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難去ったは…ず?

あと、3話ぐらいで4章も終わる予定で…す?




 ドラゴンが崩れ落ちるのを確認して、戦闘態勢を解く。


 ドラゴンに使ったのは、本来ならまだ魔法スキルのレベルが足りなくて使えない合成魔法の雷神の鎚(トールハンマー)だ。なので、今回は僕の血を媒体とした魔法陣の補助で疑似的に雷神の鎚(トールハンマー)を再現しただけにすぎない。

 名付けて、ドーピングマジックってところかな? ただし、威力などは、本家より劣る。

 なので、ドラゴンを倒した雷神の鎚(トールハンマー)は正確には疑似雷神の鎚(トールハンマー)と言う事になる。


 これは、僕の魔力とヴァンパイアの血に魔力が含まれているからこそ出来た方法で、本来、魔法陣を使って魔法を強化しようとしたら、相応に魔石などの供物(魔力)が必要になるから、こんな気軽に使うことは出来ない。

 ぶっちゃけ、自分のレベル以上の魔法がそう簡単に使えるなら、みんな魔法陣を使うよって話。それをしないのは、威力が本家より劣ると言うデメリット以上に、手間がかかりすぎるからだ。


 ちなみに、疑似雷神の鎚(トールハンマー)に使った魔法は、雷魔法のサンダーレイン同士を合成した集中豪雷(スコールサンダー)と言う魔法だ。



 「…まだ、耳が痛いんだけど、ノゾム?」


 「あはは…」


 リンがさっきの魔法に対しての文句を言い、サキが周囲の状況を見て、苦笑いしながら僕の傍へとくる。


 「2人とも、本当にいいタイミングで来てくれたね。助かったよ。…あ~、もう疲れた! もう寝たい!」


 リンのクレームを無視して、2人にお礼を言って、僕はその場で大の字になって倒れこむ。もう何もしたくないです。


 「あなた、いったい何をしたら、あんな魔法放てるのよ?」


 「むぅっ!」


 そう言ってイリスさんが僕たちの所にやってきた。そして、なぜか機嫌が悪くなるリン。

 セシリアも一緒に来たけど、すぐさまリンとサキの後ろに隠れてしまった。いくら戦闘中だったとは言え、いきなり初対面で2人っきりにされたのは、セシリアにとって少し辛かったようだ。


 「ノゾム、この人は誰なのかしら?」


 イリスさんに何て説明しようか考えていたら、リンが不機嫌さを隠しもしない声色で、イリスさんの事を聞いてきた。

 いやいや、リンさん? もう少し空気を壊さないようにしましょうよ?


 「…ノゾ、ム?」


 今、イリスさんが何か呟いたみたいだけど、聞き取れなかった。


 「イリスさん、どうかしましたか?」


 リンの質問が面倒で、イリスさんに話を振ったんじゃない。僕が単純に気になっただけだ。

 決して、今のリンが怖くて逃げたわけじゃない。

 …だから、その綺麗なオッドアイで僕を見つめないで下さい。…あっ、照れた。


 「今、あなたの本当の名前を聞いたような気がしたのだけど…」


 そっか。リンが僕の名前を口にしたからか。


 「もう少し、落ち着いた所で話そうと思ったんですが、この際です。自己紹介だけしちゃいましょう。改めまして、僕はノゾムと言います。今まで黙っていてすみませんでした」


 僕は、イリスさんに本当の名前を教えて、そして、頭を下げた。


 「やっぱり…。ねぇ、あなたの名前って、佐伯望で合ってる?」


 「っ!! どうして、あなたがその名前を知っているんですか? そして、どうして僕が…」


イリスさんの口から突然出てきた、僕、本来(この世界に転移する前)の名前(までの呼ばれ方)に驚き、問いただそうとしたけど、それが出来なかった。


 「あぁ。会えると思ってなかったけど、まさか、会えるだなんて! 私は、あなたの事をずっと探していたのよ!」


 何故なら、感極まった彼女に抱き着かれたから。イリスさんは、僕よりも身長が10cmほど高いため、正面から抱き着かれると、豊満な胸に顎が乗る形になってしまう。

 そして、突然抱き着かれた事と、胸の感触に、言葉をなくしてしまった僕。


 「ちょっと、ノゾム? この人が言っている事は、どう言う事かしら?」


 声の主の方へ顔を向けると、そこには満面の笑みを浮かべたリンが立っていた。…しかし何故だろう? さきほどまで戦っていたドラゴン以上の威圧感がリンから感じるんだけど…。


