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辻ヒーラーさんは今日も歩く  作者: Luce
第1章 辻ヒーラーさんと始まり。
14/45

13話 外に出よう

お兄さんが言っていた通り、階段を上がって一番奥の部屋の前にリリィを伴ってリートは来た。

時間は18:56。

ちょうどいい時間だな。

そして、受け取った鍵を差込みひとひねりして解錠し、リリィを先に入れる。

......さっきから小さな声で「ベットがひとつベットがひとつ」とうわ言のように繰り返している。

仕方ない。

リリィの目の前にリートは両手を持っていき、力強く2回ほど手を打ち鳴らした。


パン、パンッ!


「はっ!」

「正気に戻られましたか、お嬢様?」

「え?正気とは?」

「先程聞いた受付のお兄さんが、『ベットがひとつしかない。』と言われてから、お嬢様は何を聞いても、『私はベットがひとつでも大丈夫ですわ!』と繰り返すだけで何一つとして回答になっているものはありませんでした。」

「そうでした。私はベットがひとつしかないと聞いて......、っ、リート!私はベットがひとつでも「落ち着いてください。ゆっくり深呼吸を。」はい。」


お兄さんの言葉を思い出して、また山彦リリィになりかけたことを阻止し落ち着く様に、とリートは言った。

リートの言葉を聞いたリリィは深くゆっくりと深呼吸を3度ほど行い、落ち着いた。


「落ち着かれましたか?」

「ええ。」

「さようでございますか。それでは今後の私の予定を説明しても?」

「ええ、構いませんわ。」

「現在の時刻が18:56なので、このままログアウトします。そして1時間ほど現実で過ごして、20時頃前後にログインします。そして、それから街の外に行って討伐練習の相手を探しに参ります。そして、何戦かこなした後、ここ"止まり木亭"へと帰ってきてログアウトします。戦闘回数は24時までに狩れるだけとしたいと思います。」

「分かりましたわ。」

「それでお嬢様はどうなさいますか?」

「私はリートの今日最後のログアウトでお別れとしたいと思います。」

「さようでございますか。」

「ええ。」

「それは寂しくなりますね。」

「ええ。」

「しかし、そんな先の別れのことを考えるよりも、すみやかに行動して最高な最後の時間を作ることを考えた方が建設的です。」

「確かにそうね。それじゃあログアウトするといいですわ。」

「なるべく早く帰って来ますね。」

「急いでくれるのは有難いのですが、ちゃんと気をつけて行動してくださいね。」

「承知いたしました。それではお先に失礼します。」


と言葉を交わし、ログアウトするために[オプション]を開き、ログアウトの文字をタップする。

すると、


『ログアウトしますか? はい いいえ 』


というウィンドウが開く。

そうするとリートはリリィを見て、笑っていることに気がついて安心して はい を選択した。

ログアウトする最後に見たのはリリィの笑顔だった。


ログアウトして見たのは毎朝見てる天井。


「はぁ〜。帰ってきたんだな。」


そう呟いてヘッドギアを外して、一時間後にログインするために準備を進めていく。

トイレに行って、風呂に入って、予め作ってあった夕食を食べた。

ここまで50分程度、もう一度ログインする前に寝たっきりで固まった体をほぐすように軽く体操をしてからベットに寝転び、ヘッドギアを着けて起動させた。


『Welcome to WSO!』


あっ、これって毎回出るんだ。

さっきログアウトした所から寸分違わぬ位置に立っていた。

と、リリィは......あれ?いない?


「あれ?リリィ?」


部屋を見回してもリリィの姿はない。

どこへ行ったのだろうか?

サポートAIなら街に繰り出すというわけも無いからこの部屋を出る理由もないよな。

それじゃあ何でいない?


「ログインっと、ってリート。もう来てたのですか?」


と光の粒子がどんどんリリィの形になって行き、さっきまで見ていたリリィの姿になった。


「リリィ。どこへ行っていたんだ?」

「えっと、リートが一旦ログアウトすると言っていたので、リートの行動や街の雰囲気などを報告しに行ってました。」

「やっぱりそういったモニタリングはしているんだな。」

「不愉快ですか?」

「いいや。そういうものだろ。」

「ご理解いただけたようで何よりです。」

「それじゃあ、戦闘訓練と行くか。あと、ここからは口調戻すぞ?」

「仕方がありませんね。それでは街の外まで行きましょうか。」

「ああ。」


そういう会話をして部屋を出て鍵をかけ!受付にいたお兄さんに鍵を預けた。

そして扉を開けて外に出てみると、さっきよりも暗くなっていて空にはもう星や月が出てきていた。

そして、月明かりがてらすこの街はさっき見ていた街とはまた違った顔に見えた。

街路樹に取り付けられたライトが辺りを照らし、何かフワフワとした様々な色で発光している謎物体が浮遊していたりと、これぞまさにファンタジー、みたいな光景が広がっていた。


