ギルドにて
第2章のスタートです。
2日間ぶりの王都が見えてきたけど、気になったことがあったので、一緒に旅をする相方であるリンスレットに聞いてみた。
「そういえば、リンスレットって身分証持っているの?」
「ん?私ないわよ?」
「いやいや、ヴァンパイアって事は隠してるんじゃないの!?」
あれ?だからこの人、隠れてたんだよね?
「もちろん隠しているわ。はい、私のステータス」
【名 前】 リンスレット
【年 齢】 17歳
【種 族】 ヒト
【職 業】 魔術師
【レベル】 5
【H P】 236/236
【M P】 348/348
【筋 力】 59
【防御力】 64
【素早さ】 75
【命 中】 69
【賢 さ】 93
【 運 】 31
【スキル】
火魔法LV1
「いやいや、このステータス絶対に嘘でしょ? 筋力なんてどう考えても、もっと馬鹿力で…いえ、ナンデモナイデス」
この人、睨んできたよ。しかも初めて会った時よりも敵意があったんですが…
「ノゾムったら特別製の観察持ってるのに、まだ私のステータス視たことなかったの? 私はとっくに視られていたのかと思っていたわよ」
「そうゆうのって勝手に視ちゃだめと思っていたからさ。だから自分以外には今まで使ってなかったなぁ」
そんな事を言う僕にリンスレットはあからさまにため息をついた。
「あなたねぇ…。気付かれなければいいのだから、どんどん使わないと勿体無いわよ?」
「じゃあ、リンスレットのステータス視るね」
【名 前】 リンスレット
【年 齢】 17歳
【種 族】 ヴァンパイア
【職 業】 魔術師
【レベル】 10
【H P】 3741/3741
【M P】 12350/12350
【筋 力】 3871
【防御力】 2178
【素早さ】 2632
【命 中】 2987
【賢 さ】 4781
【 運 】 31
【スキル】
火魔法LV8 水魔法LV7 風魔法LV7 土魔法LV6 闇魔法LV9 無魔法LV9 詠唱破棄 偽装
【固有スキル】
ヴァンパイア
【ユニークスキル】
魔眼
やっぱり筋力は…
「なにか、よからぬ事考えてない?」
「そ、そんな事ないよ!?」
ちょっと勘良すぎでしょ!
それにしても偽装スキルか、これでさっきのステータスにしたんだな。
「ん? ねぇリンスレット。偽装スキル持っているなら王都でも生活出来たんじゃない?」
「それがそうでもなかったのよ。偽装スキルも完璧ではないの。高位の観察系スキルで視られたら、即ばれちゃうのよ。だから街には、いたくなかったの」
「そんなスキルもあるんだ。…あと気になったんだけど、スキルのレベルって最大いくつなの?」
「スキルレベル? それなら最大は10よ。基本的に1~3が下級、4~6が中級、7~9が上級、10が特級になっているわ。魔法はそれとは違って、1~2が下級、3~4が中級、5~6が上級、7~8が特級、9が伝説級、10が神級となってるの」
「そうなるとリンスレットって…」
「使える魔法は大体が、特級って事になるわね」
「ちなみに魔法の属性とスキルの一般人レベルは?」
「昔に聞いた話だと、火、水、土、風、光、闇、回復が確認されているらしいわ。無は誰でも使える生活に便利な魔法が大半の属性よ。あとスキルのレベルは、冒険者でスキルレベルが7があればAにはなれるらしいわ。魔法なら、レベル6あれば、国のお抱えになれるレベルだって」
マジですか…
光と回復以外が使えて、その上詠唱破棄まで持ってるんだから、リンスレットさん恐ろしい。
冒険者ランクにしたらSは超えてんじゃないかな?
「言っておくけど、ノゾムはそんな私を超えてるからね。ランクにしたらノゾムはSSS超えよ! まぁ、今は制限があるからSぐらいでしょうけどね」
「ですよねー」
考えが読まれた!! 魔眼は使ってないから、顔に出ていたのかな?