 「ぼ、僕にも何の事だか…」


 「じゃあ、どうして、この人は会った事もないのに、ノゾムを探していたのよ?」


 「そればっかりは、本人に聞いてみないと、分からないよ」


 僕もどうしてこうなったのか分からないの…。

 しかし、さっきから、僕が話す度に、会話には参加していないはずのサキの視線が冷たくなっていく気がする。セシリアはおろおろしてるし…。


 「それで、イリスさん? いったい、どう言うことなんですか? 僕たちが出逢ったのは、2ヶ月前が初めてのはずですが?」


 今もなお、抱きついているイリスさんを引き剥がし、先ほどの言葉の意味について、質問する。


 「えっ? …あ、あぁ、ごめんなさい。いきなり言われても、分からないわよね。話すと長くなるなるわよ?」


 「それなら、一度、エルフの村に行くとしようか。フォーカスの事も気になるし…。けど、1つだけ答えて! イリスさんと出逢ったのは2ヶ月前でいいんですよね?」


 引き剥がされた事で、正気に戻ったイリスさんに再度、質問する。なにせ、すぐ隣には、笑顔の怖いリンさんと、視線が冷たいサキさんがスタンバイしているんだ。無実だけでも証言してほしい。

 ってか、リンは包帯外してるんだから、魔眼でイリスさんの心を読めば、僕の無罪は分かるんじゃないのかな? …あっ! リンのヤツ、急に包帯付け始めたし!


 「ええ。確かに、あなたと会ったのは、2ヶ月前が初めてよ」


 イリスさんの証言により、リンとサキの態度も多少軟化した所で、ひとまず、移動する事になったんだけど、片付けておく事があったのを思い出した。と言うより、森の入り口であいつらを見るまで忘れていた…。




 「イリスさんに、聞きたい事があったんですがいいですか?」


 「何かしら?」


 「怪我の後遺症ってどのくらいの回復魔法で治せるようになります? あと、回復魔法でも中途半端に治せば、後遺症って残ります?」


 僕は、ギャーギャー騒いでいる馬鹿たちを見ながら、イリスさん質問してみた。


 「2つ目の質問の意味がよく分からないわね? けど、質問に答えるなら、怪我の後遺症を治すほどの回復魔法は、かなり高レベルじゃないと無理ね。もう一つ方だけど、怪我の度合いによっては、いくら回復魔法と言えど、応急処置にしかならないわ」


 ふむ。それなら、当初の予定通りで問題は無さそうだな。


 「お前ら、気分はどうだ?」


 「佐伯、てめぇ! 俺たちに何しやがった!」


 僕が3人に話しかけると、吉田が先ほどからギャーギャーと騒いでいた時と同じ事を言ってきた。ちなみに、勇者一行は全員首から下はまだ氷漬け状態のままだ。

 いつの間に? それは、吸血した後で施しました。

 流石に長時間氷漬けだったからかすでに氷を自力でどうにか出来るほど、体の感覚は残ってないようだ。壊死してないだけでも凄いとは思うけど…。


 「何って?」


 「とぼけるんじゃねぇ! お前が何かしたんだろ! 俺たちの魔法やスキルをどうしたんだ!」


 「最初に言っただろ? スキルを没収するって」


 「ノゾム、こいつらのスキル奪ったの?」


 「うん? ああ、そうだよ」


 僕と吉田の会話を聞いていたリンが口を挟んできた。


 「てめぇは! あの時の怪力女! ごはっ!」


 あっ! それ禁句…と、思った時には、リンは吉田を殴り飛ばした後だった。


 「だ れ が、怪力女ですって?」


 だから、リンさん笑顔が怖いですって…。

 って、なんだろう? なんか引っかかった?


 「て、てめぇ…。勇者である俺を何度も殴りやがって!」


 「勇者って言ったって、あなたはノゾムと同じ世界の人間でしょ? ノゾムが言っていたわよ。異世界には、勇者なんて職業はないって」


 「だからどうした! この世界じゃ、俺は勇者なんだぞ!」


 異世界? …って!


