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紫緋のエテロクロミーア  作者: 柚姫みなと
序章 転生世界
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閑話『ある日の帝都』

 私の朝は早い。

 侍女の人たちはもっと早いが私も早い。

 伊達に長い事バイト戦士をしていたわけではありません……何だかむなしい。

 日が昇り切る前に準備運動をして屋敷の周りを走ります。明るくなってからでは人目についてしまうので、それを避けるために早い時間に走り込みをしています。別に、堕落した生活をしてて太ってしまったとかそういうことではないです。


 走り込みの後はしっかりストレッチをします。それが終わったらお風呂です。朝風呂です。正直、こんなに広いお風呂を独占できるなんて幸せ者です。まぁ、寂しいですけど。


 フローネ別邸に住み始めの頃は侍女の方たちにこの走り込みが不思議に思われていたのですが、数週間も経つと見慣れたのか特に何も言われなくなり、半年近く経つとすでに日常に溶け込んでいました。


 お風呂から上がると朝食です。朝食は焼き立てのパンとサラダとスープ、シンプルながら素材の味を生かした美味しい朝食です。お代わりしたいのを我慢して外出の準備をします。今日はアトラス学院の制服を受け取りに仕立屋さんへ行きます。二か月ほど前に入学試験があり、それに合格したので学院指定の仕立屋さんで制服を作ってもらっていたのです。


 ちなみに入学試験は簡単な筆記と魔力測定でした。まさか中学生レベルの計算問題を出題されるとは思ってもいませんでした。この世界の教育レベルは生前の世界よりもずっと低そうですね。筆記試験後は魔力測定をしました。魔力測定器なるものに魔力を流し込んで終わり。実に簡単な試験でした。魔力を少しずつ流し込んでいたら測定器から煙が上がって試験がストップした時は驚きましたけどね。壊れたりしていないそうなので弁償などは無かったのです。測定器は最低でも金貨50枚は下らないそうなので内心冷や汗ものでした。


 さて、そんな事を言っている間に仕立屋さんに着きました。ちなみについて来ようとした侍女さんはまいてきました。目立つのは嫌だって言ったのにどうしてついてくるんでしょう?

 仕立屋さんに入ると店員さんと目が合いました。名前を言って制服を受け取ります。代金は学院がもってくれているので制服を受け取ったらこのまま帰ってもいいようです。制服を魔法で収納してからお店の出口に向かいます。出口に向かうと侍女さんが仁王立ちで待っていてくれました。そうですよね、いくらまいても目的地が分かってるんだから追いかけてきますよね。少しの間小言を言われた後「もしもの事があったら屋敷の者の首が物理的に飛んでしまうので」と言われました。ごめんなさい、次からは気を付けるよう善処します。


 

 帰り道、中央広場に寄って行きます。ここには大きな噴水と周りに沢山の露店が並んでおり、少し目を移すと皇城が建っています。お城から見下ろす街ってどんな感じなのでしょうか?陛下にお願いしたら目せてくれそうな感じはしますが、そんなことをしたら私が求める平凡で普通な感じではなくなってしまうような気がするので、それはやめました。


 広場を見回すと学院の制服を着た人を何組か見つけます。恐らく私の先輩になる人たちなのでしょう。楽しそうです。私も入学したら友達が出来るでしょうか?まだ十一歳なので子供と思われあしらわれてしまうのは嫌ですね。取りあえず友達百人とまでいかなくても十人くらいは欲しいですね。


「いい天気です」


 空を見上げそんな在り来たりな事を言ってみます。侍女の方も「そうですね」とだけ言います。

 五分程ぼーっと空を眺めているとどこからか子供のすすり泣く声が聞こえてきました。見てみると五歳くらいの男の子と私と同じくらいの歳の子がいました。泣いているのは男の子の方みたいですね。女の子の方は困ったようにあわあわしています。可愛いですね。私は周りの雑音を排除し二人の会話に耳を傾けました。会話の内容から男の子が迷子になって、見かねた女の子が親を探してあげているといった感じですね。周りの人は遠くから眺めていたり無視して通り過ぎたりしています。女の子の助けになってくれそうな人はいそうにないですね。


 私は侍女に「ちょっと人助けしてくるからここで待っていて」と言いました。侍女もその子たちを見ていたのでやれやれといった感じで了承してくれました。「私の目の届く範囲でお願いしますね」と釘を刺されましたが、仕方ない事なので頷き、少女の元へ歩いて行きました。


「あ、あの、この子のお母さんを知りませんか~」

「グスッ、おかぁさ~ん」


 近づいて分かったのですけど……声が小さいです。これでは誰も耳を傾けてくれませんよ。二人の側まで来た私は目を疑いました。この女の子、歳は私と似ているのになんといいますか、その、発育がよろしいようです。私はどうして生前も転生後もぺたんなのでしょうか?運命なの宿命なの?


 私が近づいてきたことに気づいた少女が声を掛けてきます。


「あの、この子の親を探しているのです。ご存じないですか?」

「ごめんなさい、わからないわ」

「そ、そうですか。すみません、お手数をおかけしました」


 あぁ、女の子のテンションが二段階ぐらい下がったような感じがします。どうやら期待をさせてしまったらしいですね。


「よろしければ少しお手伝いさせてもらってもよろしいですか?」


 私がそう言うと彼女は「いえ、これ以上ご迷惑はかけれませんので」と言って手伝いを拒んでいましたが、私はそれを無視し男の子に近づきました。男の子は泣きじゃくりながら私の顔を見つめて「おかあさんみつけてくれるの?」と言ってきました。私は「大丈夫すぐに見つかるよ」と言って男の子の手を取りました。私の考えでは親はそう遠くには行っていないはずです。いくら人が多くても自分の子供を置いてけぼりにはしないでしょう。近くで探しているはずです。そう考えた私は中規模探索魔法を発動させました。半径五百メートル程度の場所を捜索する魔法です。手がかりとして、男の子の魔力と似た質の物を探します。


 周囲にはおよそ三百人程の人が居るのでそこから探し出すのは時間がかかりそうでしたが、五分ほど経って男の子と似た魔力を持った人が広場の時計台前に居るのがわかりました。私は男の子と少女に「時計台の近くにこの子とにた魔力の反応があります、そちらにお母さんはいると思いますよ」と言ってあげました。

 男の子は行ってみると言い、走って行ってしまいました。少女も「ありがとうございました」と言って男の子を追って走っていき、転びました。私が少女の方へ向かうと「えへへ、転んじゃいました」と頭を掻きながら話してきます。転んだ時に擦りむいてしまったのか、足には血が滲んでいました。私がハンカチを取り出し「拭くと良い」と言うと少女は汚れてしまうので……と言ってきました。そんな少女を私は無理やりベンチに座らせハンカチで血を拭きました。そして近くでこちらの様子を見ていた侍女に傷薬を渡されたのでそれを塗ります。私と一緒に生活している侍女の人たちは私という人間のことを割と理解してくれているので助かります。


「あ、あの、ありがとうございます」


 少女は私にお礼を言ってきました。私は怪我人を放っておけるような人間ではないので「気にしなくていいわ」とだけ言いました。少女は血の付いたハンカチを選択して返します!と言ってきたのですが、そうそう会うこともないと思ったので「次にどこかでお会いした時に返してもらいますね」と返しました。



 

 少女と別れた私は、途中先ほどの男の子が母親と思しき女性と楽しそうに手を繋いで歩いているのを横目に見ながら屋敷へと帰っていきました。





 屋敷に戻ると何故か伯爵がいましたが、まぁ、適当にあしらっておきましょう。

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