「そんなことよりも、早く王都に行きましょ。ギルドにお店にお城と回る所は多いわよ」
「それなら最初にギルドに依頼の報告しに行こう。偽造が出来るならついでに冒険者登録する?」
「うーん…。ここでは止めておくわ。王国と帝国で登録するぐらいなら、自由都市で登録したほうがリスクは少ないのよ」
「自由都市って確か、冒険者ギルドが統治している街だよね? 王国と帝国のどちらにも属していない第三勢力の」
三国には数えられていないけど、軍事力は三国に匹敵するって話らしい。
ちなみに三国の最後の一つは魔族が統治している魔国だ。
この魔国は王国と帝国のある大陸の南にあり、海を渡らないと行けない国だ。
「その自由都市よ。だから王国で高いリスクを払ってまで登録する必要はないわ」
「なるほど。そうゆうことならさっさと街にはいりますか」
僕はリンスレットが街に入る為のお金を支払うと、そのままギルドに向かう為にリンスレットにこれからの行動についての話を持ち出した。
「これからギルドに行って、その後城に顔を出すから、リンスレットはその間に買出しをお願いできないかな?」
「…………嫌! 何故かギルドには、ついていった方がいいような気がする」
「いいようなって、特に何もないよ? 依頼の報告だけだからすぐ終わるし…」
「いいえ、女の勘がノゾム1人で行かせるなって言っているわ。だからついて行く!!」
女の勘って何ですか? まぁ、ここで言い合っても時間が勿体無いし、ギルドの用事が終わればリンスレットの気も済むかな?
「わかったよ。じゃあこっちだからついて来て」
リンスレットと一緒にギルドに入ったらやっぱり他の冒険者が『迷子が帰ってきた』だの騒ぎ始めた。
特に酷いのだと『2日振りにギルドに辿り着いたか』ってのが聞こえたけど、僕は方向音痴ではないですやい。
そしていつものお姉さんにも…
「ノゾムさん、お久しぶりです。今回はずいぶんとギリギリでしたね? まさか今まで迷子になっていたのでは?」
「そんなはずないじゃないですか。はい、依頼の品です」
僕はお姉さんの話を流しながら依頼の品を渡したんだけど、後ろからとんでもなく冷たい視線を感じるんですが…
僕は怖くて後ろを確認できないままお姉さんとの会話を続けることにした。
「そうそう。僕、王都を離れる事にしたんで、この依頼が王都での、最後の依頼になるんですよ」
「そうなんですか? 奇遇ですね。私もギルド本部に呼び出されてしまったので、明日には王都を出るんです」
「へ~、偶然ですね。じゃあ今度会うのは自由都市のギルド本部ですね」
あれ? もう一段視線が冷たくなった気が…
そう思っていたら、僕の後ろにいたはずのリンスレットが僕の前に出て、お姉さんとにらみ合いを始めたんですが!?
お姉さんに至っては、僕の後ろで睨んでいたリンスレットが見えていたはずなのに、よく平然としていられますね。
そんな風にわたわたしている僕へ、お姉さんはリンスレットの事を聞いてくる。
「ノゾムさん、彼女はノゾムさんのなんですか?」
しかも聞き方が若干変なんですが…。
「彼女はリンスレットって言います」
「そ れ だ け ?」
いやいやリンスレットさんや、僕があえてスルーしたモノになぜこだわるんです?
「僕の大切な(旅の)相方です」
そう言うとリンスレットは満足したようだ…。小声の部分は聞こえてないみたいで安心安心。
しかし代わりに周りの冒険者たちから刺すような視線が…
そしてお姉さん的にも、面白くなかったようで…
「ノゾムさん、ノゾムさんさえ良ければ、自由都市まで一緒に行って、そこでノゾムさんもギルド職員になって一緒に働きませんか?」
またもや爆弾を放り投げてきた。
「ノゾムは私と2人で旅をするからダメ!! あなたは他当たりなさいよ!」
流石にリンスレットも黙っていられなかったようだ。
そしてリンスレットも爆弾を投下しちゃった…。
これは非常に不味い…。こんなギルドの受付で2人の美女が1人の男を取り合っているのは男側はとても不味い。主に嫉妬したやつらからの八つ当たりが怖い。しかも男が『迷子のノゾム』って言うのがさらに八つ当たりを酷くさせそうだ。
現に皆さん固まっちゃってるよ。これは元に戻ったら僕の命は消えそうだよ。
なのでここは…。
「僕は最初から彼女と旅に出るつもりなので、お姉さんの誘いは受けられません。それでは僕は行きますね。それでは、また会いましょうお姉さん。ほらリンスレット行こう」
お姉さんとの会話を一気に終わらせ、リンスレットの手を取りさっさとギルドを出る事に…。
流石に他の冒険者もまだ回復しきってなかったので、なんとか無傷でギルドを出る事が出来ました。
リンスレットは僕に手を引かれながら「やっぱりついて来て正解だった」とか言ってますが、あなたが来なければ、もっと穏便に済んだと思いますよ?
