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いざ、出航!!

遅くなり申し訳ございません。

先週は二日酔いで死んでました…。




 町の外で魔族率いる魔物の群を潰した二日後、僕たちは北の島に行くために港に来ていた。


 ちなみに、昨日は各グループがどうだったのかを報告しあい、残りは町周辺の魔物を討伐して時間を潰した。

 あっ! 僕の単独行動は報告してません。サキに同族と遭ったと言って良いのか判断がつかなかったからだ。



 「こちらが、私たちを乗せてくれる船の船長でギムさん」


 「よろしくお願いします」


 「それで、これが私たちの主、SSランク冒険者のノゾムよ」


 「まさか、SSランクの冒険者をこの目で見ることが出来るなんてな。こちらこそよろしく頼むぜ」


 リンが僕と船長をそれぞれ紹介する。僕たちはお互い握手をする。それにしても、リンの僕に対する紹介の仕方が微妙に酷いような…? もしかして、一昨日の単独行動してた事まだ根に持ってるのかな?


 「SSランクに上がったはかりではありますが、期待に応えられるよう、頑張ります」


 「そんな堅っ苦しい話し方じゃなくていいから、普通にしてくれ」


 「分かり…分かった」


 船長の好意に甘えて、口調を楽にする。


 「それじゃあ、早速だが乗り込んでくれ。こっちの準備は終わってるからな」


 船長に言われるまま、僕たちは船に乗り込む。


 ちなみにこの世界の船は木造の船だ。船体の形は、地球とほぼ同じだけど、どうやってこの質量が浮いているのかと思ったけど、船乗りさんたちの話によると、本人たちも詳しくは知らないらしいけど、何でも、魔石のおかげみたいらしい。流石ファンタジー。


 「それじゃあ、出発だ!!」


 船長は全員が乗り込んだのを確認すると、大きな声で出発を宣言する。そして、他の船乗りたちもその声が聞こえると、返事をする。







 船が港を出発して1時間ほど経った。天候は晴れのまま変わりなく、波も穏やか? で、今のところは順調そのものだ。


 「くつろいでいるところで悪いが、そろそろ戦闘準備をしてくれ」


 僕たちは各々で船旅を満喫していたのだけど、船長のそんな一言が、まったり旅の終わりの合図だった。


 「…何か近付いてきているな。魚かと思っていたけど、実は魔物なのか」


 ん~。陸地と違って、本当に魔物なのか判らないなあ…。


 セシリアでさえ反応しなかったと言うことは、僕と同じくどれが魔物か判らなかったんだろう。


 ちなみに、僕たちが使っている気配察知のスキルは、普段は気にしていないけど、動物や昆虫など生き物全般に適用されている。

 一応、気配の大小ぐらいは判るので、人なのか、獣なのか、虫なのか、魔物なのかは予想はつけられる。

 しかし、海ではそうもいかなかった。原因は、僕たちが海での索敵経験が無いこと。魚と魔物の気配の大きさに差がなさすぎで判断できないのだ。それでも最初の1時間は特に襲われなかったのでこれは魚なのかと勝手に判断した。



 「サハギンだ! 数が多いぞ!」


 船乗りの1人が接近してきた魔物の姿を確認したようだ。


 サハギンとは、陸におけるゴブリンに位置する魔物だ。体長もだいたい50~60㎝程度で、単体ならEランクの冒険者でも倒せる魔物だろう。しかし、それは単体ならの話だ。今、この船に集まってきているサハギンは10や20ではすまない。最初の接近していた群れ以外にも続々と集まってきた。多分200匹はいるんじゃないかな?


 「まずは、ルーたちだけで対処してくれ。どうしても手が回らなそうなら、僕たちが手を貸すから」


 「はい!」


 サハギンの処理はルージュたち新人組にやらせてみる事にした。彼女たちも僕の指示に対して大きな声で返事をし、やる気がある事を示した。


 ルージュたちが戦闘準備を終えると同時に、サハギンたちが次々と海面から飛び出し船の甲板へと着地する。どうやらサハギンには船をどうこうして獲物を海中に引きずり込むと言う知能はないみたいだ。


 甲板は30人いても問題ないぐらいの広さなので、ルージュたちは仲間内で戦闘の邪魔にならないようにある程度離れた位置でサハギンを迎え撃っている。


 フェルは大剣の一振りで複数体を斬り捨て、他の新人たちよりも圧倒的な速度で殲滅していく。


 ネクス、サチェス、リゼットは無理をせず、一匹ずつ確実に息の根を止めている。それに、囲まれないための位置どりもしっかり行っている。


 ネクスたち前衛を補佐するように死角から襲いかかってくるサハギンたちを遊撃ポジションのニーチェとヨーリ、それにオールラウンダーのアジリエとエアルが魔法や飛び道具で牽制したり、時には倒したりと前衛組が孤立しないよう奮闘している。


