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辻ヒーラーさんは今日も歩く  作者: Luce
第2章 辻ヒーラーさんと初イベント。
33/45

31話 話せる場所

冒険者ギルドからラナを抱えて出たリート。

出てきた二人を見て何も知らない者達はその異様な光景に気味の悪さを抱いていた。

"兎人族"のラナの身長はBランク冒険者であって既に成人してはいるのだが130cm程と小柄だ。そしてそんなラナを抱えているのは外套を深く被り、僅かに見える隙間からは緋色の双眸がこちらを捉えているような錯覚を覚える。

はっきり言って怪しすぎる。日本なら即通報ものだ。

しかしそこはファンタジーなのか遠巻きにヒソヒソと話しながら見てくるだけなのである。

またもや周りの視線を集めているリートはというと、


(うわぁどうしよう。あの雰囲気に完全にあてられた。え?何でこうなってる?『リート君、君に頼んでいいかな?』とか言われて正直ちょっと調子に乗りましたすみません。彼女を保護するとなれば必然的に俺の目が届く範囲に入れとく必要がある訳で。となると宿に連れて帰るのが確実なわけで。となるとあの部屋に2人っきりになる訳でして。......不味いよな?こう風紀的に。16の俺でも流石に男女が一つの部屋でとなるとそういった行為が行われることもあることぐらい知ってるよ?実際そういう行為を出来るようになる機能もあるよ?20歳以上という条件付きで。だからといって周りがそう見てくれるかっていう問題があるよな。)


このゲームでの成人年齢は15歳。

これが指し示す事は、


(完全詰みじゃねーか!)


そう、リートに部屋につれて行くという行動は取れない。

かと言って格好をつけて出て来たのにもう一度バジルないしは冒険者ギルドに預けるという方法は恥ずかしいということもあるが、これからの事態を考えると面倒を見る余裕はどこにも無いだろう。

かと言って一人にすると死に場所を求めて特攻する可能性も考えられるし、バジルとの約束もあるため却下。

やはり完全に詰んでいる。

しかし詰んでいるということが分かっても、それをどうにか出来る名案も出てこない。


そうしたことを考えてウンウン唸ったり首を左右に捻ったりしているリートの姿は周りの者達には、不気味さが更に増して"兎人族"の彼女に害をなそうとしているようにしか見えない。

その様子から腕に覚えのある者達がリートとラナをゆっくりと囲み全員が自分の武器に手を当てた。

戦闘準備は完璧である。

その様子にも気が付かないくらいに悩んでいるリート。

囲っているものからは張り詰めるような緊張感、リートからは案を絞り出そうとする必死さが漂っている。

まさに一触即発。


そして動いた。


ラナが。


「んんっ...、ここは?というか誰?というかどういう状況?」


とぱっちりと鳶色の目で辺りを見回して説明を求めるラナ。

その言葉に一層警戒心を強める周りの者たち。


「あ〜えっと、覚えてないか?俺の事。」

「知らない。......と思ったけどさっき会ってる。名前は確かリールだった?あと降ろして。」


と言われてラナを降ろすリート。


「惜しい。俺の名前はリートだ。よろしく。」


と笑いながら手を差し出すリート。

それに


「リート、覚えた。私はラナ。よろしく。」


と差し出された手を握り返すラナ。


「ところで質問なんだけど、どうして囲まれてる?」


というラナに対して、


「囲まれて...うわ、ホントだ。気付かなかった。なぜ囲まれてるんだ?俺か?注目されてるのは。」

「どこからどう見てもリートを見てる。いや、私を含めてかな。」

「どちらにせよ囲まれてることに代わりはないな。誰かご説明頂けませんか?」


と周りの者達に問いかけるリート。

すると、代表をしてなのかヒト族と思しき男性が剣に手を当てたまま一歩前に出て来て、


「そこの女性を何処かへ連れていこうとしているように見えてな。お前さんには悪いがそんな格好をしていたら怪しいもんでな。てなわけで包囲しているってわけ。で、俺達は警戒を止めても大丈夫か?」


