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海を越える準備2




 -サキ-


 あたしたち今は、獣人たちの住む北の島に向かう準備の為に、3グループに分かれて行動している。あたしたちのグループは、買い出し担当。


 「アイラ様は、ちゃんと情報を集める事が出来るのかしら?」


 買い出しの最中にもかかわらず、イリスさんは別グループになってしまったアイラさんの心配ばかりしてわたわたしている。

 実は、イリスさんがこうなるのは今回が初めてではない。アイラさんと別行動になると、だいたいこんな感じになってしまう。普段の一歩引いた感じであたしたちを見てくれているお姉さんって、イメージが一気に壊れる一幕だったりする。あたしとしては、こちらのイリスさんの方が親しみやすいから好きなんだけどなぁ。


 「そんなに気になるなら、ノゾム君に頼んで、アイラさんと同じグループにしてもらえばよかったんじゃないの?」


 「以前頼んだ事があるけど、その時はアイラ様に『いい加減、私離れをしなさい!』って怒られた事があるのよ…」


 …確かに、これだけ過保護にされたらあたしでも嫌だなぁ。


 「それなら、少しはアイラさんを信じたら? あの人だって、あたしたちと合流するまでは、ルーと2人で旅してたんだしさ」


 「それは、そうだけど…。でも、あの人って、意外と無茶するから心配なのよ」


 「あたしたちは、出逢って間もないからよく分からないんだけど、過去に何をしたら、そこまで信用できなくなるの?」


 一向に信じて待つの精神にならないイリスさんに、あたしの好奇心が疼いてしまい、過去のアイラさんについて聞いてしまった。


 「色々あるけど、やっぱり一番は、管理神が創った異世界召喚システムに割り込んで、主様と密会した事かしらね」


 「話には聴いていたけど、それってやっぱりかなりの無茶だったんだ」


 「そうよ。バレたら最悪、死刑よ。神の地位剥奪だけで済んだのは奇跡よ! この世界で再会した時に、理由を聞いた私は卒倒しかけたのよ!」


 本来なら奇跡を起こす側にいるとされる、神や天使族が奇跡に喜ぶ姿に、あたしは苦笑いしてしまう。


 その後も、イリスさんのアイラさんの無茶伝を聞きながら、買い物を進める。あたしたちのグループは5人なので、二手に分かれて買い物をしている。向こうは新人組だけど、貴重な男手であるフェル君とネクスがいるから大丈夫だと思う。



 「う~ん…。何か、品が少なくないですか?」


 「言われてみればそうね。魚関係は全然ね。それに、どこか活気に欠けるようにも思えるわね」


 「魚関係は海に原因があるとしても、他の物はどうしてだ?」


 「もしかして、北の島から仕入れていたのかしら?」


 「そうだとすると、仕入れられない状況って事? つまり、海に何らかしらかの異変が起きているって事だよね?」


 「そうなるわね。そうなると、海越えは少し面倒くさい事になりそうね」


 「そうだね。けど、それよりも、この町は今のこの状況に対して何か対策をとらないのかなって思うんだよね」


 物がなければ、人は集まらない。人が集まらなければ、活気は生まれない。

 このままだと、この町から人はいなくなってしまうと思うんだけどなぁ?


 「まぁ、その辺りはアイラさんたちが調べてくれると信じて、あたしたちは買い出しを続けようか」


 「…アイラ様、大丈夫かしら」


 あっ、ついアイラさんの名前をだしちゃった。


 再び過保護? モードになったイリスさんをどうやって復活させようか考えるあたしに、悪夢が襲いかかる。


 「…サキ?」


 「はい? …えっ?」


 名前を呼ばれたあたしは、声がした方へと振り向き、あたしの名前を呼んだ女性を見て、頭の中が真っ白になってしまった。


 「やっぱりサキだ。あんたが感情を出してるところを見るのが久々だったから、一瞬人違いかと思っちゃったよ」


 そう言って悪意に満ちた笑みを浮かべるのは、あたしが魔族にいた時の知り合いだ。名前はフィーリー。同世代と言うこともあってか、あたしの事を人一倍虐めてきたヤツだ。


 肌や髪の色は違うけど、あの悪意に満ちた笑みは間違いない。あの笑みにどれたけ恐怖を植え付けられたか…。今も震えが止まらない。けど、それを表には出さないように努力をする。


 あたしのそんな努力には気付かないのか、フィーリーの奴はあの笑みのままあたしに話しかけてくる。


 「あんた、1年前の任務で死んだもんだと思っていたんだけど、生きていたんだね」


 「…おかげさまで」


 「それなら、何で1年も音信不通だったんだい?」


 「そ、それは…」


 どう答えようか迷い、一瞬言葉が詰まると、彼女はとても面白そうな物を見る目で、あたしの言葉を遮ってきた。


 「あぁ! あんた、奴隷に堕ちたのね。だから、戻らなかったんだ。そうなると、さっきまでの感情のある顔は、飼い主のお陰かしら? もしかして、抱かれたの? ヒトとして扱ってもらえたのが嬉しかったの?」


 違う! そんなんじゃない!


