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その人…

みなさん新生活はどうでしょうか?




 どうしてこうなった?


 現在の僕の心境は、浮気現場を目撃された夫みたいな感じです。

 おかしい…? 何も悪いことはしていないはずなんだけど? いや、宿を探さないでレベル上げに行ってな。つまり、これはその罰ですか?


 「あら? 貴女は確か…。王都でノゾムさんと一緒にいた方ですよね?」


 「…そう言うあなたは、以前、ギルドで受付をしていた人ですよね?」


 僕が現状から目を背けていたら、いつの間にかリンとお姉さんが威嚇しあっているんですが…。

 …しかも僕を挟んで。


 ちょっと! これじゃあ、逃げれないじゃないですか!?


 サキたちに助けを求める視線を送るも、あっさりと目を逸らされる始末。セシリアなんて、背の高いイリスさんの後ろに隠れちゃってるし。


 「貴女…。それどうしたんですか?」


 お姉さんがリンの首に付いている物を指さしながら質問する。そう言えば、お姉さんと最後に別れた時には、リンは奴隷じゃなかったっけ。


 「お姉さん、それはd」


 「これは、私がノゾムの物だって証よ!」


 僕が説明しようとする言葉を遮り、リンが爆弾を投下する。


 お、おぉう…。リンさんや、それは普通、所有者が言う台詞ではないですかね? 何故、あなたがそんなに誇らしげに言ってるんですか?


 「ですが、貴女は奴隷ではなかったはずですよね? この一年で何があったんてすか?」


 どうやらお姉さんは、奴隷になったリンに同情しているみたいだ。よし! それなら、作り話で話を纏めてさっさとこの場を去ろう!


 「実はですn」


 「何もないわよ? 自分からノゾムの奴隷になっただけよ?」


 ちょっとおおおおお!! リンさん?! さっきから人の台詞に被せてくるんですか? 嫌がらせですか? そして、言っている事は事実ですけども、事実なんですけど、もう少し説明してくれないと、僕が白い目で見られるじゃないですか!


 「…こうして聞いていると、ノゾム君って酷い男に聞こえるね」


 「…そうね。今のを初めて聞いた人には、主様って相当な外道に聞こえるわ」


 はい、そこ!(サキとイリスさん) 言われなくても、自覚してますよ! だから、聞こえるようにヒソヒソと喋ってないで、助けてください!


 「そ、そう言えば、お姉さん! 今日はギルドのお仕事はいいんですか!」


 このまま2人に会話させても、よろしくない事にしかならないと判断した僕は、無理矢理にでも話題を変えることにした。


 「えっ? 私? …あ、あぁ! ノゾムさんは知りませんでしたね。私、この都市に戻ってきてから、受付の仕事していなんですよ」


 「へ? いや、だって…あれ? 確か、記憶に間違いがなければ、ギルド本部から呼び出しがあったと聞いたんですが…」


 話題を変えた事にツッコむこともせず、お姉さんは僕の質問に答えてくれた。リンは僕を睨んでいたように見えたけど、次のお姉さんから帰ってきた答えにそれどころではなくなってしまった。


 「確かにそうですが、ギルド職員としてではなく、冒険者として呼ばれたんですよ。こう見えても私、SSランクですからね。だからギルド本部から呼ばれる事があるんですよ」


 「は?」


 「そう言えば、ノゾムさんって私の事知らないみたいでしたね。では、今更ながらですが、フリーシナと言います。依頼が無い時はギルドで働いているSSランクの冒険者です」


 いやいや、この人は何を言っているんですか? ギルドで受付をしていたお姉さんが実は冒険者で、しかも世界に5人しかしないSSランクですって! って、今は6人か…。じゃなくて! 冗談かもしれないし、観察で確かめてみようかな? いや待て! もし本当なら、絶対バレる。だけど、知りたい…。ええい、ままよ!



 【名 前】 フリーシア

 【年 齢】 124歳

 【種 族】 ハーフエルフ

 【職 業】 アサシン

 【レベル】 151

 【H P】 32485/32485

 【M P】 79810/79810

 【筋 力】 51439

 【防御力】 25297

 【素早さ】 63486

 【命 中】 42105

 【賢 さ】 85168

 【 運 】 51


 【スキル】

 大剣術LV8 体術LV7 投擲LV7 弓術LV2 空歩LV8 気配察知LV9 魔力察知LV8 隠密LV8 威圧LV6 直感LV9 千里眼 夜目 看破 隠蔽


 【固有スキル】

 精霊魔法



 うん、考えるのは止めよう。このお姉さんツッコミ多すぎ! そして、案の定バレてる。観察した瞬間からめっちゃいい笑顔で僕のこと見てるし。そして、看破に隠蔽って完全に僕たちの事もバレてるじゃないてすか…。

 …ちょっと待てよ! それって、かなりヤバくないか? このお姉さんこと、フリーシアさんとは、僕がヴァンパイアになる前に出会っている…。つまりそれって…。


 「…フリーシアさん。コレカラボクタチハ、ヤドニイキマスガ、ヨカッタラソノマエニゴハンデモタベマセンカ? オゴリマスヨ?」


 ヤバい。僕がヒトじゃなくなってるのがバレてると思うだけで、声が震えるし片言になってしまう。


 フリーシアさんの自己紹介をされただけで、僕の態度が急変した事に、リンたちは僕に冷ややかな視線を送っていた。しかし、僕はそれどころじゃない! どうにかしてでも、フリーシアさんの口封…じゃなくて、説得せねばならんのです!!