ギルドから逃げ切れた僕はその場でリンスレットと別行動し、お城に来ていた。
王には会いたくなかったので、団長に街を出る事を話して、城を出ると買い物を終えて城に来ていたリンスレットがナンパされていた。
「なぁ、これから俺たち城に帰るんだけど、あんたも城に来ないか? 俺の権限で招待してやるよ」
「………」
リンスレットさん完全に無視してるよ。
にしても、城に招待できる権限持ってるってどんなに偉いんだよ?
そう思って近づきながら、そいつの顔を見ようとしたのとリンスレットがこっちに気が付いたのがほぼ同時だった。
「ノゾム遅いよ、早く王都をでましょう?」
「あぁ? 望だと?」
リンスレットが僕の名前を呼び、男の方が僕の名前を聞いてこっちを見る。
男の方は僕と同じ異世界人の吉田だった。
「なんだ、佐伯じゃねえか、まだ生きていたんだな。てっきり魔物に食われたかと思ってたぜ」
さっそく僕に嫌味を言ってくる吉田だけど、その言葉を聞いてリンスレットの機嫌が悪くなっていく…
「一応まだ生きてるよ。吉田も人を勝手に城へ招待できるなんて偉くなったんだね」
一応僕も嫌味を言ってみる。
「おい佐伯、口の利き方に気を付けろよ? 俺は勇者だぞ? 俺の後ろにはこのイーベル王国がいるんだ。向こうの世界以上の後ろ盾だぞ? おまえなんて簡単に消せるんだ」
相変わらず、自分じゃなく自分のバックに事に頼りっきりなヤツ。しかもこの世界でも僕がまだ吉田の言いなりになると思ってるとはね。あれは脅しの写真があったからでこの世界では意味を成さないのに…。リンスレットの機嫌も悪くなってるしさっさとここを去るか。
「だからどうしたんだよ? やるなら、他を頼るんじゃなく自分で来いよ。リンスレ…リン、行こうか」
「ふぇ?」
いきなり『リン』と呼ばれたせいで機嫌の悪さも吹っ飛び後はここを立ち去るだけだったのに吉田が騒ぎ始めた。
「佐伯てめぇ、俺の女を連れて行こうとしてんじゃねぇよ!!」
リンスレットを俺の女と言った事にかなりイラっとしたけど、それ以上にキレた人がいた。
「何時、私があんたの女になったのよ! ふざけた事言ってるんじゃないわよ!!」
そう、リンスレットだ。
彼女は吉田の顔面に右ストレートを放つと、吉田は反応できずそのまま吹き飛び、城壁に突き刺さって気絶したようだ。
「あぁ気持ち悪かった。ノゾム行きましょう?」
「あ、あぁ」
「それにしても、あんなのがノゾムと同じ異世界人なんてね」
「まぁ、もう会うこともないんだし、いいじゃないか。リンスレットも忘れなよ」
僕がそう言うと、彼女は頬を膨らませて抗議してきた。
「さっきは『リン』って呼んでくれたのに…」
「あ、あれは吉田にただの知り合いじゃないって思わせる為にであって…」
「じゃあ、これからは『リン』って呼んで!」
「別に今までどおりでも…」
「よくない! だって、私たちは『た だ の』知り合いではないのでしょ? それなら『リン』って呼んでくれてもいいじゃない…」
リンスレットは最後の方には涙声で抗議してきたので、僕は白旗をあげる事にした。
「分かったよリン。それでリンはこれからどこに向かいたい?」
僕が彼女を『リン』と呼ぶと先ほどまでの膨れっ面からまぶしい笑顔へと代わり、そして僕に質問には少し考えてから答えた。
「う~ん…、それなら私、海に行ってみたい」
「海? それなら、このまま南の森を抜ける方? それとも東の近い方に行く?」
「それなら近い方でいいかな? 初めての旅でいきなり遠くに行くのは無謀だしね」
「了解です。じゃあ行こうか」
「えぇ!」
こうして、僕たちはイーベル王国の王都から旅立った。