考察好きの考察好きによる「異世かい説!」 冒険者ギルド編
そもそも冒険者ギルドって何ぞ?
異世界ファンタジーに度々登場する組織。
主に冒険者と依頼主の仲立ちを行う。
その業務は主に
・冒険者の管理
・冒険者に対する依頼の仲介
・冒険者の納税代行
・冒険者という身分の付与
作品によっては
・冒険者の育成
・冒険者の引退後の職業斡旋
・冒険者の取得物買取り
・冒険者のステータス情報の読み取りと管理
等を行っているケースもあります
要は異世界におけるハロワや派遣会社の様な物と考えれば概ね間違いはないでしょう。
利害関係を纏めよう!
まず冒険者ギルド業務によって生じる機能を纏めましょう。
・雇用の増大
・求人の簡素化と効率化
・冒険者給与の可視化
・冒険者給与からの徴税
・治安の改善
・人材情報の可視化
それぞれの機能ごと解説していきましょう。
・雇用の増大
・治安の改善
この二つはまとめて解説します。
雇用の増大はそのまま税収の増加となるためその地域を治める貴族や、中央の貴族でも特に財務系の貴族から歓迎されるでしょう。
また雇用の増大はそのまま、経済の活性化につながりますので商人等もその恩恵を受けます。
それだけでなく冒険者のほとんどは冒険者で無ければ、安定した職に就けない者や体だけが資本と言った者が少なくありません。
そういった者が職と収入を得る事で治安が改善する為、治安維持を行う駐屯兵や警察機構の主に現場は大きくメリットを享受するでしょう。
反面治安の改善によって需要が少なくなる為、予算を獲得する上層部はむしろ利害がぶつかり合う形となります。
・求人の簡素化、効率化
個人事業や会社経営をなさっている方の多くが求人に頭を悩ませます。
張り紙を貼っても求職者が来ないフリーペーパーやWEBサイトに載せても予定していたほど人が集まらないなど、思っている以上に求人とは難しい物なのです。
広告やフリーペーパー、求職サイト等の発達した現代ですらそうなのですから、通信や広告の未発達な異世界ファンタジーではこの機能は非情に魅力的な物なのは間違いありません。
Q.伝手を頼れば良いんじゃね?
現代に於いて個人商店や有限会社程度の規模であれば伝手を頼る、いわゆるコネ入社が最も安定して人財を獲得できる方法だと言われています。
コネ入社と言うといかがわしいイメージが付き纏いますが、紹介した人財の評価がそのまま仲介した人の評価になる為むしろ人財の質は安定した物に成り易いのです。
下手な人を紹介して損害が発生した場合、仲介した人がその埋め合わせをする必要が有りますのでそれを理解している人で有ればなおさらですね。
しかしこのように便利に見える「伝手を頼る」と言う方法も万能では合りません。
まず日雇い労働者的に冒険者を雇うのに毎回伝手を頼るほど、広いネットワークを持つというのは現実的では有りません。
その上紹介した側にも「せっかく紹介したのに日雇い程度の仕事しかさせないなんて」と悪印象をもたれる危険性もあります。
その為伝手を頼るという方法は「異世界で冒険者の手を借りるには」メリット以上にデメリットが大きくなるでしょう。
・冒険者給与の可視化
・冒険者給与からの徴税
この二つはまとめて解説します。
一旦冒険者ギルドを通すことで「誰がどの依頼を受けていくらの報酬を得た」かが見えるようになります。
裏返せばそういった組織が無ければ「誰がどの依頼を受けていくらの報酬を得た」か全く分からないという事です。
分からないという事はそこから税を取る事はできません。
つまり冒険者ギルドが存在することによってそれまで税金を払っていなかった冒険者からも税を徴収することが可能となり必然的に税収が増える事となります。
上記同様税収が増える為領主系貴族や財務系貴族からの支持を得る機能ですね。
また作品によっては「依頼料が支払われる際税金が天引きされる」と言う物も有ります。
これは冒険者に煩雑な税金申告をさせることなく税金を徴収する非常に良い設定ですね。
・人材情報の可視化
非常時に動員出来る人材を可視化することで各自治体の安全性や対応力を向上させることができます。
特に異世界ファンタジー定番のモンスターへの対処では人材をどの程度把握しているかによってその対応が全く変わってきます。
場合によっては(現代で言う)予備役や義勇兵として扱われる事もある為、安全保障上も非情に重要な業務であると言えるでしょう。
非常時の対応力の強化はその地域を治める貴族やその現場の兵士の利益に、国家間紛争の際に動員できる戦力の確保に関しては将軍の利益に成ります。
また常備兵の数を増やさずに非常時の対応力の底上げが出来るという点では財務系の貴族や官僚の利益にもなるでしょう。
本当にこんな組織成立するのだろうか?
Q.作品によっては最高位の冒険者は一国の軍隊にも匹敵する場合があるが、そんな存在をまとめる冒険者ギルドは安全保障上のリスクになるのではないか?