 「それでは、お言葉に甘えてもいいでしょうか? あっ、ノゾムさんはこの都市に来たはかりで、何も分からないでしょうから、お店は私が選んでもいいですか? 何かリクエストがあれば言って下さい」


 ひとまず僕は、お金は気にしなくていいのと、個室である事、それにリンたち(奴隷)が問題なく食事出来る所とお願いした。

 そして移動中、リンがフリーシアさんとの食事を提案した事について説明を求めてきたので、僕は小声で「僕たちの事最初から全てバレてたみたい」とだけ伝えたら、しぶしぶではあるけど納得はしたみたいで、それ以上、その件に関しては触れられる事はなかった。他のみんなもリンが引き下がったのを見て、この場は何も言わない事にしてくれたらしい。サキとイリスさんの目も怖いけど…





 フリーシアさんに案内されたお店は、外観からでも分かるお金持ち様御用達のお店だった。何でも商人たちの商談などの場としても使われているらしい。僕たちは店に入り、料理がくるまでの間、僕たちが自己紹介をして時間を潰した。





 「さて、本当なら僕からこんな事聞きたくないんですが、何が目的ですか?」


 一通り出てきた料理を食べ終わった僕は、フリーシアさんの口封…じゃなくて口止めを始める。

 ちなみに料理の味なんて分からなかった…。だって、リンたちはフリーシアさんをずっと睨んでるし、フリーシアさんは、それを受け流しながら、終始僕に微笑みかけてくるだけなんだよ。もう空気がね…。


 「そう言われましても、私にどうこうしようって意思はないのですが…。強いて上げれば、私が困っている時に手を貸していただければ、と」


 いやいやいや! SSランクの貴女が困る事態ってそれはどんな状況ですか?!


 「…そんな事態あるんですか?」


 「万が一の保険ですよ。それに私が『ノゾムさんたちの事黙っていますよ』と、口約束だけしても、ノゾムさんはともかく、お連れの方々が納得しないと思うのですよ。なので、あまり使いたくはないのですが、信用してもらう為にあえて『バラされたくなければ、大人しくこちらの言う事を聞けよ』と言う体を…ね」


 「それでも信用できないわ!」


 フリーシアさんの言い分にリンが噛みつく。まぁ、その気持ちは分からなくはないけどね。


 「ですよね。それが普通です。しかし、考えてみても下さい。私がノゾムさんと知り合ったのは王都にいた頃です。それから、今まで何も起こらなかった事が信用に繋がりませんか?」


 フリーシアさんの言葉にリンは黙ってしまう。確かに、フリーシアさんの言う通り。彼女に僕たちを害する気があるなら、直接間接問わずにどうとでも出来たはずだ。しかし、彼女の言う通り今日まで何も起きなかった。


 「分かりました。今日のところは、フリーシアさんの言葉を信用させてもらいます。リンたちもそれでいいよね?」


 僕は、フリーシアさんを信用する事をリンたちに確認すると、リンたちは肯定も否定もしなかった。なので、僕はそれを肯定と受け取り、この場でも話し合いを終わりにする。


 なお、食事の代金は最初に僕が言った通り、フリーシアさんの分も払った。金貨が数枚なくなったので、確かにSランク以下だとここの利用は無理だと痛感した。




 フリーシアさんと短い別れの挨拶を交わし、僕たちは今日の宿へと歩き始めた。宿はフリーシアさんから教えてもらった宿にすることにした。リンたちが探してくれたところでも問題はなかったんだけど、話を聞くとリンたちがそちらでいいと言ったので、そちらにすることにした。


 「さて、ノゾム」


 「改まってどうしたの?」


 フリーシアさんが見えなくなってすぐにリンから声をかけられた。先頭を歩いていた僕は振り向かずに応えるが、なんだろう? 声に温度を感じないような気がするんだけど?


 「ノゾム君にはまだあたしたちに話さないといけない事があるよね?」


 おかしい? サキの声からも温度を感じないんだけど…。


 「な、なんの事かな?」


 「…………」


 この無言のプレッシャーはセシリアから感じる…。


 「そんなの決まっているわ。主様が宿探しをサボってあの女性をナンパしていた事よ」


 イリスさんがこれ以上誤魔化すなと言わんばかりに本題を突き付けてきた。


 「そ、それは…ひぃ!」


 僕は反論しようと振り向いた瞬間悲鳴を上げてしまった。だって、セシリア以外がとても素敵な笑みを浮かべていたんだから。ただし、目だけは笑っていない。ちなみにセシリアは、悲しそうな表情のまま僕の事をジッと見つめていた。


 「何で、悲鳴を上げたのか知らないけど、たっぷり話を聞かせてもらうからね。ノゾム?」


 リンの極上のスマイルには拒否は許さないと書いてある。どうやら、長旅の疲れを今日とるのは不可能みたい。


 …僕は無事明日の朝日を拝めるのでしょうか?


 そんな事を思いながら、僕はリンたちに引きずられるように宿屋へと向かうのだった。 


ありがとうございました。

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