14話 辻ヒール
[ステータス]にレベルの表記が無いことを発見
付け加えておきます。
そしてリリィの案内の元辿りついた、登録を行っているという建物。
「着きました。ここで登録します。」
「へぇ。東門の近くにあるんだな。」
「ええ。どの方角に出るにしてもここまで来て登録してからじゃないと出られません。」
「なかなか重要なところなのに何で街の中心部にないんだ?」
「ここにあるのは、食堂街や露店街といった所が近くにあるからですね。この二つの場所はよくトラブルが発生するので近くにあった方が現場により早く到着できますからね。」
「なるほどね。」
「それでは登録に参りましょうか。」
といって建物の中へと入る。
するとそこには剣や槍などの武器を携えた人たちがたくさんいた。
え?なにここ怖い。
「そこの坊主と嬢ちゃん。どうした?迷子か?」
と厳つい顔をした筋骨隆々な男が声をかけてくる。
「え、え〜と?」
何この人突然なんだよ。顔怖っ!
「おい、ガート。お前顔が怖いんだから怖がられてるんだよ。」
「そういや前迷子になったお子様にいろいろ聞こうと思って話しかけようとした瞬間に泣かれてたぜアイツ!」
「そりゃ怖ぇ思いをしたな!可哀想に。」
「ちげぇねぇな。ハハハハ!」
「うるせぇ!俺だって子供に泣かれたくてこんな顔してるわけじゃねーんだよ!」
と周りにいるこれまた筋肉隆々の男達が厳つい顔をした男-ガート-をからかっていた。
俺はどうすればいいんだ?
そう困惑しているリート。
すると、
「お前達どうかしたのか?突然騒がしくなったようだが。」
「いや、部隊長。今子供達がここに訪ねてきましてね。ガートの奴が厳つい顔で、迷子か?って聞くもんだから固まっちゃって。」
「またガートの顔が原因か。っと、子供達といったな?その子供達は?」
「そこにいる子達ですよ。」
という会話が始まり、リート達を指さす。
「分かった。やあ、君達は。って、リート君と一緒にいたリリィさん、でしたか?」
声をかけてきたのは、
「リッツさん?どうしてここに?」
「リリィことリリエルです。」
リッツであった。
というか、部隊長だったんだ。リッツさんって。
「どうしてもなにもここは警備隊本部ですよ?むしろ私の方がどうしてと聞きたいくらいです。リリエルさんですね。分かりました。......ライアンの件はまだ結論が出ていません。」
と最後の言葉は小声で述べるリッツ。
どうやらここが警備隊本部だったようです。
「それを聞きに来たのではなく、街の外へ出るための登録に参りました。」
「どうしてですか?外を見たいなら朝まで待った方が安全ですよ?」
「私は外に戦闘訓練をしに行きたいのです。これから魔物狩りで生計を立てるつもりなので、様々なタイプの魔物との実戦経験を積んでおきたいのです。」
「そうですか。しかし、外に行くには最低限の実力を持っていることが条件になります。それを証明できますか?」
「つまりは戦って見せろと?」
「そうなりますね。」
「分かりました。それではこちらへどうぞ。」
そういってリッツはどこかへ歩き出す。
それをリートは追いかけていく。
そうしてしばらく歩いていると、訓練所と思しき場所についた。
「ここは警備隊の者共が戦闘訓練を行う訓練所です。ここでは対人戦闘の他に魔物との戦闘もできるように何匹か捕まえてあります。この魔物をリート君。あなた1人で倒してください。もちろん何を使っていただいても構いません。武器も貸出します。どうしますか?」
これって、倒さないと許可が降りないんだよな。
なら、
「やります。武器は自前のものがあるので結構です。」
といって[アイテム]から初心者の杖を取り出した。
「魔法使いですか。そういえば治癒魔法を使っていましたね。それでは魔物を放ちます。用意はいいですか?」
と最終確認をしてくるリッツ。
「ええ。結構です。始めてください。」
と杖を構える。
「それでは放ちます。」
といってリッツが何かを地面に叩きつけると、檻が現れそれが自然に分解されていき、中の魔物が姿を現した。
「ワオォォオオーーン!」
恐らくあれがレッサー・ウルフなのだろう。
HPバーも一緒に現れる。
遠吠えをしている隙に[アイテム]から"石ころ"を取り出し、鼻先に向かって投げつける。
しかし、レッサー・ウルフは余裕で躱し、"石ころ"を投げたリートに向かって走ってくる。
......意外と速いが思った以上じゃないな。
そう考えている間にレッサー・ウルフはもう目と鼻の先まで迫ってきていた。
そう結論づけ、構えた杖をレッサー・ウルフに向かって突き出した。
「キャイン!」
「「ええ!?」」
よし。上手くいった。大体1割強は削れたな。
「どうしてリート君は杖を持っているのに魔法を使わずに突きを放ったのですか!?」
「私もわかりませんよ!リートあなた何を考えているんですか!?」
ええ?そんなに難しい事じゃないんだけどな?
