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3 転移しました

先生登場。ですが、以降出てくる予定はほぼありません。

そして、転移です。

 光がようやく収まったころ……私は目を開いた。

 ぱちぱちと瞬きをするものの、特に異常はない。

 さっきまでの目が眩むほどの光が逆に信じられないくらいだ。


「へ……何?」

「ん……何だか、周りが光って……」


 それは睦月も一緒だったようだ。

 いつもより輪をかけたようにぼんやりしている。

 雲雀はというと……やたら困惑しているようだ。

 ……何やってんだ、こいつ。


「ちょ、ちょっと見てくださいっす、お二方!」

「どうしたの、雲雀……」


 あ、完全にテンパってるわこいつ。

 こういう時の雲雀って意外と役に立たない。

 何か異様なことがあるとテンションをあげるタイプだと思われがちだが、意外と繊細なのだ。


「外、外!!」

「外がどうかしたって……え!?」


 雲雀は窓を指さしながら何というか笑えるくらいがたがたしてる。

 おーい。びびりなのはわかるけれども、もうちょっと落ち着こうよ。

 ……とはいえ、ここで追撃をかけるのはあまりにもあまりだ。

 何より……私自身、外の景色に圧倒された。


「何、これ……」


 窓の外に広がっていたのは、どう考えても学校の敷地内ではない景色。

 石造りの床、荘厳な柱。あたりに瞬くのは魔法陣のような光。


「わー、神殿みたいだねえ」


 睦月は多少落ち着きを取り戻したようだが、あんたはあんたでのんびりしすぎたっ!

 雲雀はまだテンパってるし……私も外を確認しておいた方がいいかな……?


「少しは静かにしてよ……今、寝てるし……」

「勤務中でしょ、この馬鹿教師!」


 保健室の先生は、相崎美佐子。

 ダウナーな感じの女性で、でもやる時はやるというハイスペックな先生だ。

 男子生徒が何人も告白してそのたびにふられては寝込んでいるのを私はよく知っている。


「あー、あれじゃない? 気づけば異世界にいましたとかそんな感じの」


 え、何言ってんの、この先生……。

 あー、何か異世界トリップとか結構あるよね。

 でも、転生とかそういったものは割とよく睦月に見せてもらったけれど、こんな風になる時ってあるんだ……。

 って、異世界って……そんなのあるのかな、本当に。


「ボケてんの?」

「……そういうこと言う? 相変わらず口悪いね、京香」

「…………」


 つーか誰のせいだ!

 私はあんたに色々相談に乗ってもらったけれども、そのせいで礼儀正しかった私は過去のものとなったくらいにあんたの口が悪かったんだぞ!


「京香ちゃん、そういう言い方は……あまり……それに、今のこの状況が、僕は気になるな」

「そうね……わかるように説明してくれる? 先生」


 とはいえ、睦月の言うことも一理ある。

 でも、そのためにはわかるように説明してほしい。

 異世界トリップなんてことが本当に起きるのか。

 ……先生だから知ってるじゃという気になるのは何でだろうか。


「そんなの、外にいる連中に聞きゃあいいでしょ。私は寝るから。あんたは好きなようにやりな」

「ちょ……こいつ……!」


 だが、丸投げである。これでこそダウナー相崎という異名を取っただけのことはある。

 やっぱりこうなるか~……。


「じゃあ……これから先のこと、私は絶対にうまくいかないだろうから、あんたに任せる」

「え?」


 それは相崎先生らしくなく、それは自信なさげな声だ。

 ……何、いったい……あの相崎先生が私に任せる何て言うなんて……。


「頼むわ、日端」

「…………わかった」


 まあ、そこまで言われちゃ断る理由もないね。

 だけど、知りたいことはある。


「でも……もう一つ教えてくれない?」

「何? 私寝たいんだけど」


 あ、ようやく先生らしくなってきた。

 ……こんな寝たいとか言うのに先生らしいなんて言うなんて変だけど、あくまでも相崎先生らしいっていう意味ね。


「何で……絶対にうまくいかないなんて断言できるの? 相崎先生はさ、どっちかって言わなくても自信家だったじゃん」

「あー、それね……」


 先生は何だか言いにくそうだ。

 言いよどむ先生だったけれども、援護射撃があった。


「それは僕も知りたいかな。先生、何で?」

「あ、俺も知りたいっす!」


 雲雀はともかくとして、睦月がそういう風に食いつくのは珍しい……こともないかな?

 割と好奇心旺盛な方だからね。


「はいはい、わかったわかった。そうがっつかないで」


 お、話してくれるっぽい。こういうところは話がわかる先生だ。


「理由だけど……信じられないことよ。聞いてみる?」

「そりゃ聞くけど……」


 聞かせていただきますよ、当然。


「自分自身に集中してみな。心で念じてみるんだ」

「心で念じる……?」


 って、それだけ!?


「…………」

「もう寝てるみたいだよ、京香ちゃん」


 うーん? 要領得ないけれど、何か判明することを思えばいいのかな?

 何というか、先生は感覚派だからなあ。


 とにかく、集中!


 ……。

 …………。

 ………………。



 すると……。

 ふぉん、という風を切るような音と共に、私の目の前にブルークリアのウインドウが広がった。



【日端京香】人間 LV.1

HP:1054

MP:1411


攻撃力:3096

防御力:34

魔法攻撃力:3809

魔法防御力:298

素早さ:5005


アビリティ

<アンギールの加護><サラマンドラの加護>


スキル

<アンガースマッシュ><フレイムショット><アンガーフレイム>


称号

<未定の異世界人>



「これって……」


 いわゆるステータスという奴だ。

 ゲームとかでよくある……というか、RPGとかでは定番のアレ。


 このステータスだと、紙耐性すぎるものの、この攻撃力と魔法攻撃力、素早さは頭おかしいだろ!

 ……まあ、この世界の平均がどれくらいかはわからないものの、先手必勝・一撃必殺といったような感じだろうか。

 もっとも本当に、一撃で倒せるかどうかはともかくとして。


 どうやら、睦月も雲雀もステータスを出せているようだ。

 二人とも珍しく考え込んでいるような表情をしている。

 無理もないか。私も結構戸惑うし。

 割とゲーム慣れしてるはずなんだけどなあ。


 こうして……このステータスから、私の非日常は始まったのだ。

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