昇格…
祝 ブクマ 4000人突破
祝 総合評価 10000突破
全ては皆様のおかげです!
これからもよろしくお願いします!!
「…なんとか、朝を迎えられたか」
僕は窓から差し込む朝日を眺めながら、感慨深い呟いた。
昨夜はホント大変だった…。
あの後、僕を待っていたのは、皆からのお説教だった。しかも、1人1人個別で。野宿の火の番がそのまま、僕のお説教役になっみたいで、1人がお説教、他の3人が仮眠ってローテーションで一晩中お説教され、つい30分ぐらい前にようやく解放された。
お説教はセシリアが一番しんどかった。何も言わず、ただジッと見つめてくるだけ。時間も時間で僕が寝そうになると、小さな声で「ノゾム様、反省してま…すか?」と囁いてくるのだ。しかも、涙を溜めて。これには、ナンパは冤罪とは言え、僕は罪悪感に押しつぶされそうになった。
とりあえず、昨夜の記憶は封印しよう。
「今日の予定は…そうそう、ギルドに行ってカードスから預かっている推薦状を渡さないと」
僕は今日の予定を確認しながら、身支度を済ませ部屋をでる。
「おはよー」
食堂に入ると、すでに女性陣は全員揃っていたので、挨拶をする。ちなみに、全員普段通りだったりする。
おかしい? お説教回数の少ないセシリアとイリスさんはまだしも、一番回数が多く、そして一番最後のお説教を担当したリンは、なぜそんなにも普通でいられるんだ?
「あら? 朝なのにノゾムはどうしてそんなに元気がないのかしら?」
「逆に聞くけど、リンはどうしてそんなに普段通りなの?」
眠そうな僕の顔を見て、首を傾げながらリンが問いかけてきたので、僕はそれを質問で返した。
「どうしてって言われても、仮眠はしてたしね」
「そうですか…。一応言っておくけど、僕は一睡もしてないからね?」
「それは、ノゾム君がナンパしていたのが原因でしょ?」
僕が最後に付け足した言葉に対してサキからツッコミが入る。
「僕は無実だ…」
反論するだけ無駄なのは、昨日のお説教タイムで証明されているので、僕はテーブルに突っ伏しながらボヤく程度に留める。
朝食を食べ終わった僕たちは、今日の予定を決める為の話し合いをする事にした。
「じゃあ、今日は何をしようか? 個人的には一日寝ていt…ナンデモナイデス」
僕が自分のしたいことを言った瞬間に皆から睨まれたので、黙ることに。
「そもそも、何かしなくてはいけないことはあるのかしら?」
「え~っと、なるべく早く済ませる用事は、ギルドへこれを渡す事ぐらいじゃないかな?」
イリスさんの質問に対し、僕はカードスから預かっている手紙を皆に見せながら答える。
「ようやく、ノゾムが名実ともに人外認定されるのね」
「リンさんや? その人外に実だけだったらあなたも入っていますからね?」
「ノゾム君、自分が人外は否定しないんだね」
なにやら外野がうるさいけど無視!
「私は街を散策して、あの人を探してみようかしら?」
イリスさんは、アイラさんを探すために別行動をとるようだ。
「それならあたしもイリスさんと一緒に行動しようかな?」
「サキは何で?」
「なんとなくだけど、面倒くさい事が起きそうな気がするんだよね。だから、ギルドには行かないで街を見て回ってようかと」
そう言う事を言っちゃうと、現実になるんだよ? けど、僕の直感には何も反応は無いんだよな…。
「そうだ! 街を散策するんなら、腕のいい鍛冶師を探してくれないかな? この間のドラゴンを武器や防具にしたいんだよね」
「いいよ。ただ、今日いきなり見つかるとは思わないでね」
サキは即答で了承してくれたけど、そんなにギルドに行きたくないのかな?
「それじゃあ、リンとセシリアはどうする?」
サキの事はこれ以上触れずに、リンとセシリアに質問する。
「昨日の今日で、ノゾムを1人にするはずないでしょ?」
「私たちが…一緒で、す」
「…もしかして、最初から決めてた?」
リンの言い方に引っかかりを感じた僕は、皆に聞いてみる。すると、全員揃って頷いた。
その光景を見て、僕ががっくりと肩を落としたのは言うまでもない。
宿を出て、サキとイリスさんと別れ、ギルドへ向かっているんだけど、何かがおかしい?
どうして、道行く見も知らずの男たちに殺気付きの視線を送られないといけないんだろうか?