「本当にこの世界はいろいろ驚かせてくれるな。」

「そうですね。確かにこんな光景は現実にはありませんから。」

「所であのふわふわと浮いている謎物体はなんだ?」

「あれはファンタジー御用達の小精霊です。まだ、精霊として自我の目覚めていない、いうなれば精霊の赤ちゃんと言ったところですね。」

「へぇ。これが小精霊か。」


といって、指先で近くにいた水色に光る小精霊をつついてみる。


「触れないのだが?」


つついても指には何も感触がなく、スカスカと小精霊の体?を通り抜ける。


「精霊の体は物質体ではありませんからね。触るには特定のアビリティが必要です。また、攻撃を加えるには[魔法アビリティ]でのみ可能です。例外としては[武術アビリティ]の魔法を纏わせるアビリティがあります。それ以外では精霊に干渉する事は出来ません。」

「へぇ。そうなのか。」


と残念そうにいうリートは仕方なさそうにつつこうと何度も挑戦していた指を離した。


「まあ、それはさておきだ。初心者向けの魔物がいる方角は?」

「東ですね。主に昼には鳥系統や犬系統の魔物が現れ、今ぐらいの時間帯だと蝙蝠系統や狼系統の魔物が現れます。」

「蝙蝠に狼か。蝙蝠はともかく狼が初心者向けってのもすごい話だな。」

「まあ、狼は確かに全体的に強いですが、この街の東側にいるのはレッサー・ウルフですから与しやすいと思います。」

「そうか。まあ、東側に向かって行くか。」

「はい。」


といって東側の街の門に向かって歩き出す。

そして、しばらく歩くと、


「見えてきました。あれが東の門です。」


といってリリィが指さしたのは縦6m、横10m程の金属製の重厚な門だ。

黒く鈍い光を放ち、何人たりともこの門を破る事は叶わない、と言っているかのような佇まいだ。

って、


「リリィ。あれ閉まってるよな?」

「ええ、閉まっていますね。」

「出れねぇじゃん。」

「ええ、門からは出られませんね。」

「じゃあ、何で言ってくれなかった?」

「確かに門からは出られませんが、街の外に出られないとは言ってませんよ?」

「つまり、他に出れる方法があるってことか?」

「そういう事になります。さっきから目に入っていたとは思いますが、この街は巨大な壁で囲まれています。これは魔物の侵入を防ぐ役割の他に街の周辺の様子の監視や魔物の大規模な侵攻ー"スタンピード"が起こった時に弓兵や魔法使いなどが安全に攻撃を加える時などのために存在しています。実際この街ではここ50年のうち8度ほど規模に大小はあれ起こっています。また、人と人との争いの時にも使えるという側面もあります。」


つまりは魔物や人同士の戦争の時のための巨大な備えってわけか。


「続けます。東西南北にそれぞれある門は他の街との交易や人の出入りのために昼間は開けられておりますが、夜は魔物や不審者の侵入を防ぐ為に門を固く閉じています。これは一切の例外もありません。過去には王族が夜中に門の外までやって来ても一切門を開かなかったということもありました。ですので、門が閉じられるまでに街に入れなかったら一晩外で過ごすことになります。それでも夜中に外に出る必要がある人が少数ではありますが存在したため、中から出る事は許可されました。しかし、門は開くことが出来ないため、壁の上から縄はしごをかけて降りることになりました。そして、外に出る際に特殊な魔術具が貸し出され、登録された本人の信号であると確認された場合のみ、縄はしごがかけられ街へと入ることができるようになっています。」

「つまり、俺達は今からその登録をして縄はしごを使って外に出るということだな?」

「そうなりますね。」

「それじゃあ、その登録とやらをしに行くか。」

「ええ、それではこちらです。」


さて、初の戦闘はどうなることやら。

やっと戦闘。

そして、やっと....、

遂に....

次話で....

辻ヒールします。


ナガカッタナー。

お待たせいたしました。

今夜投稿いたします。


今回はこぼれ話カットで、いい辻ヒールシーンを練りこみたいと思います!

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もう一つの連載作 テーマは邪道の王道。
「真実は迷宮の中」
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