をもって滅したとか。」

「それでも半分近くの者達が犠牲になったけどね。あれは酷い戦いだったよ。」

「あなたでも、いやあなただからこそ言えることですか。英雄のうちの一人、"極百"バジル=ケトゥーニハ様。」

「あの時ほどの力は今の僕にはもう無い。文字通り死力を賭した一撃だったから。精々"極十"と言った所かな。その十ですらあの時に比べれば...っとそんな不安になるようなことばかり言ってちゃダメだね。」

「私には何とも申せません。が、この都市に住む一人の住民として、また西区画代表としてもお力をお貸しください。」


と言って真摯に頭を下げる男性。

その男性の肩に手を当て頭を上げさせて、


「もちろん。ここは僕が住む所でもあるからね。ローニッツに住む一人としても、冒険者ギルドのマスターとしても、過去の英雄としても、そんなこんなを全部ひっくるめた僕の全てを以て力を振るうよ。」


ニッコリとバジルは笑った。


「ありがとうございます。それでは職業ギルドのマスターに招集をかけて東区画の代表にも集まって貰うことにs


バンッ!

「失礼します!緊急事態にて口上は省略させていただきます。"モンスター・カーニバル"の発生と断定。東西南北全てに異常な魔物の姿を確認。そ、そしてその総数は...」


早く言わんか!」


「はっ。ま、魔物の総数は100万程度と思われます!」


「「なっ!?本当()?」」


「はっ。内訳は北に40、東西にそれぞれ20強、南に10万強と思われます。後続は確認されておりませんが、それを差し引いても余りに...。」


と言葉を濁した伝令の男。


「一番近い街がある南の数が少ないのが救いかな?」

「救いと言っても10万強。簡単に戦力合流できる様なものでもありませんよ。」

「だよね。けど戦力合流しないと確実にこの都市は魔物の蹂躙に晒される。」

「そうですな。おいっ、伝令を頼む。各職業ギルドのマスターと東区画の代表を招集しろと近衛に。そして、警備隊には特A級と伝えてくれ。あらゆる兵装の許可するとも。」

「はっ!」


といって走って出ていく男。


「これは不味いどころの騒ぎじゃなくなったね。」

「ですな。私はこれから各方面に救援要請を出します。」

「頼んだよ。僕もお仲間に連絡をつけておくね。」

「お仲間というとやはり?」

「過去の英雄だよ。」

「心強いです。こうなった以上遅かれ早かれ民衆に不安が広がるでしょうが、警備隊には特A級を出したので市井には最低限の人員しか当てられませんので、コントロールは不可能でしょう。どうしましょうか。」

「そうだね。この問題を放置していると壁の内外問わず地獄と化すね。こういう時は強いカリスマ性を持った者が舵を取るべきだけど...心当たりが無いや。」

「英雄たるあなたがその役目を担うのが一番なのでしょうが。」

「僕だって戦場に出るからね。僕が死んだら大混乱だよ。」

「そうですよね。どうしたらいいものか。」


そういって、二人して頭をひねるが有用なアイディアが出るわけでもなかった。


更新頻度ガガガ。

頑張って更新頻度戻せたらなどと思っております。


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もう一つの連載作 テーマは邪道の王道。
「真実は迷宮の中」
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