 ネネ、ナナの2人は、甲板の上に上がってきたサハギンたちではなく、海面にいる方へと魔法を撃ち込み、船に上がる前に数を減らそうと頑張っている。


 ルージュは、ホール、フェリエル、ヴェーラーを召喚して事にあっている。ソリューを召還していないのは、過剰戦力になると判断したのだろう。

 フェリエルを前衛にヴェーラー、ルージュが遊撃、ホールが後衛となり、他の新人たちとは反対側でサハギンたちを殲滅している。


 「私たちの手助けは必要なさそうね」


 「まぁ、初めて戦う魔物で、数が多いとは言え、ゴブリンと同等の強さしかないなら、ルーたちだけで対処してもらわないと」


 リンが新人たちの戦闘に手を出す必要ないと判断して、警戒レベルを一つ落としていた。

 僕は、リンの呟きに返答しながらも辺りに視線を向けてみると、索敵しているセシリア以外はみな、リン同様警戒レベルを落として観戦モードになっていた。

 一方、船乗りさんや船長さんは、ハラハラしながらルーたちの戦闘を見守っている。


 「船長さん。このサハギンの数は多い方なんですか? それとも異常なんですか?」


 「ん? 何だ、そんな事も知らねぇのか?」


 「いやはや、情報収集不足ですみません。 集団で襲ってくるぐらいは聞いていたんですが、実際に目にするのは初めてだから、基準が分からないんですよ」


 僕は船長さんに話しかける事で、ルージュたちの戦闘から気を逸らさせるようと試みる。その試みは成功したみたいで、船長さんは僕の方を向いて質問に答え始めてくれた。


 「普通は多くても10匹程度だ。しかし、ここ1ヶ月で最低でも50匹程度の群れが出るようになったな」


 「ちなみに、最大は?」


 「100~130匹ってところだな。ただ、帰ってきた船の話だ。ここ1ヶ月で帰ってこない船も幾つかあってな、この先の魔物にやられたのか、今日以上のサハギンの群れに沈められたのかは分かんねぇ」


 聞くところによると、海の魔物は、陸から離れれば離れるほど強力になるらしい。今はまだ最弱(サハギン)だけど、島に着くまであと3段階ほど魔物は強くなるようだ。

 とは言っても、3段階目、つまり海で最強クラスの魔物が生息する海域は滅多な事がない限り、魔物と遭遇する事はないらしい。年に1度あるかないかの遭遇率だって。…嫌な予感しかないんですが、気のせいだといいなぁ。


 そうこう話し込んでいるうちに、ルージュたちはサハギンたちを討伐し終えて甲板のお掃除に入っていた。


 「おめぇら、血の臭いで他の魔物が集まる前に、さっさとこの海域を抜けるぞ!」


 『おお!!』


 船長さんの号令で船乗りの人たちは、この海域から離れる為に船を動かす。何人かが風魔法を使っているところを見るに、人為的に追い風を作り船を加速させているみたいだ。


 その後も何度か魔物の襲撃はあったももの、基本的には新人組で対処し、手に負えない魔物の場合だけ僕たちが手を貸す方針で、船旅は続いた。


 そして、問題の最強クラスの魔物が生息する海域へと突入した。


 『……………』


 で、全員絶句である。


 「ねぇ、ノゾム?」


 「ごめん、リン。それ以上は言わないで」


 それ以上現実を突きつけられると、僕立ち直れないよ?


 「最強の海域に入って…いや、入った瞬間に出遭うって、絶対ノゾムのせいよね?」


 「言わないでって言ったじゃんよぉ」


 現在、僕たちはリンの言葉から分かると思うけど、魔物に睨まれている。海の最強クラスの魔物に…だ。


 どうしてこうなった? やっぱり、サハギンの時に船長から聞いた話がフラグになったのか? それとも、リンの言う通り僕の運関連か? いやいや、僕が原因だと言うのも早計だ。今回の件が関係しているかもしれない。何事も決めつけは良くない! よし、そうと決まれば、こいつのステータスを視よう。もしかしたら、隷属状態かもしれないしね。



 【名 前】 ニブルートル

 【年 齢】 313歳

 【種 族】 大陸亀王種

 【職 業】 

 【レベル】 111

 【H P】 271356/271356

 【M P】 14627/14627

 【筋 力】 145218

 【防御力】 442734

 【素早さ】 113692

 【命 中】 356211

 【賢 さ】 382362

 【 運 】 37


 【スキル】

 水魔法LV7 闇魔法LV7 並列思考LV5 ブレスLV5 火耐性LV10 水耐性LV10 威圧LV5 気配察知LV7 音波LV5


 【ユニークスキル】

 水支配(アクアルーラー)


 【固有スキル】

 水纏



 水支配(アクアルーラー)


 水を自在に操るスキル。

 効果範囲は自身の魔力によって変動する。


 水纏

 水を纏っている限り、自身のステータスと回復力が上昇する。





 …これ、なんて無理ゲーなの?


 いやいや、おかしいでしょ!? 何? 大陸亀王種って!? 確かにデカいけどさ!? それだって、50mぐらいだ…よ? それにステータスだって、気軽に戦おうって思えるレベル越えてるよ!?


