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混沌とした現場…




 いやはや、まさか助けた女性が神様(アイラさん)だったとは。

 しかし、僕の記憶にある彼女の姿とは似ても似つかないのは何故なんだろう? イリスさんの反応を見る限り、イリスさんも僕と同じで、今のアイラさんを知らないんだろう。


 「さてっと。…『アクアバレット』!」


 「イリス! いったいn、へぶっ!?」


 そろそろ、アイラさんを落ちつかせる為に威力を抑えたアクアバレットを、今もなおイリスさんに詰め寄っている彼女の顔面に叩き込む。…決して、以前にバケツで水をぶっかけられた事の仕返しとは思ってない。


 「いい加減落ち着いて下さい。アイラさん」


 「「「は?」」」


 僕がアイラさんの名を呼ぶと、緑髪の女性以外が間の抜けた声を出す。その理由は、サキとイリスさんは僕の口から予想外の名前が出たからで、アイラさんは初対面の人が自分の名前を知っていた事に驚いてだと思う。アイラさん、僕の事を僕に似た別人だと思ってるみたいだしね。


 「それに、いい加減その姿の説明もお願いします。イリスさんだって、それのせいであなただと認識できてないんですよ?」


 「ちょ、ちょっと待って、ノゾム君! この人が、イリスさんの探し人なの? 聞いていた感じとぜんぜん違うよ!?」


 サキが再起動に成功したみたいだ。だけど、僕の口から出た名前のせいで混乱しているみたい。しょうがないか、事前にイリスさんから聞いていた情報とは、ほぼ一致しないんだから。


 「ちょっと、待って!! あ、あなた、ノゾムって、も、もしかして、佐伯 望君なの?」


 ああもう! 今度はそっちか! ってか、誰かこの場の混乱を収拾してくれ!!


 僕の願いが通じたのかは微妙だけど、この場に予期せぬ来訪者が訪れた。


 「みんな落ち着け! 魔物が接近している!」


 魔物と聞いて、この場にいる全員の雰囲気が一転する。


 「サキは前衛で、僕が後衛。イリスさんは2人の護衛。」


 「りょーかい!」


 「いいわよ」


 2人は僕の指示に首を縦に振る。


 「アイラさんはお連れの人と一緒にイリスさんから離れないで下さい」


 「それはいいけど、この数を2人でどうにかするの?」


 続いてアイラさんにも指示を出す。彼女も感知スキルで魔物の接近を感知したようだ。そして、魔物の数が多いので、僕たちの心配をしているみたい。


 「まぁ、平気だと思いますよ? 2人で厳しかったら、イリスさんに手伝ってもらうんで」


 「それよりもノゾム君! そろそろ来るんじゃないかな?」


 アイラさんに問題ない事を伝えていると、サキが刀を抜きながら話しかけてくる。…確かにそろそろのようだ。


 「それじゃあサキ。開幕である程度数を減らすから、討ち漏らしの処理をお願いね」


 そう言って僕は、地面を見つめる。他の皆も同じように地面を見つめている。流石に感知系スキルが無くても、魔物がどこから来るのか分かったみたいだ。それもそうか。これだけ地面から変な音がすれば、誰だって分かるか。


 『キシャーーーーーーーー!!』


 奇声とともに地面から現れたのは、先ほど倒した軍隊アリだった。ちなみにその数およそ100体。それに中には他の軍隊アリよりも3倍ぐらい大きい個体がいる。…もしかしてクイーン? そうなるとこの軍隊アリの群れはよく遭遇する下っ端じゃなく、本隊か! これはいよいよ、僕が下っ端を狩りすぎた説が濃厚になってきたな…。


 「いきなりで悪いけど、ご退場願います。『アースクェイク』!」


 地中から出てきた軍隊アリの群れの出鼻を挫く為、僕は土魔法の中級に位置するアースクェイクを放つ。

 アースクェイクは一定範囲の地面で地割れなどを起こす魔法だ。

 これによって、せっかく地上に出てきた彼らは再び地中に逆戻りになった。

 しかし、出てきたやつら全てがアースクェイクに飲まれるよう効果範囲を広げた為、威力の方が弱くなってしまった。

 魔力にものを言わせてやれば、問題なかったんだけど、それだと、僕たちまで巻き込まれる。それだと、アイラさんはともかく、非戦闘員の緑髪の女性が危ない。それを考慮してアースクェイクを放った結果…


