5 チートを手に入れた!
チート大好きです。
「奴らを捕えろ!」
王様の命令に、何やら兵士だとか神官だとかがあわただしく構えていく。
ふっふっふ……ここは私の出番かな?
「そうは行かないっすよ! テレポート!!」
「へ?」
と思ったら、雲雀の声と共にあたりがぐにゃりと歪み……気づけば、街道の入り口のような所になっていた。
……え? 何が起きたの?
「何、使ったの?」
「ワープみたいなもんっす。物質も転送できて、旦那と話し合って各所にスキルチップを配置、そこからどどーんと逆転っす!」
「はいはい」
しかしまあ、空気を読まない奴だ。私にとっては嬉しい誤算だったが。
向こうからすれば、これからどんどんと盛り上げていこうとしていたのだろうが、そうは問屋がおろさなかったねー。
まあ、私の能力も少しはわかったし、これから否が応でも使っていく時があるでしょ。
……ってかイマジンチップって何よ。
まあ、旦那……睦月の性格じゃ言わなさそうだけどねー……。
「うう、お嬢が冷たいっす~」
「馬鹿なこと言ってないで……ここからどうするつもりなわけ?」
これからどうするかは結構大事だ。
先生はあのまま置きっぱなしだし……まあ、あの先生なら大概のことは何とかするし、何とかなるだろうけど……。
「先生、大丈夫かな」
「だけど、もう一度あそこに戻るのはねー……」
「リスキーっすね……」
ここで私達が仏心を出したところで、大して意味はないのだ。
何せ、ダウナー相崎といえば、私達が束になってかかっても叶わないくらいなのだから。
そして……まあその、学生時代はいわゆる喧嘩上等だった人のようで……心配するだけ無駄かもしれない。
でも、余裕があったら見に行こう。絶対に。
「んー、この世界のこととかもっと知られたら良さそうなんだけど……」
「あ、僕がわかりそうだよ」
はいはい期待してない……って、え?
「わかるんすか!?」
「何で?」
「僕のステータス、見てよ! これなら京香ちゃんも雲雀君も助けられそう!」
ほらほら、と言いながら、睦月はステータスを見せてきた。
ふむ……?
【影原睦月】人間 LV.1
HP:1012
MP:760
攻撃力:525
防御力:466
魔法攻撃力:1098
魔法防御力:3218
素早さ:2099
アビリティ
<スキリムの加護><スロウラの加護><リカバリー><世界図鑑><テレパシー>
スキル
<スキルリンク><スキルチップ>
称号
<世界の敵対者>
何というか……魔法に特化した感じだ。
私達のステータスは、基本的に私は結構高いものの攻撃特化、雲雀は割とバランス型、睦月が攻撃特化という感じだ。
睦月はスキルが私より少ないものの、アビリティが多い。
「アビリティとスキルの差が何かすごいっすね……」
おそらく、アビリティが常時発動の能力、スキルが必殺技とかそんな感じ……か?
多分だけど。
あと、気になるのは、「○○の加護」の「○○」って何ってことかな。
「加護の前の……名前かな? これが気になるけれどそれぞれ調べてみる?」
「うん、僕の力でできると思うよ」
おおう、簡単に言ってくれるなあ。
「世界図鑑!」
空中に映し出されたのは、幾何学模様や魔法陣が描かれたスクリーン。
そこに映し出されたのが、以下の情報だ。
***
スキリム
――この世界における、スキルの神。その加護を受けしものは、より上位のスキルを使える。
スロウラ
――この世界における、怠惰の神。その加護を受けしものは、行動速度を自由自在に操れるようになり、刹那の休息で充分だと伝えられている。
***
なるほど。
こんな感じで情報を知ることができるのは大きなアドバンテージだ。
……もっとも、相手もできたら意味ないかもしれないけれども……相手をビビらせることとかできるかもしれないと考えるとそれはそれで一気に凶器になる。
「私の方もできる?」
確か、アンギールとサラマンドラか。
私もお願いしてみた。
「俺もお願いっす!」
確か……イマジアとフーライだっけ?
雲雀も結構乗り気みたいだね。
それを嫌な顔ひとつすることなく、睦月は頷く。
……何か私、睦月には助けられてばっかりだなあ。
ご飯困っている時は助けてくれて、あと……って、これはいいや。
今は「あの世界」じゃないし。
「よし……OK、全員分出たよ」
***
アンギール
――この世界における、憤怒の神。その加護を受けしものは、感情の流れを知り、怒りをパワーへと変換することができる。
サラマンドラ
――この世界における、炎の神。その加護を受けしものは、サラマンドラの炎を自由自在に操ることができるようになる。
***
ほーう……。
怒りの流れを特に詳しく見ることのできたイメージかな。
んで、雲雀のはというと……。
***
イマジア
――この世界における、想像の神。その加護を受けしものは、自らの空想や思念を具現化することができる。
フーライ
――この世界における、自由の神。その加護を受けしものは、不自由となることを予測し、絶対に回避できるようになる。
***
「チートだっ!!」
「え、お嬢!?」
フーライの加護何それうらやましいぞこんちくしょう!
絶対回避! うらやましい!
イマジアも何か悪用できそうな能力だし! まあ、雲雀だからそういう使い方はしないだろうけれど……あれ、睦月もか……となると私だけ?
うう、私の心汚れてる……。
「いや、京香ちゃんも割と大概だよ?」
「でも、サラマンドラって……何か地味じゃない」
「それ、絶対にこの世界の人の前で言っちゃ駄目だよ」
「え?」
睦月曰く、サラマンドラはこの世界では信仰対象の神様らしい。
ほー、別の世界とかだとただの火の蜥蜴だったりするからなあ……本当に神様レベルってことか。
……サラマンドラも蜥蜴なだけじゃないんだけどね……。
ファンタジーとか色々やってるとありがたみとかなくなっていくよね……。
「それに……サラマンドラの力を使ったから、京香ちゃんにも異変があるはずだよ?」
「えーっと……」
どうやら、レベルアップをしたと言いたいらしい。
なら見てみましょう。ステータスはっと……。
【日端京香】人間 LV.2
HP:1104
MP:1471
攻撃力:3146
防御力:46
魔法攻撃力:4009
魔法防御力:321
素早さ:5412
アビリティ
<アンギールの加護><サラマンドラの加護><ネツァムの加護>
スキル
<アンガースマッシュ><フレイムショット><アンガーフレイム><フレアスライス><ネツァムフレア>
称号
<世界の敵対者>
おお、上がってる、結構!
それに、アビリティ……加護の人(?)が増えて、スキルも増えてる!
称号はこれだけどねー。
「でも、本当にすごいものの加護を受けてるよ、京香ちゃん」
「え?」
にこにこしながら言う睦月は、自分のことのように嬉しそうだ。
「だって、ネツァムこそ……この世界の創造神なんだからさ」
***
ネツァム
――この世界における、創造神。その加護を受けしものは、すべてを意のままに操ることができる。制御して、元の種族に溶け込むこともできる。
***
「え……ええぇえぇえっ!?」
どうやら私は、チートらしいです。