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2 現代にサヨナラ

叔母登場、相変わらず嫌な人ポジション。虐待注意。

ヒーロー登場、友人登場です。

 あー、やっちゃった。

 大見得切ったものの、行き場なんてどこにもない。


 っていうか、何でこんなにいらいらするんだろう。

 んー、おっかしいなー。

 これくらいいつものことだったんだけど……。

 今日はなんか調子悪いや。

 公園にでも行って新聞にくるまって寝ようかな。

 ちょっとは気が晴れるっしょ。


「京香ちゃん?」

「……叔母さん……」


 そんな私の足を止めたのは、叔母さんだった。

 何でいるんだ……とはいっても、私はあまりこの人には強く出れないんだよねー。

 世間体とかあるしさ。

 さすがに叔母さんにまで色々やっちゃうと、おっちゃんおばちゃんもびっくりするだろうし。

 人間、生きていくのに世間体は大事。世知辛い。


「また揉めたの?」

「ま、まあ……」


 揉めたって言っても、一方的に向こうから難癖つけられただけなんですけれどねー。

 それを言うと今度はこの人がブチ切れるので、さらっとスルーする。

 スルー大事。


「一応、家は貸してあげるから……そうね、一週間くらいならいいわよ」

「……ありがとうございます」


 一週間か……その間に日雇いのバイトでもするかな。


「あ、でも……学校に行くときは特別学級にしなさいね」

「……はい」

「大丈夫よ、あそこにいたら一人じゃないわ」


 もちろん……この場合、嫌味でしかなかった。

 「あんたみたいな気狂いは他にもいるのよ」と陰口叩いているのを私は知ってる。

 あー、ムカつく。どいつもこいつもさ。

 気狂いってさ……そこまで言うことなくない?


 まあ、衣食住の住が保証されてるだけマシか……。

 犬小屋よりはねという。

 第一さ、よそ様の子まで貶すのってどうよ。


「あ! 京香ちゃん!」

「ああ? って……あんたか。何の用なの睦月」


 イライラしていた私に話しかけたのは睦月だ。影原睦月。一応幼馴染みで、割と病弱な奴。

 っていうか、毎度毎度よくこいつは私に話しかけられるな……。

 イライラしてる時の私って小さい時に遠足で置き去りにされた時、ワニだとか、熊だとかが逃げていったんだが……。

 その時に蜂の巣をつついてしまったけれども、蜂が襲い掛かってくるかと思ったが、ぼとぼと落ちてびゅーっと逃げていったな、これ……。


「これ、お父さんから」


 そんな私をよそに、白いビニールに赤いタコがプリントされた袋に入った何かいい匂いを漂わせているものを私に渡す。


「たこ焼き……」

「うん! また喧嘩した頃合いだろうからって」


 睦月の親父さんはたこ焼きが好きだ。

 だからからか、よく私や睦月に奢ってくれていた。


「……ありがと」


 これは素直に助かった。

 ……私、睦月に助けられてるなあ……。

 多分、私が思っている以上に。まあ、言わないけどさ。


「睦月さ……特別学級だっけ?」

「え……う、うん」


 叔母さんが陰口を叩いていたのは、他ならぬ睦月に対してだった。

 それがすっごく嫌で……自分でも、自分のこと以上に嫌だった。

 その時は、糞両親以上にぶっ潰してやろうって気になったっけ……。

 それを止めたのは、睦月自身だったんだけれど。


 「いいよ、京香ちゃん」って。

 泣きそうな顔になりながら。


「私も明日はそっち行く」

「ホント!? あははっ、雲雀君も喜ぶよ!」

「あいつはただの愉快犯でしょ」


 雲雀……大前雲雀。

 結構何というかその……個性的な性格で、よく私も振り回されてる。

 ちなみに睦月はそうでもない。

 睦月はアレだ。うん……説明はあまり必要ないかもしれないけれど、天然電波さんだ。


「そういうこと言っちゃ駄目! 仲良くしようよ!」

「はいはい……じゃあ、明日ね」


 こういうところはしっかりしてるのにな。

 ……私もちゃんとしなくちゃ駄目かなあ……。


「うん、明日!」


 この時、私は知る由もなかった。

 その「明日」が……とんでもない形で訪れることを。




 何とか一晩を叔母さんの家で過ごすことができた。

 ちなみに、服は学校指定の制服のままだし、食べ物に至ってはたこ焼き以来食べてない。


「じゃあ、行ってらっしゃいね」

「はい、ありがとうございました。叔母さん」


 当然、朝ごはんなんてものは出ない。

 ……んー、余裕があったらリンゴをくれるおばちゃんいるから、もらえるかな……?


「できれば帰ってこないでちょうだいね」

「……はい」


 こっちも帰りたくなんかねーよ。バーカ。


 あー、何か嫌だなあ。

 家族のこともそうだけど……本当に嫌なことばっかりなんだ。

 だけど、大きな流れは変えられない。変えようがない。

 それこそ、世界全部をひっくり返すような力が必要になる。


 そんな力……この日本でなんかゲットできるわけがない。


 とか無駄なことを思いながら、私は持参した上靴に履き替え、校舎に入る。

 すれ違う生徒は何だかひそひそ話しているものの、別に大したことじゃない。

 保健室は……この廊下を曲がればすぐか。



「いよっ、お嬢、久しぶりっす!」


 廊下を曲がろうとした瞬間、肩を叩かれる。

 力ちょっとは加減しなよ……まあ、景気づけなのは私も知ってるけれど。

 思ったとおり、後ろを振り向いてみればそこには見覚えのある顔があった。


「雲雀……あんた、いたの」


 大前雲雀。

 お調子者で、よく私と睦月を茶化している……が、まあ悪い奴じゃない。

 ……言葉に悪意があるかくらいはわかるからね。


「いやー、旦那から聞いたんすよ~。『京香ちゃんが来るんだ!』ってすーっごく嬉しそうだったっすよ!」

「もういいから、私のことをお嬢って言うのと、睦月のことを旦那って呼ぶのやめない?」

「いーや! これが俺のポリシーなんで!」


 掌をびっと平らに静止させ、何だかきびきびした仕草だ。


「はいはい、保健室行くよ」

「ああっ、お嬢が冷たいっす~!!」


 そんな馬鹿な会話をしながら、私達は保健室の扉を開き、入っていく。


 その時、私達は気づかなかった。

 この扉が……とんでもない世界へとつながることを。


「え」


 声を発したのは誰だったが。

 私か、雲雀か。既に中にいた睦月か、あるいはほとんど寝こけていた保健室の相崎先生か。


 そして私達は、あたりの……つまり、保健室ごと光に包まれて、この地球から「消滅」したのだった。

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