 「せ、船長? ニブルートルって魔物に聞き覚えは?」


 「に、ニブルートルだ、と?」


 僕は目の前の魔物の数字以外の情報を求めて、船長さんへと問いかける。

 魔物の名前を聞いて、船長さんの顔から血の気が失せた。が、船長さんは、それでも僕の質問に答えてくれた。


 「ニブルートルは、この海…いや、魔物の中でも最強の一角に数えられるほどの魔物で、全長はゆうに500mを超えるほど大きい。だから、目の前にいるこいつは子供だと思う。あと一説によると、ニブルートルが海面に現れた日は海で他の魔物は現れないそうだ」


 これで子供とか、大人はどれだけ強くなるんですか? ってそんな事よりも、これ以上魔物が現れないかもしれないのは有難い。そうと分かれば…。


 「リン、ありったけの魔力で魔法を使って、船を一気に北の島まで送り届けてくれ」


 「ちょっとノゾム? まさか!?」


 さすがリン。僕が何をするか察したようだ。けど、今回は問答している暇なんて無いから、僕は僕のするべき事をする為に船から飛び出す。船から誰かが僕の名前を叫んでいるけど、誰だか分らなかった。






 「『集中豪雷(スコールサンダー)』!!」


 出し惜しみなどせず、最大火力とまではいかなくても、前準備なしで出せる手の中でも最上位に入る雷の合成魔法を先制攻撃でお見舞いする。そして、ダメージの確認もせずに西に向かって空歩を駆使して駆け抜ける。何故、西なのかと言うと、北と南は言わずもがな、陸地があるからだ。東は見た地図で覚えている限りだけど、陸が突き出ている場所があったはずだ。対して西は陸が突き出ている場所もなく海が続いているので誰にも迷惑をかけずに逃げる事が出来るのだ。


 気配察知で背後を確認すると、ニブルートルはこちらに標的を絞ったようだ。リンたちを乗せた船もニブルヘイムがこっちに向かって移動したので、北へと移動し始めている。


 「あとは、引き付け続けるだけか」


 僕は、西に向かっていた進路を真上に変更し空を駆け上がる。それと同時に、アイテムボックスから赤い紙の束を取り出す。そして、かなりの上空まで昇ったところで取り出していた紙の束を広げる。

 実はこの赤い紙の束、以前使用したドーピングマジックで触媒として使った僕の血を含ませた紙を魔法陣の形になるように糸で繋いだものだ。これを海面に向ける。


 「とっておきだ! 『流星群(メテオスウォーム)!!!』」


 切り札の一つ、3種(・・)合成魔法の流星群(メテオスウォーム)。火、土、水の3属性の魔法を合成、さらにドーピングマジックを使う事でやっと使える魔法だ。

 流星群(メテオスウォーム)は、遥か上空より無数の隕石が降り注いてくる魔法なので、火、土、水の属性ダメージ以上に上空から落ちてきたと言う物理ダメージの方が高い魔法となている。


 正直、3種合成は、消費魔力もさることながら、それ以上に繊細な魔力操作が必要な為、並列思考を魔法以外に3つ使わないと出来ない作業なので、今回、上手く発動してくれて本当に助かった。


 「GIGYAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」


 どうやら、ダメージを与える事には成功しているようだ。…もしかして、今吸血のチャンス?


 思い立ったが吉日で、僕はいまだ降り注いでいる隕石に紛れてニブルートルの首に降り立つ。そして、その首に牙を立てる。


 …


 ………



 …………………




 ………………………………







 ……………………………………………気付かれずに終わってしまった。



 それと同時に降り注いでいた隕石も終わってしまったので、僕は急いでその場から離脱し、再度西へと駆け出す。その際、ニブルートルの目の前を通る事を忘れない。


 「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」


 僕を見つけたニブルートルは怒りの雄叫びをあげながら僕を追いかけ始める。


 流石にスキルを失っても基礎能力が高いで引き離せない。しかし、現状を鑑みれば、そう悪くもない。このまま北の島付近から引き離してやる。




 全力で駆けて10分ほどが経った。距離にしたら50㎞ぐらいかな? そろそろ、この追いかけっこを終わりにしようかな。っと、それじゃあ、早速新スキルの水支配(アクアルーラー)を試しますか。


 僕は振り返り、ニブルートルを視界に納める。そして…


 「海よ割れろ!!」


 「GIッ!? GAAAAAAAAAAAAAAAA………AA…………A………」


 ニブルートルの周辺の海をどかした。それはもうある程度の魔力を残して以外は全力で!


 結果として、ニブルートルは海なのに空中に放り出されると言う貴重な体験をし、海底に向かって真っ逆さまに落ちていった。


 「ハァハァ…。この、残魔力で、リンたちと別れた場所まで行くのは厳しいか…。しょがない、ここから最短の場所に上陸するか」


 ニブルートルを何とか退けた僕は、ふらふらになりながらも、単独で北の島に上陸する為に、進路を北東へと向け空を蹴ってその場を後にした。



ありがとうございました。


本作品とは無関係ですが、現在新作の構想を練っております。

そんな事するのは、本作品を完結させてからにしろとか思うかもしれませんが、許してください。

とは言っても、投稿自体はまだまだ先の話ですので!!

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