…いや、まぁ、原因は判っているんですがね。しかし、どうしてこうなったのかが僕には分かりません…。
「ほらノゾム! しっかり歩いてくれないと歩きにくいわ」
「ノゾ、ム様? 大丈夫です…か?」
僕が現状について考え込んでいると、左右から問題の原因が話しかけてくる。一方は歩き方に対する文句。もう一方は僕を気遣って。
「…どうしてこうなった?」
「またそれ?」
僕のぼやきをリンがしっかり拾う。そして、何度目かになるやり取りへと続いていく。
「そりゃ、何度だって言いたくなるよ。周囲の視線も怖いし…。ってか、これする必要ある?」
「「全ては監視の為よ(です)」」
2人の現在進行形でしている行為を必要か僕が問うと、何故か息もぴったりの返しをされる。そして、2人がより抱き着いてくる。付け加えるのならば、僕の腕にだけど。
そう。2人が何をしているのかと言うと、簡単に言えば、僕の腕に抱き着いているのだ。そりゃあ、周囲の男共の視線が痛くなるはずですよ。なんて言ったって、抱き着いているのは控えめに言っても可愛い女の子なんだから。
「…さいですか。とりあえず、ギルドに着いたら離れてね?」
「「嫌(です)」」
「…勘弁してくださいよ」
この状態でギルドに入ったら確実に絡まれるじゃないですか…。もしかして、サキはこれが原因で起こるであろう事態が面倒でイリスさんの方に逃げたんじゃないだろうか?
「うわぁ…」
この都市で大きな建物であるギルドへ足を踏み入れた僕を出迎えたのは、街で送られていた殺気を遥か上回る殺気だった。流石、冒険者だと僕は現実逃避をしながらその殺気を受け流していた。
「ノゾム? いつまで入り口にいるつもり?」
リンの一言が僕を現実へと引き戻す。現実に引き戻された僕は、覚悟を決めて受付へと足を進める事にした。
「おはようございます。本日はどのようなご用件でしょうか?」
冒険者からの歓迎|《殺意》の視線に耐え抜き、受付に辿り着くと、受付嬢の女の子が笑顔で対応してくれた。…あぁ、癒される。例えるなら、砂漠で見つけたオアシスのようだ。
「…おほんっ!」
「………(ジー)」
「…あ、あぁ。今日は、昇格手続きで来たんですよ。これはイーベのギルド支部長からの推薦状です」
受付の女の子に癒されていたら、両隣から圧力を感じたので、急いで取り繕って、用件を伝える。
「申し訳ないのですが、中身を拝見してもよろしいですか?」
「はい。構いませんよ?」
「ぴっ! SSランク?! しかもドラゴンを5人で討伐!?」
『なっ!!!!』
受付の女の子が手紙の内容に驚き、言葉にしてしまった。しかも、その声が意外にもよく通る声で、周囲にいた冒険者にも聞こえてしまい、冒険者たちは一斉に驚きの声を上げた。
「あ、あのぉ?」
「ぴゃい! す、すみませんが、少々お待ちください! 今、ギルドマスターにこの件をお伝えしますので!!」
僕が声をかけると、受付の女の子は大慌てで頭を下げ、脱兎のごとくこの場を去ってしまった。
「…どうする?」
僕は分かっていながらもリンとセシリアに聞かずにはいられなかった。
「諦めて待つしかないでしょうね」
「だよねぇ…」
そう言って周囲を見渡すと、そこにあるのは、先ほどまでの殺気の篭った視線ではなく、僕を値踏みする視線だった。
恐れ4、疑い5、無関心1ってところかな? まぁ、疑いの方が多いのは、僕に原因があるのだろう。僕ってどう見ても、強者には見えないからね。ってか、普通の異世界人はこっちの人に比べで線が細いからなぁ。
そんな事を考えながら時間を潰していると、受付の奥から一人の男性が現れた。男性と言っても歳は50を少し越えたぐらいだろう。身長は180cmぐらいかな? 体格はごつい感じではなく、程よく引き締まった感じだ。見た感じ、優しそうなおじさんと言っても問題はないだろう。…ただし、纏う空気は優しそうなおじさんなんてものではないけど。はっきり言って、この間戦ったグラドドラゴンより恐ろしい空気を纏っている。多分この人がギルドマスターで世界に2人しかいないSSSランクの1人なんだろう。
「おまえさんが、新しくSSランクに昇格する少年か?」
「…一応」
ギルドマスターの質問に簡潔に答える。向こうが何を考えているか分からないので、余計な言葉は発しないで様子を見る事にする。
「…ふむ。それじゃあ悪いんだが、地下の訓練場に言ってくれんか? そこで模擬戦をしてもらう」
「はい?」
僕の頭のてっぺんから足の先まで視線を送ったギルドマスターはいきなりそんな事を言い出した。もちろん僕は、突然の事に思考がついていかず、マヌケな返事しか出来なかった。
ありがとうございました。