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12 タイムリミット、そして

 夜が明ける。

 タイムリミットだ。


「二人の位置はどうなったかな……?」


 二人の位置を念じて調べてみる。

 これもネツァムの力のひとつだ。

 多分、こっちに連れてきた方がいいんだろうけれど……様子を見てからでもいいかな。


 あれ、これは……?


 二人は、リーラグサ林道にいるみたいだ。

 それも、二人とも合流している。

 よし、あとは私が行くだけ……でも……やっぱり怒るかな?

 私がネツァムの力でいつでも二人を連れ戻すことができるって知ったら……。


「その時はその時だよね……」


 うん、その時は二人に怒られよう。

 二人にだったら怒られても平気。

 ……睦月も雲雀も、意味なく怒る奴じゃない。


 あー、馬鹿だなあ、私。

 さっさと連れて帰って、それでおしまいでよかったのに。

 知らないうちに、この世界に組み込まれてしまったようだ。

 マウガンは、多分その警告だろう。


(大丈夫。帰るし。帰れるから)


 私には、その確信があった。


 そうこうしているうちに、二人を見つけた。

 あ、駄目だ……一瞬だけしか離れていなかったのに、何でこんなに心細かったんだろう。

 あっちの世界では全然大丈夫だと思ったのに。

 やっぱり、一人では生きていけないんだろうなあ……。

 支えられてる。睦月に、雲雀に。


「睦月、雲雀……」


「京香ちゃん!」

「お嬢!」


 二人の前に姿を現したら、二人ともすぐに私のもとに駆け寄ってきた。

 ……ありがたいけれど、これ、誰かが化けていたらどうするつもりだったんだろうか。


「よかったぁ、無事で……」

「まったく……もし、誰かの変装だったらどうするつもりだったの」

「俺達がお嬢を見間違えるはずないっす!」


 自信満々の雲雀に、何だか笑った。

 それが何とも心地よくて……私は二人が大事だということを再認識するのだった。

 睦月の優しさにも、雲雀の明るさにも救われている。


 一人が嫌ってわけじゃない。

 でも……私は多分、一人だと生きられない。

 両親があれだと、生きられないってことはわかる。

 もしも、二人がいなければ、私は壊れていたかもしれない。

 私は強くないから。心が。


「相崎先生と連絡が取れたんす」

「本当?」


 ていうか、そういえば保健室にいるまんまだったよね、あの人……。

 大丈夫かな、と思ったけれども、心配するだけ無駄だろう。

 何でもできる人だったからねー……。


「先生は一足先に元の世界に戻ってるみたい」

「帰れるの?」


 やっぱり何でもできる人だった。

 まあ、私が創造神の力でアタリをつけたから、もしかしたら、先生にもそれに近い、もしくは同じ力を持っていたのかもしれない。


「うん……だけど、いいの?」


 確かに……この世界ではチートがある。

 与えられた力がある。

 今は睦月も雲雀もいる。


 だけど、もしも……もしも、私達より強い奴が敵として出て来たら?

 マウガンのような人が、今度は敵として出てくるなら?


 その時、私は守れるだろうか。

 睦月を、雲雀を、私自身を……。


 正直、自信なんかない。


 だから、私は。


「帰ろう」


 守りたいものができた。

 守りたいものを再確認できた。


 だから……あいつらと向き合って、私自身の答えを示してやる。

 そのためには、この世界じゃ駄目なんだ。


「帰ろうか」

「よしっ……テレポート!」


 そこに、何の感慨もなかった。

 やりたかったゲームを途中で放り投げた感じはしたけれども、それでもかまわなかった。

 家があってこそのゲーム。

 私の家は、あそこではないけれども……。


 あたりが光に包まれ、林道から外れ……私達は、保健室へと戻ってきた。


「うまくいったっすね~」

「この保健室をどうするかだけど……」


 ここまでは想定通り。

 どうやら、保健室の内側から結界がかかっているようで、外から開けられないらしい。

 ほー、相崎先生はこれも見通してたのかな?


 そして、帰る方法は……帰還、というよりは逆召喚。


「召喚できるのならば、逆もできると思うよ」

「なるほどっす」


 そして、それに連なるネツァム。

 この世界の機械仕掛けの神。

 そこからはじき出されたら……私達は、そのことわりどおり、逆召喚される。


「お願い、ネツァム……私は、私達はこの世界の力、この世界で得た力をすべて返す……だから、私達を元の世界に」


 私の呼びかけに、また保健室が光った。



「?」

「ここって……」

「もしかして、帰ってこれた……?」


 私達は、まぶしい光から目を守るようにしていたけれども、急速に光を消えた瞬間、目を開けた。


「うまくいったかな?」

「あ、外! 外見るっす!」


 窓の外に広がっていたのは、見慣れた運動場。

 生徒達の声が聞こえる。

 だけど、保健室自体がなくなったことに気づいていたのだろうか?

 まあ、今となってはどっちでもいいけれど。


「帰ってこれたんだ……」


 それは、短い夢。


 そして……これからをつなぐ……大事な思い出。


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