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魔法を覚えよう




 お昼過ぎに王都を出発した僕たちは街道をひたすら東に進んでいる。最初の目的地は東にある港町ターニンになった。

 商人の乗っている馬車もたまに見かけるが、僕たちの交通手段は徒歩だ。

 ステータス数値に任せて走れば多分1日で走破できそうだけど、相方のリンに「そんなのは旅じゃないから嫌よ!!」と言われ歩く事に。






 「そう言えば、リンはちゃんと旅の買い出ししてきたんだよね? その割には手ぶらのような気がするんだけど…」


 「荷物? それならアイテムボックスに入れてあるから問題ないわよ?」


 「アイテムボックス? それって物をしまっておける道具のこと?」



 ゲームでは定番のアイテムだけど、それすら持っている様子がないんだけど?



 「道具じゃないわよ。アイテムボックスは無の魔法よ。ただし、魔法のレベル次第で入る量が変わってしまうものよ」


 「さすが魔法。なんでもありだね。ちなみに無の魔法なら僕でもってすぐ習得できる?」


 「うーん。今のノゾムなら出来るかなぁ? 試しにやってみる?」


 「魔法が使えるようになるんなら使いたいから、やってみようかな?」



 やっぱり魔法がある世界にきたんだから、魔法は覚えたいよね。



 「それなら最初は、自分の中にある魔力を感じられるようになるところから始めましょうか」


 「どうやって?」



 そんないきなり言われても出来ませんよ?



 「どうって言われても、感覚的な事だから、感じ方は人それぞれなのよね。私の場合は体の中を血液とは違うものが流れている感じかしら?」



 言葉だけじゃ難しそうだなぁ…裏技的なものはないかなぁ。…そうだ!


 「ねぇ、もう一度魔法を見せて。さっきとは違うのでもいいからさ」



 「? …別にいいわよ。『ファイアボール』!」



 僕がリンにお願いして、魔法を実演してもらった。

 術名を唱えたリンの手のひらにハンドボールサイズの火の玉が現れた。

 ふむふむ、これが…。よし、あとは。



 「よし、観察スキルで魔力を視認しよう」


 「えっ? 今なんて言ったの? 観察スキルで魔力を視る? いくらノゾムの観察スキルが特別だからって、自身が感じる事の出来てない魔力を視る事なんて…」


 「よし、視えた! …………おっ? 視えた事で魔力が体の中にあるって事が認識できるようになった!」



 予想通りにいってよかった、よかった。



 「…ノゾム。どうして魔力を知らないあなたが、いきなり魔力を視れるのよ!?」



 「簡単な事だよ。さっきリンに『ファイアボール』を出してもらった時に観察スキルで『ファイアボールを構成している魔力』を視たんだよ。で、自分の体の中にそれに近い存在を観察スキルで見つけたって訳」



 「うそ…。ノゾム…、あなたの貰ったスキルって、なんでもありなのね…」



 そんなに驚く事かな? 特別製なんだからこれぐらい出来て当たり前のような気がするんだけど。



 「まぁ、魔力を感じる事が出来たなら次は魔力を手のひらに集める練習よ」


 「その前にさ、魔力を感じられるようになって気づいたんだけど、魔力って全身を駆け巡ってるの?」


 「それはヴァンパイアだけよ。ヴァンパイアは魔力が血と一緒に全身を巡っているの。それが固有スキルの身体強化の正体よ」



 そんな仕組みになってたんだ。…ん? それなら、それ()を魔法の媒体に使えれば…。



 「なるほどね。ちなみに魔力を手のひらに集めるのって、どれくらいで出来るようになるものなの?」


 「ここから一番近い町に着くまでには余裕でしょうね」



 一番近い町って確かここから徒歩で1日ぐらいだったような?

 ん~、頑張ればもう少し早く出来るようになるかな?





 それから僕はかなり集中したお陰なのか、3時間後ぐらいには手のひらに魔力を集められるようになったけど…


 「ねぇリン、機嫌直してよ」


 「つーん!! ノゾムったら私に周囲の警戒ばっかやらして自分は練習に没頭するなんて。私の話は無視するし」



 リンに色んな事を任せすぎてへそを曲げちゃった。

 とりあえず、機嫌を直してもらわないと…



 「リン、キミのお願いをあとで聞くから機嫌直してよ」


 「…お願い? それって、どんなことでも?」


 「で、できれば、無理のない範囲でお願いしたいかな?」


 「……じゃあ、許す」



 なんとか、納得してくれたみたい。だけど、あとで何をお願いされるのか?



 「それじゃあ、次は魔力を手のひらに集め術名を唱えるだけよ。灯りを点すのは『ライト』、体を綺麗にするのは『クリーン』、アイテムボックスは『オープン』よ」


 機嫌の直ったリンは、魔法のレクチャーを再開してくれた。


 よし、とりあえずやってみよう。



 「えーっと『ライト』!」


 「ちょっと、ノゾム!? まぶしい! 魔力の使い過ぎよ!! なんでまだ日も落ちていないのに、それより明るくするのよ!?」


 僕自身も眩しくては目を開けていられなくなって、魔法の発動を止めた。

 うーん。流石に初めての魔法だから勝手が分からないなぁ…。



 「もう、まだ目がチカチカするわよ。ノゾムが今、攻撃系の魔法の練習をしていなくて助かったわ。今の感じだと、LV1クラスでも威力はLV7ぐらいになるんじゃないかしら?」