A.無いとは言えない。しかし冒険者ギルドによって生じる安全保障上のリスクよりも、「一国の軍隊に匹敵する様な冒険者」を放置するリスクの方が遥かに大きい。
冒険者ギルドが存在しえない理由づけとして「一国の軍隊に匹敵する冒険者の集団が国内にある状況が許される筈がない」という意見を目にします。
しかし大半の作品に於いて冒険者ギルドが冒険者に対して指揮権を持っている作品と言うのは殆ど目にしたことが有りません。
指揮権が無い以上冒険者ギルドと言うのは単なる仲介業者にしか成り得ないのです。
元々冒険者と言うのは根無し草が多いのですから、冒険者ギルドが強権を持って強制的に命令を下そうとすれば別の土地に移る事でその命令を回避するでしょう。
これでは「一国の安全保障にリスクをもたらす武装集団」には到底成り得ません。
むしろ冒険者に正当な仕事と報酬を斡旋する者がいなくなれば、冒険者はそのまま暴徒化するしか無いのですからそれらに仕事と報酬を与え交渉の窓口と成れる冒険者ギルドの存在は希少なものとなるでしょう。
その冒険者が一国の国軍に匹敵する実力となればそれを他国に引き抜かれないようにする機関も必要になりますしますます需要は高まる一方ですね。
Q.結局誰が得して誰が損するの?
A.得をする人、財務関係者・領主・商人・冒険者 損をする人、軍人(特に士官・騎士以上)軍閥
税収が増え同時に防衛関係費を減らせるため財務関係者や領主など「税金を集めて使う人」が最も得をします。
反面防衛関係を一部民営化するわけですから、防衛関係者(軍人や騎士と言った者)は(平時であれば)予算が切りつめられる恐れが有ります。
また予算の減少に伴いポストも減少する為出世争いが激化する可能性も大いにあるでしょう。
Q.ハッキリと損をする人が出るのなら組織として成立させるのは難しいのでは?
A.冒険者ギルドの運営に軍関係からの出向を認める或いは、天下り先としてポストを用意する等すれば反発は穏やかなものになるでしょう。
現実でもそうですが反発する勢力に利益を供与して反発を抑えるというのは割とよくある話です。
出向先や天下り先としてポストを用意する以外にも、軍をやめた後に冒険者になる者に対して一定の優遇策を設けるのも有効でしょう。
士官クラスはギルド職員や相談役といったポジションに、兵卒クラスは現場の冒険者にと言う形。
現実の軍隊でも兵士の平均年齢上昇や退職後の就職先などの問題は無視できない物である為、その後を示唆する様な設定はリアリティを増す物となるでしょう。
Q.設立や運営の予算はどこから?
A.設立予算は作品によってまちまちです。運営予算は依頼による報酬や取得物売買の手数料で賄っているケースが多いかと思います。
設立の経緯にもよりますが基本は言い出しっぺが設立予算を用意するケースが多いかと思います。
しかし設立経緯によってケースが多くなりすぎますので設立予算に関しては割愛させてください。
運営予算に関しては依頼主からの手数料やモンスター素材の販売手数料等が運営予算の基盤になっているケースが多いですね。
作品によってはそこに領主や国からの補助が入るケースや、冒険者から徴収した税金が運営予算に当てられるケースもあるようです。
手数料だけと考えると厳しいもののように思えるかもしれません。
しかし現実に求職系手数料ビジネスでは就職関連サイト、販売手数料で儲けるオークションサイトや証券会社といった物が成立する以上不可能な話ではないと思われます。
全国で目にするコンビニATMなどもこの手数料ビジネスの一環であり、少なくともATMとその運用資金をペイするだけの利潤を上げていることを考えると意外と現実的な物ではないでしょうか。
特に異世界ファンタジーに於いてはモンスターから採取する素材が他では代替困難であり、需要そのものは常に存在するという事を考えると手数料だけで成立させるのも難しくないでしょう。
また前述のとおり冒険者からの税収も存在する為、手数料のみで採算が合わなくても運営予算の確保は難しい話ではなさそうです。
Q.利権とか予算とか天下りとか薄汚い
A.現実とはそういう物です。
もはや質問ですらない(汗)
リアリティを出す為のエッセンスとして割り切りましょう。
人間の世の中とはそういう物です。
Q.そんな便利な冒険者ギルドが現実に無いのはなぜ?
A.安全保障に関する需要が全く異なるからです。しかし限定的ではありますが似たような役割を持つ組織はいくつか存在します。
異世界ファンタジーに置いては村や町から一歩出ればいつ何時モンスターに襲われても不思議では有りません。
しかし現実では街を離れても精々狸や鹿、熊と言った生物に遭遇するのがせいぜいです。
そしてそんな動物も人間に不利益を与える物は猟友会が駆除します。
また、現代日本には盗賊と言えるものは居ませんがテロリズムが盛んな国地域や政情不安な地域に置いては武装した勢力や船によって度々一般の人間が襲われるケースが有ります。
そういった武装勢力から身を守るためにソーシャルミリタリーサービス(いわゆる傭兵)や国によっては国軍の兵士が警護してくれる場合もあります。
猟友会や民間軍事企業等の組織は現代の冒険者ギルドに近い組織と言えるのではないでしょうか?
勿論社会制度や国際情勢科学技術などが全く異なる環境下ですから全く同じ形の団体というのは難しいでしょうが、似たような役割を持つ集団は現代にも存在するのです。
ご納得いただけたでしょうか?
以上を持って冒険者ギルド設定考察を終えたいと思います。
ご精読ありがとうございました。
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読みに行きます。