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7 林道を通って……って、モンスター?

 行けども行けども、モンスターばかりがいるリーラグサ林道。

 さすがに街道からかなり外れたところにあるからか、ひとけはほとんどない。

 何人かと出会いはしたものの、私達は速攻回避した。

 倒す力……っていうか、殺す力は持っているけれど、逃げ切れる力も持っているからね。

 そういうことが目的じゃないから、私はひたすら消極的な手段をとってるんだよねえ。


「だー! モンスターばっかりっすね、ここ!」

「しー。ここは静かに行くよ」


 とはいえ、人の手がほぼ入っていない道もあったりするため、雲雀は結構嫌がってる。

 獣道を歩くのは別に苦になるというほどのものではないけれども、面倒だし意外と草とかで靴も擦り切れる。


「あ、こっちは気配ないよ。大丈夫っぽい」

「あっそ……っていうか、感情の流れってモンスターにも有効なのかな?」


 モンスターがいない場所を通る方が楽って言えば楽だから、感情の流れを見てみようと思った。

 できればいいかな?

 できたらラッキー程度のものだけれど……。


「やってみたらどうっすか、お嬢」

「OK、わかった」


 そうすると、見えるわ見えるわ私達への「恐怖」の感情。

 そっか、怒り以外も見えるんだっけ。

 怖いのかね、私らのこと……まあ、いきなりやってきてこれだからねー。

 威圧感とかそういうのってあるんだろうか。

 勝手が知らない私にはよくわからないけれども、まずはここの突破だ。

 明らかに恐怖とは違う感情が流れてきた。それが……怒り。

 怒ってる奴は……まあ、いるっていえばいるんだよね。

 あ、この巣の主かな?