 「どうせあんたの飼い主は、あんたがちょっと可愛いからお情けをかけてあげただけでしょ? あんた、見た目だけはいいからね。その証拠に、そっちの奴隷も同僚なんでしょ? あんたじゃ満足できないから、他にも奴隷を買ってるんでしょ?」


 だから、違う! ノゾム君はそんな人じゃない!! あたしのご主人様(ノゾム君)を知らないくせに、好き勝手語るな!


 いつの間にか、あたしはトラウマからの震えではなく、怒りによる震えを我慢していた。あたしが何を言われても我慢しているのを察してくれているからなのか、イリスさんは何も言わずにいてくれている。


 そんなイリスさんに心の中で感謝をしながら、フィーリーに応えてくれるかは分からないけど、質問してみる。


 「あ、あなたは、どうしてこの町にいるの? そんな変装までして」


 「…あんたみたいな家畜でも、いるだけマシか。あんた、飼い主を連れて北の島に来なさい。自由にしてあげるわ」


 「あたしの質問に答えて!」


 ノゾム君の事を好き勝手言われた怒りと、あたしの質問に対して、勝手に話を結論から話すフィーリーについ大きな声を出してしまった。


 「うっさいなぁ。あんた、自分の立場を忘れだの? そこら辺、もう一度躾直さないとダメかしら?」


 フィーリーは、嫌らしい笑みを浮かべる。…多分、あたしをどう虐めるか想像しているんだろう。しかし、あたしはその笑顔の圧力に負けないよう、一度息を吐き出して気持ちを落ち着かせ、しっかりと彼女の目を見つめる。


 「…チッ。えぇっと? 変装までしてここにいる理由だっけ? これから北で騒動を起こすのよ。その為に、魔族が何人か派遣されたのよ。ちなみに、この変装は魔法道具によるものよ。髪と肌の色を変えれるけど、一日毎に魔力を補充しないといけないのが難点ね」


 どうやら、今回の件は魔族が関わっているみたい。、もしかしたら魔人も関わっているかも…。それにしても、聞いてもないのに変装に関する情報まで喋るとは思わなかった。これからは、人前で余計な話はしない方がいいかもしれない。アイツの言う魔法道具のせいで魔族がどこにいるのか分からなくなったから。


 「それって、魔族の独断? それとも…」


 「あんたはそんな事知らなくていいんだよ!」


 あたしが、今回の件の首謀者について聞こうしたら、その言葉をフィーリーが遮った。アイツの性格からして、魔族だけの事だったら今のタイミングであたしの言葉を遮らずに、むしろ自慢するはずだ。それをしないと言う事は、今回の件、魔人が関わっている事になる。

 どうやら、今回の件はあたしたちが思っている以上に大変な事かもしれない。


 「そろそろ、私は行くわ。あんたもちゃんと飼い主を連れてくるのよ。一応、2週間は待ってあげる。それを過ぎても現れなかったら、この仕事が終わったら必ず見つけ出し、教育し直してあ・げ・る」


 フィーリーは嫌な笑みを張り付けたままそう言って立ち去ろうとする。そんな彼女にあたしは、最後の質問を投げつける。


 「ねぇ? あたしたち、これだけ大きな声で話しているのに、何故、他の人たちはあたいたちに興味の視線一つも寄越さないの?」


 「…そんなもん、魔法に決まってるでしょ? エアシールドの多重展開。ただそれだけよ」


 そう言って彼女は今度こそこの場を後にした。






 「はぁ~~~」


 「大丈夫?」


 フィーリーが去った事で、あたしの中で緊張の糸が切れてしまいその場にしゃがみ込んでしまった。イリスさんが心配そうにあたしに手を差し伸べてくれる。

 あたしはその手を取り、立ち上がる。


 「ありがとう。もう大丈夫。…それにしても、色々と情報が手に入っちゃったね」


 「それも、情報収集組では手に入らなさそうな重要なのを…ね」


 「あははは~…」


 あたしは、乾いた声しか出てこない。


 「それで、どうするの?」


 イリスさんは色々とあたしに聞きたい事があると思う。しかし、それを我慢してその一言を口にしたんだと、あたしは感じた。


 「まぁ、元々島には行く予定でしたから問題はないからいいでしょ。それ以外の事は、ノゾム君に報告はするよ。あとは、…あたしに任せて下さい」


 「そぅ。なら、よろしくね」


 えぇ、必ず…。

ありがとうございます。


君の名は。見ました。いや~、瀧と三葉は尊いッス。

あと、何故か、映画を見た後は、創作意欲が凄く湧いてきます。しかし、意欲がわくだけで、実力が向上する訳ではないんです気が無いんですけどね。

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