 「そんなにっ!?」


 「そんなに、よ!! ノゾムは無駄にMPがあるから、それが原因ね。もう少し魔力の感覚を覚えないと攻撃系は練習出来ないわね」


 「今の状態で練習すると、どうなる?」


 「うーん…、多分だけど、最悪災害が起こるんじゃないかしら?」


 えぇ~!? さすがにそれは不味いなぁ…。早いところ最低限のコントロールを覚えないと。とりあえず、さっきみたくスキルを使って効率よくコントロールを覚えられるかな? 魔力コントロール…魔力が多すぎる…魔力の量? そうだ! ヴァンパイアのスキルなら魔力量がある程度分かるから、それを上手く使えば…。



 そのまま試行錯誤して魔力コントロールを練習していると、日が落ちる頃にはなんとかコントロールが出来るようになりました。今回は練習に没頭しすぎないないようにもして、リンの機嫌を損ねないようにしました。




 日も落ちてきたので、野営の準備をしてご飯を食べた後は、リンと交代で火の番をする事になった。1人でボーっと火の番をしているのも時間の無駄なので、各属性の魔法の事をリンに聞いたら、「これを読んで魔力を各属性に変換する練習して」と魔術書を山のように渡されました。


 何でも、各属性の魔法を使うには魔力に属性を持たせないと詠唱しても魔法は発動しないらしい。


 あれから2時間ぐらいで火、水、風、土への魔力変換はすぐ出来るようになったけど、光と闇は上手く出来ないんだよなぁ。代わりに試しでやってみた氷と雷が出来たけど、これはどの属性なんだろう? 火、水、風、土、氷、雷は魔力を科学の要領でイメージしながら使ったらすぐ出来たんだけど、光と闇は勝手が違うっぽい。とりあえず、光と闇は後に回して、各属性って混ぜられたら面白そうだからそれに挑戦してみよう。




 そろそろ、交代の時間か…

 なんとか出来たけど、リンを起こさないように威力を抑えに抑えたから、実際の威力がどれだけあるのか分からないんだよなぁ…

 こればっかりはぶっつけ本番で試すしかないか。

 そっちの方がリンもびっくりするだろうしね。




 翌朝、ターニンに向けて出発した僕たちだったけど、リンが思い出したように聞いてきた。



 「そう言えば昨夜、なにやら色々やっていたみたいだけど、どうだったの?」


 「一応、光と闇と回復以外は成功させたよ!」


 「はい? 嘘でしょ? まだ魔法を練習して1日も経っていないのよ?」


 「本当だよ。なんなら、ステータス見る?」


 自分でもステータスに、ちゃんと反映されているか確認の為に実演する方法ではなく、ステータスを見る方法を選択した。



【名 前】 ノゾム・サエキ

【年 齢】 17歳

【種 族】 ヴァンパイア

【職 業】

【レベル】 1

【H P】 17867598/17867598

【M P】 57912863219/57912863400

【筋 力】 7589431 

【防御力】 6207259 

【素早さ】 5988233 

【命 中】 6542907 

【賢 さ】 7321784 

【 運 】 100~0


【スキル】

異世界言語 火魔法LV1 水魔法LV1 風魔法LV1 土魔法LV1 氷魔法LV1 雷魔法LV1 無魔法LV1 魔法合成 気絶耐性LV2 直感LV2 観察 


【固有スキル】

ヴァンパイア 吸血 再生


 ステータスがちゃんと表示されるようになってる! と、現実逃避していると…。


 「ねぇノゾム。いくつか質問があるのだけどいいわよね?」


 「もちろん!」


 むしろこのまま質問されない方がいやですよ!



 「それじゃあ、まずはノゾム? 昨日、私が教えた魔法の属性を言ってみて」


 「えっと、火、水、土、風、光、闇、回復、無だよね?」


 「そうよ、その8属性が現在確認されている魔法の属性よ! なのにノゾムは、昨夜の間に2属性増やしているのよ! あなた本当に魔法のない世界から来たの? それに詠唱は?」


 確かにそう思われてもおかしくはないけど、それを説明するにも、この世界じゃ科学が発達していないから、原子の事を話してもなぁ…。まぁ、ある程度は誤魔化すしかないかな?


 「実は、魔力を各属性に変換出来るようになっただけで詠唱までは…。だから氷と雷については説明しづらいんだよね…」


 「それに魔法合成って何? 私そんな事出来るなんて、聞いたことなかったんだけど?」


 「そっちは説明出来るよ。簡単に言うと、同レベルの2つの魔法を、同じ魔力量にすると合成出来るようになるんだよ。ちなみに魔力量の測定には、ヴァンパイアスキルを活用したから、リンでも出来るようになるとは思うよ?」


 説明すると、リンは驚きを通り越して呆れていた。


 「あなたは能力だけ特別なのかと思ったら、発想の方も人とは違うのね…。それにしても、同レベルで同じ魔力量が条件なら出来ないのは当たり前ね。ちなみに合成魔法の威力はどれぐらいなの?」


 「それがまだちゃんとしたのは使ってないんだよ。全て昨夜の火の番の最中に練習したからさ」


 「それならその威力は本番までの楽しみにしておきましょう。そのうち魔物にも遭うでしょうしね」


 楽しみのような怖いような‥


 「って魔物? 僕は魔物と遭えないんじゃ?」


 「それなんだけど、魔法を使えるようになったお陰で、ノゾムの魔力が流れ出ていたのも止まったみたい。だからこれからは魔物も襲ってくるわよ」


 うーん、嬉しいような悲しいような…。

 まぁこれでレベルが上げられる様になったと思えばいいか。


 「ねぇノゾム? あと半日も歩けば小さな町に着くわ。だから、それまで魔法合成を教えてくれないかしら?」


 「ならそのかわりに闇魔法を教えてくれないかな? あれと光と回復はよく分からなくて…」


 「いいわよ。どちらが先に習得するか競争ね!」


 そうして、僕たちはのんびりと最初の町へと歩いていく事にしました。





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