と問い掛けてくる男性。

それに、


「ああ、問題ない。確かに俺は怪しい格好をしているからそう思われても仕方が無いか。」

「大丈夫。害そうという意識は感じられないから。」


などというリートとラナ。


「そうかい。確かに"兎人族"が言うんならそうなんだろうよ。よし、俺は撤収させてもらう。じゃあな。」


と言って背中を向け、後ろ手にヒラヒラと手を振りながら去っていき周りの者達に紛れて姿が見えなくなった。

その言葉を聞いてリート達を警戒していた者達も武器から手を離しそれぞれの方向に散っていった。

周りの者達の視線も徐々に減ったので、改めてラナとの話を再開させるリート。


「ところで今の状況理解出来てるか?」

「ある程度は......けど、正直自信が無い。」

「そうか。それじゃあどうしようか。」

「教えて。私に。」

「まあそうなるよな。」

「そうなる。」

「それは引き受けたが......正直内容が内容だ。どこかいい所はないか?」


と最後は小声で話すリートに、


「心当たりがある。」


と言うラナ。


「何処だ?」

「私の宿。」

「なっ...それでいいのか!?」

「?問題ある?」

「大ありだと思うが?」

「私が問題ないと言う。なら問題ない。」

「そりゃ君が問題ないって言うなら君としては問題ないのかもしれないが、俺としてはなぁ。」

「そんなことはどうでもいい。私の貞操より情報の方が大事。」

「そんなことって...。まあ確かに今はそういうことを言っている場合じゃないというのも事実だが。最後に確認するが、いいんだな?」

「問題ない。」

「...そうですかい。」


とサラッとラナの泊まっている宿に行くことが決定した。


「ついてきて。」


と急に颯爽と歩き出したラナ。

それを追うリート。

道中では話せないような内容のものなので、特になにも話すことなく宿へとは続く道を歩いていった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


そしてやって参りましたよ。ラナさんが泊まるお宿、"水樹のお膝元"とやらに。

外見はそれほど豪華なものでなく、かといってボロというわけでも無い極々平均的な宿だ。


「ここが君の泊まっている宿?」

「そう。入って。」


とリートの手を引っ張って強引に中に連れ込むラナ。

そうして連れて入られた宿の中だが、こちらも外装に合わせた造りになっていた。

......やっぱり俺の泊まっている宿と違って内外装がちぐはぐっていう訳はないよな。

安心した。


そんなことを考えて必死に2人きりでこれから部屋に入るという思考を必死に追い出していた。

その事に意識を裂きすぎてもう部屋の前まできたことに気が付かないリート。


「入って。」


といって受付で受け取った鍵を回して開け、中へと勧めるラナ。


「お、お邪魔します。」


と震える声を必死に抑えて部屋に入った。


部屋の広さは六畳程度で部屋の大部分をベットが占めるような感じだ。

その他には円形のテーブルに四つの椅子。

それくらいしか物は置いていなかった。

現実で宿に止まったことのある身としてはテレビや冷蔵庫が足りないようにも思えるが、たしかにそれは必要なものではないのでただ寝泊まりする宿としては十分なものだと言えた。


閑話休題。


ラナはリートを招き入れたあともさっさと円形のテーブルの一つに座り、


「座って。」


といった。

リートもラナに習って椅子に座ると、


「話して。」


と言った。


確かにラナは何かを急いでいるような印象を受けたリート。

確かにこれでは正常な判断だって出来なさそうだな。

けど、彼女には当事者として聞く権利があるからな。

とりあえず、これからの事は全部説明し終えてから考えるとしよう。


と結論付けリートは彼女に気絶したあとの話を始めた

最近不定期連載になりつつあります。

頑張って書いてはいるのですが...。


また不定期な更新になるかもしれませんが、ご愛読いただければ幸いです。

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もう一つの連載作 テーマは邪道の王道。
「真実は迷宮の中」
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