 「吉田! お前、何で彼女(リン)言葉が分かるんだ(・・・・・・・・)!?」


 僕は、引っかかっていた原因が分かり、言い争っていた2人の間に割り込み、吉田の肩を掴みながら問いかける。


 「はぁ? 何言ってやがる。そんなのスキルに決まってんだろうが」



 【名 前】 マサキ・ヨシダ 

 【年 齢】 18歳

 【種 族】 ヒト

 【職 業】 勇者

 【レベル】 25

 【H P】 1039/16439

 【M P】 10743/12328

 【筋 力】 10978

 【防御力】 9748

 【素早さ】 9328

 【命 中】 10493

 【賢 さ】 9543

 【 運 】 40


 【スキル】

 異世界言語



 ありえない。吸血のスキルで奪えないスキルはないはずだ。それが固有スキルだろうと関係なかった。なのになぜこのスキルだけは奪えない?


 「ノゾム? どうしたの?」


 リンが不思議そうな顔で僕の顔を覗き込んでくる。


 「な、何でもないよ」


 とりあえず、この件は保留だな。この場で答えが出るとは思えない。それよりも、そろそろ移動するためにも、こいつらを無力化しておかないと…


 「…さて、これからお前たちには、弱者の立場になってもらう。本当なら、ここで殺した方が、いいのかもしれない。だけど、同郷のよしみで、チャンスをあげるよ」


 「何を言ってんだ?」


 「別に理解しなくていいよ。これはただの自己満足だから」


 伊藤が?マークを浮かべていたけど、僕はそれを無視して、空中に12本の剣を生成した。


 …なるほど。魔力操作で、魔力を操作すれば、武器を生成する場所もある程度自由がきくのか。


 僕は、生成した12本の剣を吉田たちの手首足首目掛けて投擲する。


 「「ぎゃああああ!」」


 吉田と伊藤は手足に刺さった剣の激痛に耐えられず、悲鳴を上げる。しかし、原だけは悲鳴を上げずに痛みを堪えていた。


 「うるさいなぁ…。だけど、これで終わりじゃないよ?」


 僕は重量のあるハンマーを生成し、3人の両肩にハンマーを無言で振り下ろす。


 3人の両肩から、グシャッって音が聞こえたから、骨が砕けたはず。吉田と伊藤は、痛みに負けて気を失ったようだ。原は、憎しみの篭った瞳で僕を睨んでいた。


 「…イリスさん。この3人に死なない程度でいいので、回復魔法をお願いします。くれぐれも完治させないで下さい」


 僕はこの中で唯一回復魔法が使えるイリスさんに3人の治療をお願いする。


 「…いいの? そんな事したら…」


 「いいんです。むしろ、それが狙いなんです。そうして、全てを失えば、少しは持たない者の気持ちが、分かるかもしれないじゃないですか」


 そう。僕がこいつらに贈る罰は、力を全て奪う事。残念な事に僕にはステータスまでは奪えないから、怪我による後遺症で、力を発揮できなくさせる事にした。そして、実力を発揮できなくなった勇者をあの国王が、いつまでも庇護下に置いておくとは思えない。つまり、後ろ盾さえなくなると言う事で、文字通り全てを失うのだ。

 イリスさんは、それ以上何も聞かず、3人に回復魔法を施してくれた。


 「ノゾム君、こっちの3人はどうするの?」


 サキはそう言いながら、奴隷商人たちを指さした。


 「その人たちは、王国の命令で、来ただけだろうからね。どうしようか…。まぁ、それもひとまずは、イリスさんの話の後で考えるよ」


 「…終わったわよ」


 「ありがとうございます、イリスさん」


 僕は、最低限の治療を終えたイリスさんにお礼を言って、3人の氷を壊す。そして、氷の代わりに、頑丈な糸を生成して3人をぐるぐる巻きにしていく。さらに、6人ぐらい乗せれるそりを魔法で作り、そこに6人全員を放り込み、僕らは、ようやくエルフの村へと出発する。



ありがとうございました!

誤字脱字がありましたら、報告いただけると助かります!


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