 「ひー、ふー、みの……20体残ったか」


 僕たちから一番遠くにいたクイーンとその周辺の軍隊アリが地中から再度、這い出てきた。


 「サキは、あのデカい個体以外の相手を頼む。さっきのより強いから手負いとは言え、気を付けて」


 「分かった。ノゾム君も気を付けてね」


 サキはそれだけ言うと、標的に向かって駆け出した。


 それじゃあ、こちらもサクッと終わらせますか。


 僕はスキルで剣を創る。形はごく普通のロングソード。ただし、切れ味や硬度は少しだけ普通のロングソードより上程度にしてある。

 本来なら、魔力を注ぎ込みまくって見た目以上の物を創るんだけど、この間の模擬戦以降、レベルと共に技術の向上も必須だと感じたので、この1ヶ月ほどは、武器の性能に頼らない戦い方を身に着ける為に、ワザと武器の性能を落として戦うようにしていた。


 閑話休題


 サキが先陣をきってくれたので、クイーンの警護をしていたやつら全員がその対応に追われ、クイーンの周辺から軍隊アリがいなくなっていた。


 その隙をつき、クイーンに接近する。クイーンは近付いてくる僕に気が付き、配下の軍隊アリを呼び戻そうする。


 「キシャシャシャー!!」


 クイーンの声を聞いて、何体かがこちらに振り向くが、次の瞬間、僕と軍隊アリたちとの間に炎の壁が出現する。


 「ノゾム君! こっちは任せて! 一体もそっちには行かせないから!」


 どうやらサキが軍隊アリの足止めにファイアウォールを使ったようだ。詠唱する余裕があるなら、向こうの心配はしなくていいだろう。


 サキの援護のおかげで、下っ端に邪魔されることなくクイーンの元へと到達出来た。なので、まずは挨拶がてらに一撃入れる。これは相手の堅さと武器の性能にどれだけ差があるか確かめる為の一撃でもある。


 キーン!


 しかし、その一撃はクイーンに傷1つ、つける事はなかった。が、それぐらいは想定内。むしろ傷がついたら色んな意味でがっかりしたと思う。


 「流石にこれじゃあ駄目か? いや、しっかりと狙う所を狙えば…」


 「シャーーーー!!」


 クイーンは攻撃をしてきた僕を排除する為に腕を振り下ろしてきた。僕はそれを見切った上で、最小限の体捌きで躱す。


 「ふっ!」


 そして、いかにも他の所よりも硬度が低いであろう関節を一閃。


 「キシャーーー!!」


 クイーンの悲鳴とともに、右肘? から下が地面に落ちる。


 「よしよし。関節は何とか斬れるぞ」


 攻め口を見つけたそこから先はほぼ作業のような戦闘だった。攻撃を最小限で避け、カウンターで関節を斬り落とすの繰り返し。クイーンが息絶えた時には、手足に胴体、頭がバラバラだった。…うん。ちょっとやりすぎたかも。


 「ノゾム君、お疲れ! って、うわっ!」


 サキの方も片付け終わって、こちらに来たようだけど、クイーンのバラバラ死体を見てびっくりしていた。


 「とりあえず、何も言わないで…。素材など剥ぎ取って、向こうと合流しようか」


 「これなら、アイテムボックスに、そのまま入れちゃった方が早くないかな?」


 「じゃあ魔石だけ取り出して、あとはアイテムボックスに入れるよ」


 と、作業に入ろうとしたところで、ふと、太陽が遮られた。本来なら、雲かなと思うのが普通なんだけど、その時の僕は、何故か空を見上げた。


 「…は?」


 見上げた先にいたのは、雲ではなくワイバーンだった。しかも一体ではなく団体様で。


 「空を見上げたまま固まって、どうしたのノゾム君?」


 「…上」


 ワイバーン気付いていないサキは、固まっている僕に話かけてくるけど、僕にはその一言を絞り出すので精一杯だった。何故なら、ワイバーンの群れが隊列乱れることなく北を目指して飛んでいるのだから。


 「…何、あれ?」


 僕の言葉で空を見上げたサキも絶句していた。


 軍隊アリの件はクイーンを倒したから解決したとみてよかったのに、何で新たに厄介事が出てくるかな? とりあえず、アイラさんとも話をしたいし、このワイバーンの事もギルドに報告しなちゃだから、ひとまず街に帰るとしようかな…。


 

ありがとうございます。


なぜこうなった?

気づいたら戦闘してた…。

次話こそ、アイラさん説明回!!

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