答えは普通にリアルで少しだけ棒術を習っていたから。
「いや、別にスキルがないとダメージが入らないって訳じゃないだろ?ただ、補正とスキルが無いってだけで。」
「それはそうだけど、誰もやらないよそんなこと!」
「そうですよ!」
そうか?けど、この世界にも魔法剣士的な人だっているだろうし、何ならプレイヤー勢の中にはもっと奇抜なことやり出すやつもいっぱいいそうだしな。
そこまで驚かれるような事でもないよな。
なんてことをレッサー・ウルフの攻撃を避けながら考えていた。
っと、結構走りながら攻撃を避けているから[俊足]のアビリティレベル上がらないかな?
「ガウっ!」
そういって噛み付いて来るのを前に転がり込むような形で避ける。
その際に腹に突きを放っておく。
それでまた1割程度削れる。
「キャン!」
多分、初心者向けの敵だからアビリティの補正がなくてもダメージ入るんだろうな。
と、それじゃあ[投擲術]試してみるか。
そして、レッサー・ウルフよりも早く反転して素早く近づき、超至近距離から杖の尖っている方を顔に向かって投げつける。
「キャィーーーン!!」
杖は頭に軽く突き刺さり、HPバーを5割ほど削った後、痛みでレッサー・ウルフが暴れた際にすっぽ抜けた。
「うん。補正って偉大だな。」
「こんな補正は全くの想定外ですよ!」
「これは魔法使いの戦い方じゃない。少なくとも私が知っている魔法使いにこんな戦い方をする奴はいない。」
見ている2人が何か言っているようだけど気にしない。
にしてもこの程度なら全然勝てるな。
というわけで、さっさと終わらせようか。
まだ痛みで暴れているレッサー・ウルフの近くに落ちている杖を拾って、上段に構え、
「はぁっっつつ!」
一気に振り下ろした。
それで2割ほど削れ、振り下ろした反動を利用して槍のように構えてHPバーが全損するまで突きを放った。
『You win!』
『経験値を入手しました。アイテムを獲得しました。』
とウィンドウが現れた。
よし。勝利。[ステータス]や[アイテム]はまた後で見よう。
「これでいかがでしょうか?」
「え、ええ。外へ出ることを認めます。」
「ありがとうございます。」
「それでは付いてきて欲しい。」
「わかりました。」
とまたリッツの後ろを付いて歩く。
「リート。あれはこっちの想定した戦い方じゃないです。超至近距離からの投擲なんて想定してませんよ。」
「そうなのか。けど、あれはいいぞ?なかなか削れた。」
「そりゃそうでしょうよ。[投擲術]は投擲による命中率と近くに行けばいくほどダメージが上がる仕様ですもの。あの至近距離なら通常攻撃の3倍ほど出ますよ。それに頭に当てたことによる弱点の補正も入ってますよ。」
「そりゃいい戦い方が見つかったな。それに[隠密]で不意打ちダメージも加算すると......。」
「あなたどこを目指しているんですか!」
解せぬ。有効活用しているだけなのに。
などと言ってリッツの後ろを追いかけて歩いているわけだが、明らかに警備隊本部よりも長い距離を歩いていた。
そうして、リッツが立ち止まると、目の前には一番上が見えないほど高い螺旋階段が現れた。
「さて、ここはもう街を囲っている壁の中だ。そして目の前に見えている螺旋階段を登って壁の最上部までいって、そこから縄はしごを降りてもらう。それでは登っていこうか。」
と言ってどこまで続くかもわからない螺旋階段を上っていくリッツ。
......まじですかこれ。
などと思いながらもリートも螺旋階段を上っていく。
そうしてしばらく登っているとリッツは、
「ここが最上部だ。」
といって、閉ざされていた扉を開けた。
そこからはキルトの街が一望出来た。
色とりどりの屋根や壁の色、そして、ライトや小精霊などが様々な色で輝き、まるでキルトの街自体が輝いているように見えた。
「これはまた見事だな。」
「ええ。そうですね。」