 壊すのもありかと思ったけれども……。


「睦月、あいつの鑑定やろっか」

「うん、そうだね……世界図鑑でも調べてみるよ」



 ***


 フォレストイーグル

 ――森にすむ鳥型のモンスターの一種。

 小型ではあるものの、鳥型の中では高い戦闘能力を持つ。

 縄張り意識が強く、縄張りを荒らすものは容赦しない。


 ***



 なるほどね……。

 小型だけれども、縄張り意識が強いモンスターか。


「一応、さっさと離れる?」

「戦う理由も特にはないっすからねえ」


 相手から敵意を向けられたからぶっ倒すというのはありと言えばありだけれども、この世界でそれをして果たして大丈夫か。

 確かに、私達は強いだろう。

 だが、人間である以上、どうしても食料や水が必要になってくる。

 神様じゃない。その加護を受けているのだから、私達は神にはなれない。

 チートクラスに強いと言っても、それはあくまでも人の話。

 ……うーん、この世界で神様になるのって……どうなんだろうか。


 でも、あの世界に別れを告げられただけでも良しとするかな。


「ま、私はあの世界からこっちに来られただけでもありがたいしね」

「もしも……この世界にあっちの人間がいたらどうするの?」


 睦月は無表情で訊く。

 ……こういう時の睦月はちょっと苦手だ。

 私の全部が見透かされているような気がする。

 ……ったく、私なんかを見透かして何の得があるんだか。

 あの時……私に声をかけてくれたことは、絶対に忘れないっていうのにさ。


「あっちの人間ねえ……まあ、相手次第かな」



 相手次第ではぶっ殺す。


 なーんて、私にそんなことする気はないけれどね。

 まだ、睦月も雲雀もいるから。生きているから。

 でも、もしも……二人がいなくなったら。私はその時、鬼になるのだろう。

 そうならないことを祈ろうかな。

 ……二人のステータスだと、負けなさそうだけどね。



「あ、フォレストイーグル、逃げたっす」


 あ、何か逃げちゃったみたい。


「鑑定は……間に合ったけれど見る?」

「うん、一応はね」



【フォレストイーグル】モンスター LV.4

HP:56

MP:14


攻撃力:56

防御力:15

魔法攻撃力:27

魔法防御力:6

素早さ:85


アビリティ

<飛行>


スキル

<ウィンドカッター>


称号

なし




「弱い……」

「でも、ここらへんのモンスター、全部そんな感じみたいだよ」


 片っ端から鑑定して調べているのか、睦月はどこかキラキラした顔だ。

 こういうことは好きなのかな、睦月……。

 私は地道なことって嫌いなんだよねえ。



「この林道……焼き払ったら経験値どれくらいになるかな?」

「京香ちゃん、それはストップ」


 だからちょっといいことを思いついたと思ったんだけれども、さすがにそれは止められた。

 焼き討ちだとか、焼き払いとかになるからね。

 そうなったら生態系壊れるだろうし……そりゃ駄目だろうね。


「……冗談だって」

「まったく……京香ちゃん、心臓に悪いよ」

「びびび、びっくりしたっすー」


 いくら私でもそんなことしないよ。

 ……まあ、半分くらいは本気だったけれどね。



 その瞬間――

 ばさり、と大きな翼の音が響いた。

 黒い翼に、悪魔の角を生やしている鳥。

 割と大きいなあ……。


「んー? うわわ、お出ましっすよ!」

「鑑定結果……世界図鑑で出すよ!」


 鑑定結果には、世界図鑑の深度Dの内容が記されている。

 だが、鑑定には時間がかかる時もあるうえに、詳しい情報はいらない時もある。

 その時は簡易鑑定にすればいいらしいのだけれど……そのへんまだ私あまり弄ってないからわからないんだよね。

 まあ、世界図鑑で検索できるもののうち、深度Dの情報は私……まあ、この世界の人間でも知ることができるってことらしい。




【ダイモスイーグル】モンスター LV.15

HP:298

MP:104


攻撃力:108

防御力:36

魔法攻撃力:154

魔法防御力:55

素早さ:229


アビリティ

<飛行><威圧>


スキル

<ウィンドカッター><ディモスウィング>


称号

<魔物殺し>


 ***


 ダイモスイーグル

 ――森にすむ鳥型・悪魔型複合のモンスターの一種。

 大型のものの中では、高い速度と戦闘力を持つ。


 ***



 悪魔型複合なのか……魔物殺しって……モンスターがモンスターを狩るのか?

 と思ったけれども、捕食行動でもこうなるんだろうなあ……お疲れ様。

 ……まだ何も終わってないけど。


「なるほど」

「これはぶっ倒しておいて問題なさそうっす!」


 スキルはよくわからないが、撃たせる前にさくっとやった方がいいだろう。


「じゃあ、さくっとやっちゃいますか」

「お嬢、山火事にならない程度によろしくっす」

「わかってるって!」


 右手に気を集中する。

 すると、魔力が流れていくのがわかる。

 それだけでなく、その魔力を見て怯えるダイモスイーグルの感情もわかる。


「フレイムショット」

「ギャアァアアアッ!!」


 おお、あれをかわすか。

 とはいえ、ぎりぎりで回避したため、そのでかい図体はバランスを崩しかけている。

 ……そこだ!


「でも甘いね! スプリッド!!」

「グギャアァッ!?」


 炎の弾が拡散し、そのうちのひとつがまともに鳥にヒットした。

 うわあ、あれ痛そう……結構威力があるそれは、まともに鳥の身体をぶち抜き、3分の一くらい焼き尽くした。


「んー、遅い遅い……これくらいならまだまだって感じだね……ほい、とどめ」


 もう一度、フレイムショットを撃ちこむ。

 絶叫と共にその命をなくしたモンスターに、軽く黙祷した。

 ……これができなくなった、あるいはしなくなった時、私はこの世界に染まるんだろうね。


「うう……この絶叫結構きつい」

「状態異常になる人もいるみたいだからね……あ、ここの水はそれをやわらげてくれるみたい」


 睦月が指し示したのは、ダイモスイーグルの姿……が掻き消えたところにあった、葉っぱの上にあった雫。

 どうやらこれがドロップアイテムってことらしい。


「水ね……まあ、私は大丈夫っぽいよ。ステータスにも出てないし」

「ネストアムリタ……露だね。これだけで十分かな。一応持っていけばいいんじゃないかな? 葉っぱも状態異常回復の効果があるみたい」

「了解。まあ、備えあればうれいなしってね」


 よし、アイテムゲット~!

 戦利品(?)もゲットしたし、いい感じかな。

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