「ええ、そうでしょう。これが我々の街、キルトなのです!」
とリッツはまるで子供が自分の宝物を見せびらかすかのように言った。
まぁ、これ程のものならその気持ちも分かるか。
「さて、それでは準備をします。まず、これが魔術具です。門が閉まっているうちに街へと帰りたくなったらその魔術具に「帰投を申請します。」と話し掛けて下さい。そして、本人確認が出来次第縄はしごを下ろすので、すみやかに登ってください。また、門が開く時間まで外にいる場合は門から入って警備隊本部まで自分の手で届けに来てください。宜しいですか?」
と注意していくリッツ。
「わかりました。」
「承知いたしました。」
「それでは縄はしごを降ろす。」
返事を聞いたリッツは監視の役についていたように見える人たちと一緒に縄はしごを降ろしていく。
「準備が出来ました。それでは降りてください。」
リッツがそう言ったので近くまで行き、下を覗き見る。
高っ!暗っ!怖っ!風強っ!
縄はしごの下の方真下に降りてないんですけど?ブラブラ揺れているんですけど?
門から出入り出来ないとなるとこういう方法しかないのかねぇ?
高所恐怖症や暗所恐怖症の人は絶対無理だな。
まぁ、行きますけれども。
「それでは行ってきます。」
「ええ、気を付けてくださいね。」
そういってリートとリリィは縄はしごを使って外へと出ていく。
途中で強風が吹き縄はしごがものすごい勢いで揺れたり、縄からミシミシという音が聞こえてきたりと色々あったが、無事に降りることが出来た。
まぁ、1kgほど体重は落ちた気がするけど。
何らかの方法で降りきったことを理解したのか、縄はしごは再び壁の上部へと戻されていった。
「なかなかな恐怖体験だった。」
「ええ。ああいった事が出来るのはゲームならではですね。」
なんていう感想を述べあっていた。
「それじゃあ、適当に歩き回って魔物でも探すとしま「キャーーー!!」っと、またこのパターンですか。という事は当然?」
「もちろん行きましょう。」
といって声の聞こえた方へと駆け出す2人。
走り始めて10秒ほどで暗闇の中何かが動き回っているのが見えてきた。
暗くて姿はハッキリとしないが激しく動き回るHPバーとあまり動かないHPバーだけが中に浮かんでいるような見え方をしていた。
そのHPバーは残り1割程度で危険域と呼ばれる残量しか無かった。
それを見たリートは詠唱を開始する。
「かの者を癒せ『ヒール』」
と杖の先端を!まだ姿は見えないがHPバーだけが見えるプレイヤーに向けて発動する。
ちなみにプレイヤーと魔物ではHPバーの見え方が違って、プレイヤーは直線状で魔物は折れ線状になっている。
そして、プレイヤー側のHPバーが回復して行くのが見えた。
すると、先程まで並走していたリリィが風のように飛び出し、何処からか取り出した槍で魔物の体を貫き、魔物のHPバーを一気に削り取った。
そして、魔物のそばまで行ったことによって攻撃を受けたと思われるプレイヤーと近くにいる形になったリリィは、
「大丈夫ですか?お姫様?」
と爽やかに声を掛けた。
......ナニアレカッコイイ。
あれ?どうしてこうなった?
文章は長くなり、辻ヒールをしたリートよりリリィさんの方が目立ってる....。
こぼれ話 レッサー・ウルフの生態
狼系統の中では少数派の一匹狼タイプで群れを作らない。
その癖弱い。その癖数は多いという謎生態である。
故に狩りやすく、初心者向けの魔物に分類される。
素材としては、毛、皮、肉が活用される。
毛は筆や刷毛などに使われ、皮は数が多いため、鞣されて簡易的な革袋として活用される。また、毛皮として庶民にも買い求めやすい、安価な防寒具としても活用されている。
肉は可もなく不可もなくといった味であるが、主に肉食の家畜の餌や、撒き餌として利用されている。
討伐証明部位は右耳。




